UPDATED 2001/9/19

★Ken's Cinema Report★

映画の感想のぺージです

2000年8月〜5月の感想のページです。ベースは北九州・福岡の映画館です。

[最近の作品の感想に戻る] [4月以前の作品の感想]

上から新しい順です
どれを見ますか。ネタばれがありますので、未見の方は注意してください。

  ball1[ディスタンス]
  ball1[点子ちゃんとアントン]
  ball1[PLANET OF THE APES/猿の惑星]
  ball1[RED SHADOW 赤影]
  ball1[LIES/嘘]
  ball1[彼女を見ればわかること]
  ball1[パールハーバー]
  ball1[千と千尋の神隠し]
  ball1[アカシアの道]
  ball1[山の郵便配達]
  ball1[東京マリーゴールド]
  ball1[ギフト]
  ball1[A.I.]
  ball1[ミリオンダラーホテル]
  ball1[ハムナプトラ2]
  ball1[郡上一揆]
  ball1[みんなのいえ]
  ball1[花様年華]
  ball1[メトロポリス]
  ball1[ホタル]
  ball1[マレーナ]
  ball1[JSA]
  ball1[2001年宇宙の旅〈新世紀特別版〉]
  ball1[トラフィック]
  ball1[ショコラ]
  ball1[クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲]
  ball1[ギター弾きの恋]
  ball1[アメリカン・サイコ]
  ball1[スターリングラード]



ball1ディスタンス
(テレビマンユニオン他/ディスタンス製作委員会 132分 2001年)
監督 是枝 裕和
出演 ARATA  伊勢谷 友介
 ある夏の日。山あいの駅に4人の男女が集まり、奥地の小さな湖に向かう。彼らは、3年前に世間を騒がせたカルト教団による殺人事件の加害者の家族たちだった。加害者たちも亡くなってしまったため、年に一度事件がおこった日に集まり、遺灰が瞑るその湖に参りに行っていた。乗っていた車が盗まれたため、街にかえれなくなった彼らは、偶然湖に居合わせた元信者だったという男とともに、かつて信者たちが暮らしていたロッジで一夜を過ごすことになる…。脚本、監督は「幻の光」、「ワンダフルライフ」の是枝裕和。

 是枝裕和の前二作はいずれも気に入りましたが、今回はちょっと辛い気がします。登場人物のせりふがとぎれたり、二人が同時にしゃべってゆずりあったりしていて、変だなと思っていて見たけれど、せりふをちゃんと決めずに撮っているなというのに気が付きました。その意図は理解できるし、ARATAや伊勢谷友介、りょうと言った本職が俳優ではない人が多いので、効果的でもあります。しかし、そうは言ってもストーリーはあるわけで、色々疑問がてできます。一番の疑問は元信者役の浅野忠信をみんなすんなり受け入れてしまっていることです。信者でも下っ端という設定みたいですが、もっと反発があってもいい気がしますね。浅野忠信にしても、これはおかしいと思って逃亡したと言っているけれど、何故入信したのかとかどういう教義があるのかとか、もっと問いつめてもよかった気がします。死んだ加害者が教団内でどういう存在だったかとか聞くだけでは…。私の理解不足かも知れませんが、加害者が何故皆死んでしまったのかわかりませんでした。死体は発見されなかったという説明だっけれど、自殺なのか殺されたのか。最後のどんでん返しもどんなものでしょう。かえって彼の気持ちがわからなくなってしまった気が…。加害者や教祖の家族関係などは普通、新聞雑誌などでもうちょっと情報が出ていると思いますが…。
 ドキュメンタリータッチもいいのですが、善し悪しですね。ハンディカメラもここまでこの手の作品が多くなると目新しさがなく、どうかと思うし…

  評価 ☆☆☆   (01/8/16)


ball1点子ちゃんとアントン
原題 PUNKTCHEN UND ANTON (独/メディア・スーツ 108分 99年)
監督 カロリーヌ・リンク
出演 エレア・ガイスラー  マックス・フェルダー、
 裕福な家庭の小学生、通称、点子ちゃんはアントンという同級生の男の子と、大の仲良し。でも近頃アントンは忙しくて、なかなか一緒に遊べない。アントンは2人暮らしのお母さんが病気で、家計のため夜、親にも内緒でアイスクリーム屋で働いているからだ。点子ちゃんはなんとかアントンを助けたいと両親に相談するが、2人とも仕事ばかりで無関心。そんな両親にあきれた点子ちゃんは、自力でアントンを助けようとするが…。原作は「飛ぶ教室」や「ふたりのロッテ」で有名なエーリヒ・ケストナー。監督は「ビヨンド・サイレンス」のカロリーヌ・リンク。

 「点子ちゃん」って変な名前だなぁと思っていたのですが、見始めて思い出しました。原作を昔読んだことがありました。「飛ぶ教室」とか「エミールと探偵たち」とかケストナーの作品は読んでいましたねぇ。この「点子ちゃんとアントン」はすっかり忘れていました。まあ原作は70年くらい前の作品なので、ちょっと設定等は変えているようです。
 尼崎で若い夫婦が子どもに食事も与えず、虐待のうえ殺してしまって、ゴミ袋に入れて捨ててしまったというニュースを聞きながらこういう作品を見るとつらいですね。うーん。こういう映画を見ることもなく、亡くなってしまったんですね。親の方も本や映画を見ることがなかったのかなあ。残念です。かなり以前から思っていたのですが、これからの21世紀、子どもというかこれからの世代にとってはとても生きにくい時代になってくると思います。日に日に悲惨な事故、資源が増えてきています。
 この作品を上映しているため、KBCシネマには珍しく子ども連れの姿が…。単館でやるのが惜しい作品ですね。「千と千尋…」の上映館を少し分けてあげたいです。登場人物の性格設定等もよく考えられていますし、ハッピーエンドもうれしいところです。子役の演技もうまい。ただ、小さい子どもにも見てもらうにはやはり、吹替が必要ですね。同じ列で見ていた子どもは、母親が字幕を読んであげていましたが、途中で飽きてしまっていました。  

  評価 ☆☆☆☆   (01/8/16)


ball1PLANET OF THE APES/猿の惑星
PLANET OF THE APES (米/FOX 120分 2001年 DRS)
監督 ティム・バートン
出演 マーク・ウォールバーグ  ティム・ロス
  2029年、宇宙探査をする人類の忠実な手足となって働くのは、チンパンジーやゴリラなどの類人猿たちだった。ある時、宇宙空間に発生した時空の歪みを調査しようとしてチンパンジーを乗せたポッドが消息不明になった。上司の反対を押し切り、それを追って飛び出していった宇宙飛行士レオも遭難してしまう。彼がたどり着いたのは、猿が人間たちを支配している惑星だった。

 68年に一度映画化され、テレビシリーズにもなった有名な作品ですが、私、年に似合わず(笑)、オリジナル版、ちゃんと覚えていないのです。テレビでやっていてもどうも、見る気がしないんですね。なぜか。今回、ティム・バートンが監督ということで、襟を正しての鑑賞です。
 あはは。こう書いてしまって良いのかどうかでずか、思わずニンマリ笑ってしまいますね。さすが、ティム・バートン、失望はさせません。リック・ベイカーの特殊メイクも見応えがあります。普通だったらちょっとたるみがちになるストーリーですが、猿のメイクとアクションでつなげています。猿より着陸が下手なマーク・ウォールバーグはともかく、ティム・ロス、怪演。エステラ・ウォーレンは美形だけれどちょっと使いきれていなかったかな。チャールトン・ヘストンはさすが全米ライフル協会会長。突っ込むところが色々あるのも後で楽しめます。どうしてあのポットは…? 何故、地球が…? 等々。(とは言っても、「パール・ハーバー」「赤影」に対する突っ込みとは異質です。為念)
 見所は神様?光臨とラストでしょうか。また、彼らしい暗さがない作品だったのが残念ですが、何せ「マーズ・アタック」の監督ですから(笑)  

  評価 ☆☆☆☆   (01/8/14)


ball1RED SHADOW 赤影
(東映他/東映 108分 2001年 DRS)
監督 中野 裕之
出演 安藤 政信  村上 淳
 16世紀半ば、戦国時代。ある戦国大名の元で任務を遂行する忍者集団「影一族」。彼らはライバルである大名の秘密兵器を探れとの命を受けて、城に忍び込む。そこには敵方の忍者が待ちかまえていた 。

 原作もテレビシリーズも知っている私に取って、この映画は何とも言いようがない作品です。原作を逸脱し過ぎています。こんなに変えるのならば、別に「赤影」というタイトルにこだわる必要がないですね。「赤影」というよりは「伊賀のカバ丸」です。とほほ。(黒崎輝、どこ行った?)
 監督の中野裕之のセンスは私も買っていて、「SFサムライフィクション」も面白い作品だと思います。いやこの「RED SHADOW」も面白いのは面白いんです。でも、何か違うような…。東映の50周年の忍者映画の監督として彼が依頼されたようですが、脚本の時点でかなり揉めたとのことです。そりゃそうだろうなあ。テレビシリーズの持ち味というかニュアンスが全然残っていません。残っているのは役名だけでしょうか。忍者軍団の設定も違うような気がする…。
 けなしてばかりですが、確かにアクションシーンとかは面白いです。でも、ただ、それだけ…。赤影たちも何故か「パールハーバー」みたいな疑似三角関係になっていて、青春ドラマっぽくなっているのもどんなものでしよう。悪を殺さない映画にするならば、女忍者も殺されなくても良かったのでは…。役目に苦悩する赤影達より悪役の藤井フミヤや神内孝則の方が生き生きした感じです。女忍者役の麻生久美子、衣装はとてもいい(笑)のですが、なにか台詞下手ですね。これまでそんなに思わなかったけれど…。これだと姫役の奥菜恵の方がうまいです。  

  評価 ☆☆1/2 (タイトルを変えるならば ☆☆☆1/2)  (01/8/12)


ball1LIES/嘘
(韓/K2エンタテインメント 108分 99年)
監督 チャン・ソヌ
出演 イ・サンヒョン  キム・テヨン
 レイプされた姉を持つ女子高生である主人公は初体験の相手は自分で選び、高校卒業までに処女を捨てようと決心した、親友が大ファンである有名な彫刻家を相手に選んだ彼女は彼を訪ね、望み通り初めての体験をする。彼女たちは何度か逢ううち、ふたりはムチや棒で相手を打つSM行為にのめり込んでいくようになる。韓国で発禁処分になった小説を原作に、映画化された作品。

 うーん。感想に困る作品ですね。儒教の思想が残る韓国でよくこんな小説、映画が発表、製作されたものだと感心するのがまず第一の感想。でも、これは映画として成り立っているのかなぁというのが率直な感想。日本で見るとAVとどう違うのかなぁという気さえします。やっていることはかなりハードです。女子高生が初体験の日に、ア○ルまで。そしてその後、相互に棒きれや針金くらいならともかく角材まで持ち出してのSM…。韓国版「愛のコリーダ」とも言われ、セックスシーンが大半を占める過激?な映画ですが、どんなものでしょう。結局、何が言いたい映画なのか、ドキュメンタリーっぽいところもありますが、女性の方が男の上手を行くということかな。しかし、話題性を狙った確信犯的な感じもしますね。フランスロケまでする費用があるなら、もうちょっとカメラをしっかり取って欲しい気もしますが、そんな映画でもないのかな。ボカシが薄いのにはちょっとびっくり。邪道かも知れませんが、映画とAVの違いの定義について考えさせられる映画です。
 話題性からか、女性客が結構入っていましたね。日頃この手のものを見られない女性にはいいかも知れませんね。男性に取っては、時間とお金の無駄になるかも…(笑)
 追加…音楽がポンチャックの帝王イ・パクサでした。彼がやっているとは知らなかったです。好きな音楽なのでちょっとうれしい(笑)  

  評価 ☆☆1/2  (01/7/22)


ball1彼女を見ればわかること
原題 THINGS YOU CAN TELL JUST BY LOOKING AT HER (米/ギャガ 110分 99年)
監督 ロドリゴ・ガルシア
出演 グレン・クローズ  ホリー・ハンター
  ロサンゼルス郊外に住む、年齢も職業も生活環境も違う女性たち。 5人の女性を主人公に、それぞれの人生に訪れた転機をオムニバス形式の群像劇で綴った人間ドラマ。監督はノーベル賞作家、ガルシア・マルケスの息子、ロドリゴ・ガルシア。2000年カンヌ映画祭「ある視点」グランプリ作品。

 5つの短編形式のストーリーからなるオムニバス形式のドラマですが、とてもうまくできています。それぞれが完全に独立している訳ではなく、相互に繋がった存在になっています。全員が全員と顔見知りというわけではなく、女医と患者。その部下と知り合う女性、女医の家を訪れる占い師等々、多彩な環境の女性が描かれています。そして分かりにくいのですが、5話全部に出てくる人物がキーパーソンになっています。出演がとても豪華な顔ぶれです。グレン・クローズ、ホリー・ハンターを始め、キャメロン・ディアス、キャリスタ・フロックハート、キャシー・ベイカー、エイミー・ブレナマン等。これだけ多忙そうな?女優を集めながら、わずか28日間で撮影を終了させたというのも驚きです。この作品の脚本は2年がかりで監督自身が書いているのですが、サンダンスでNHK国際映像作家賞を取ったため、NHKが資金提供しているようです。
 全編を通して見ると、あまり深いエピソードがなく、えっ、これでお終い?と感じるところもありますが、それぞれのエピソードを見ると一見幸せそうなキャリアウーマンや主婦が実は孤独で、それぞれ他人に救いを求めているところが伺えます。どこの国でも一緒ですねぇ。しかし、その辺をどう取るかによって観客を選ぶ作品になると思われます。
 グレン・クローズやホリー・ハンターの演技振りは当然ですが、キャメロン・ディアスの演技にはちょっとびっくりしました。単なるアイドルでは終わらないしたたかさがありそうですね。派手さはないけれどとても印象に残りそうな作品です。もうすぐ、小倉昭和館でやるようです。お勧め。  

  評価 ☆☆☆☆1/2  (01/7/22)


ball1パールハーバー
原題 PEARL HARBOR (タッチストーン/ブエナビスタ 183分 2001年)
監督 マイケル・ベイ
出演 ベン・アフレック  ジョシュ・ハートネット
 大空にあこがれ、アメリカ軍航空隊に入隊した兄弟の様な幼なじみの二人の青年。そのうちの一人が看護婦と出会い、激しい恋に落ちる。しかし、第二次世界大戦が始まると彼は自ら志願して、ドイツから攻撃されているイギリスに渡ってしまう。看護婦ともう一人の青年は彼の帰りを待つのだが…。

 うーん。「タイタニック」を連想させるようなスケールの大きなラブ・ロマンスを標榜していますが、どんなものでしょう。まず内容の割に上映時間が長すぎます。前半、かなり細かい情景描写をしながらのメインストーリーのラブ・ロマンスという体裁ですが、見終わってしまうと後に残らない気がします。どちらの青年が戦死してもOKよ、と言うような終盤の展開の仕方については、感動するよりちょっとあきれてしまったと言った感想の方がいいかも…。もっともこのチームの前作「アルマゲドン」にも私は全然感動できなかったので、相性のせいもあるのかも知れません。
 しかし、そうは言ってもこの作品のもう一つの売り、真珠湾攻撃のシーンの迫力はなかなかのものがあり、アクション的なものについては評価に値するでしょう。ここまで派手にやってくれるとはとこのシーンは感動します。史実との食い違いについて言われていますが、私が知る限りで言うと思ったよりしっかりしているという印象です。野外での日本海軍軍令部の会議などはちょっとした愛嬌と言ったところかな。でも、マコ岩松の役柄がミスターヤマモトになっていましたが、彼は真珠湾に向かっていません。指揮を取っていたのは南雲中将ですね。マコは、東野栄次郎に似ていました。台詞はずれていましたが…。でも、なぜジェームズ繁田が出演していないのかな。ちょっと不満。
 あと、零戦の塗装の色も違うかな。ついでに核と爆弾を落としたり、魚雷を撃ったりしているのは零戦ではありません。爆弾を落としたのが九七式艦上攻撃機、魚雷を撃っていたのは九九式艦上雷撃機と言います。
 ジョシュ・ハートネット、ちょっと存在感が薄い感じで役不足かな。ベン・アフレックもこの作品で言えば今ひとつ。ケイト・ベッキンセールはいいかも知れない。今後伸びるでしょう。  

  評価 ☆☆☆  (01/7/20)


ball1千と千尋の神隠し
  (徳間書店他/東宝 124分 2001年)
監督 宮崎 駿
声の出演 柊 瑠美  入野 自由
 10歳の少女・千尋は、両親と引っ越し先へ移動する途中、道に迷い不思議なトンネルのある場所に迷い込む。両親に連れられトンネルをくぐると、そこは人の気配のない、アミューズメントパークの跡地のような風致を持つ怪しい場所だった。食堂にあった食べ物を食べてしまった両親は豚になってしまい、残された千尋はこの場所にある様々な神々が憩う湯屋で働くことになった。 「もののけ姫」から4年振りに宮崎駿が監督した劇場長篇最新作。

 さすが宮崎駿。ストーリーはともかく、登場するキャラクターの造形の面白さだけでも圧倒される感じです。小さな登場人物についても細かな愛情を持って作られている感じを受けます。前作の「もののけ姫」などで見受けられた説教臭さもちょっと薄目になっていて、そんなに嫌らしさを感じさせる作品にもなっていません。しかし、それでいて、ちゃんと娯楽性とメッセージ性が両立させた作品になっています。
 キャラクターでは特に湯屋の女主人などはたまりませんね。出てくる度に見とれてしまいます。一体どういう感覚をしているのでしょうか。感心するばかりです。背景の画像の方もデジタル処理が主と言うこともあって、水関係の描写も美しいですね。ちょっと導入や結末、主人公の気持ちの動き、活劇などに不満な点がありますが、誰もが楽しめるいかにも日本的なファンタジーあふれるアニメ作品として世界に誇れる作品だと思います。

 封切り当初に見たのですが、かなりの人出でした。記録更新ものと言うのも頷けます。となりの席も母親と一緒の小さな男の子でした。色々声を上げるので、母親は静かにするように注意していましたが、この作品に関してはそんなに気になりませんでした。逆に意外な場面(神様がたくさん出てくるシーン)で怖がったりしていたので、ふーむと参考になりました。最後はしつかり喜んでいたし、ラストの音楽が終わるまでみんな聞いていたのも感心させられます。もうこの作品が最後なのかなぁ。

  評価 ☆☆☆☆1/2  (01/7/20)


ball1アカシアの道
  (ユーロスペース 90分 2000年)
監督 松岡 錠司
出演 夏川 結衣  渡辺 美佐子
 家を出て自立している編集者のところに叔母から電話が入った。一人暮らしをしている母親の様子がおかしいとのことである。診断を受けると母親はアルツハイマー症だとのことである。勤め先に在宅勤務の仕事にしてもらい、急速にぼけ始めた母親を一人娘が介護することになる。近藤ようこの同名コミックを原作に、「バタアシ金魚」の松岡錠司が脚本・監督した作品。

 ちょっと見ていてつらくなる映画です。単なる老人介護の話ではなく、家を離れてしまう原因となった母親との葛藤がもう一つのテーマになっています。生別した父親の顔も知らない主人公は、教師である母親に厳しく育てられました。そういった反発から実家に寄りつかなくなったと思われますが、年を経て母親の看病をしていてもどうしても、お互いぶつかり合ってしまいます。呆けが始まっているから余計に母親が言うことが押さえが利かずにきつくなってしまいます。娘の方も耐えられなくなり、別れて一年以上経つ男性に電話して会ったり、旅行したりするのですが、その辺が嫌みにならず、そういう行動をする必要性が感じられるところが心情的には逆に辛いところです。しかし、そうやって頼りにしたかった相手の男性が、二股を架けていたのか、母親の病気のことを知ると急に逃げ腰になるのがまた情けない…。 「愛を乞う人」の幼児虐待を連想させるところもありますが、そこまで行っていないところが、逆に現実感を持たせています。様々なシーンで観ている自分の立場と比較しながら見てしまいます。
 主演の夏川結衣は今まであまり印象に残った作品がなかったのですが、この作品は適役のような気がします。でも、母親役の渡辺美佐子にはかないません。地味だけれど佳品ですね。原作は松岡監督お得意の漫画ですが、この辺の嗅覚はすごいと思うし、原作の文学性もなかなかありそうですね。東京近郊にアカシアがあんな風に咲いている道があるとちょっとびっくりしました。

  評価 ☆☆☆☆  (01/7/15)


ball1山の郵便配達
原題 那山 那人 那狗   (中国/東宝東和 93分 99年)
監督 フォ・ジェンチイ
出演 トン・ルゥジュン  リィウ・イェ
 1980年代はじめの中国湖南省の山間部。自らの足で三日間をかけて村々を郵便配達して回っていた男が勇退を決意する。後を継ぐのは彼の息子が自ら希望した。彼の初めての仕事の日、予定にはなかったのだが、父親である彼も息子に同行することになった。

 いい映画です。父親がいつも郵便配達の旅に出ているため、息子は子供の時から余り父親に接していません。父親を恐れているわけではないのですが、距離を置いた対応をしていて、父親のことを素直に父さんと呼べないでいます。ふとした偶然で父親と一緒に郵便配達の旅に出ることになったおかげで、息子は父親が何年間も歩き続けた山道を歩くことにより、父親の仕事、思い、人生を感じ取ることができ、父親の方も息子と話をしながら歩くことにより、その成長ぶりを感じることができました。
 村々に住んでいる人たちとのやりとりも凄くいい感じですね。車がきていないわけでもないようですが、下界とのやりとりを郵便やそれを届けてくれる配達員に託している人々の生活ぶりが伺えます。
 エビソードや回想シーンに持っていく経緯がうまくて違和感がないところがいいですね。背景になっている風景もとてもいいです。山や水田の緑の色使いが印象的。途中の村での踊りのシーンの赤が生きています。細かいですが、歩いているシーンのスピードが結構速いところもいいですね。あれくらいのスピードでないと1日40キロ歩けないでしよう。二人に同行している犬の存在も効果的。犬の名前が次男坊というのもいいですね。一人っ子政策のせいか一人息子のようだったし…。
 途中の村での踊りのシーンのせりふで村の娘が親子に「今日はお祭りなりのよ」と言うシーンがありました。いつも村に行っている父親が祭りの日を知らないのはおかしいなと思いましたが、パンフによると結婚式という説明になっていました。どちらが本当? まあ、いずれにしろ今年一番の佳作でした。

  評価 ☆☆☆☆☆  (01/7/8)


ball1東京マリーゴールド
  (オメガ・エンタテイメント 97分 2001年)
監督 市川 準
出演 田中 麗奈  小澤 征悦
 母親と二人暮らしている21歳の女性が、合コンであるエリートサラリーマンと知り合う。しかし、彼は初デートの時「僕には米国留学している彼女がいる」という。一度はタムラを諦めようと決心した女性だが、会っている内に結ばれ、彼に「彼女が帰ってくるまでの1年間だけ、私とつき合ってほしい」と言い、期間限定の恋愛が始める…。林真理子の短編を、市川監督本人が脚色して映画化した作品。味の素「ほんだし」のCMを機に企画された作品のため母親役は当然樹木希林。

 市川準の作品にしてはちょっと台詞が多く饒舌な感じです。いつもは風景だけで済ませる様なシーンに台詞が入っていたりしています。そのせいか、ちょっと違和感があります。ストーリー自身もいかにも林真理子っぽい話ではありますが、期間限定恋愛というシチュエーションが、難しいところです。この作品、実はどんでん返しがあるのですが、相手役の小澤征悦をどう見るかで全然解釈が違ってくると思います。最初から彼女がいるとウソをついていたのか、単なる遊びだったのか。一年間でいいからつきあってと言い出したのは彼女の方ですから、その後のことについてうだうだ言うのは未練がましいとみるか、ある種自業自得と思うか…。でも、実際すごくありそうな話ですね。映画の題材としては地味な気もしますが…。女性の方の感想はまた違うでしょうね。お茶の水など街角の他愛もない風景の見せ方はさすがです。途中のCMも面白いので実際使わないのはもったいない(笑)

  評価 ☆☆☆1/2  (01/7/1) 8月14日加筆

 
ball1ギフト
原題 THE GIFT  (米/アミューズピクチャーズ 112分 2000年)
監督 サム・ライミ
出演 ケイト・ブランシェット  キアヌ・リーブス
 事故で夫を失い、3人の子供を抱えて苦しい生活をしている女性が主人公。生活保障だけでは食べられずに、彼女は自宅で占い師のようなことをして生計を立てているいる。彼女には生まれつき強い霊感があり、過去や未来のことについてを言い当てたりすることができる。結婚間近の女性の失踪事件が発生し、警察もなかなか捜査が進まない。彼女の父親が評判を聞いて占い師のところにやってくるのだが…。「死霊のはらわた」や「ダークマン」のサム・ライミの新作。

 ここのところ、「シンプル・プラン」や「ラブ・オブ・ザ・ゲーム」と言った正統派の作品を作っているサム・ライミ。今回はちょっと違うかなと思って見に行ったのですが…。うーん、普通のミステリーみたいで、ちょっと地味ですね。ビリー・ボブ・ソーントンが脚本を書いているということですが、その辺もどうなんだか。あんまり目新しさがない気がします。内容の割に出演陣は豪華。キアヌ・リーブスやヒラリー・スワンクが夫婦役なのですが、とんでもない暴力亭主だったりしておいおい、という感じです。うーむ。悪くはないけれど映画の日じゃなかったら見なかったかも…。アミューズってついに米国の作品の配給までやりだしたのですね。

  評価 ☆☆☆  (01/7/1) 8月14日加筆


ball1A.I.
原題 A.I. ARTIFICIAL INTELLIGENCE  (米/ワーナー 146分 2001年)
監督 スティーブン・スピルバーグ
出演 ハーレイ・ジョエル・オスメント  ジュード・ロウ
 地球温暖化でニューヨークなど大都市が水面下に沈んでしまった未来。愛情をインプットされた子ども型の人工知能ロボットが完成し、病に侵されて意識をなくしている子供を持つ夫婦のもとに養子として支給される。しかし夫婦の子の意識が回復し家に戻って来たため、ロボットは自分の居場所を失ってしまう。
「2001年宇宙の旅」のスタンリー・キューブリックの企画をスティーブン・スピルバーグが継いで映画化。
 ちょっと評判がよくない様ですが、私はそんなに否定的にはとらえませんでした。見ているとキューブリック的な面とスピルバーグ的な面が両方手できている様な作品で、その辺をどうとらえるかによってかなり捉え方が変わります。ファン層が重なるとはそんなに思えないので、お互いに影響されている面を否定的にとらえるのではないでしょうか。脚本を珍しくスピルバーグが書いていますが、その分、彼の意図が明白に出ているのかと言えば、ちょっと疑問な気もします。

 この映画は愛情を描いた作品ではなく、その裏側を描いた作品のように見えます。科学万能にの時代になっているように見える未来でも、愛情を交わすのにはとても大変な労力が必要ということです。基本にあるのは、やはりキューブリックではないかと思います。その辺の毒が出ているような気がします。しかし、終盤のエピソードになるとその辺が一変します。このエピソードが果たして必要かな?と思われます。ピノキオの話、そのままの引用もどうかと思うし…。特撮もすごいし、オスメント少年の演技も見応えがあります。彼のための作品と言ってもいいでしょう。ジュード・ロウのロボットは味がありましたね。それに対してウィリアム・ハートの存在が中途半端な気がします。

  評価 ☆☆☆☆  (01/6/30) 8月14日加筆


ball1ミリオンダラーホテル
原題 THE MILLION DOLLAR HOTEL  (独・米/東宝東和 122分 2000年)
監督 ヴィム・ベンダース
出演 ジェレミー・デイビス  ミラ・ジョボビッチ
  ロサンゼルスのダウンタウンにそびえる古ぼけしいミリオンダラー・ホテルで、ひとりの男が死んだ。それをきっかけに巡り合うそのホテルに住んでいる青年と娘、そして彼らをとりまく住民たちとの交錯。悲しみと幻惑のラブ・ストーリー。

 私の好きなヴェンダースの作品ですが、うむむ、どうしたものでしようか。特に前半、話が進まずちょっと退屈な感じです。U2のボノが原案・製作・音楽を担当しているのですが、その辺が生きていないのか…。私はどうもミラ・ジョボビッチと相性が遭わない気がします。彼女が出ている作品はどうも…。メル・ギブソンがかなり異質な刑事役とかしてがんばっているのですが…。都会に住む人々の孤独感など、後半になるとかなり意図が分かる様になってきましたが、ちょっとやはりダメかなあ。ティム・ロスもワンシーン、出ているので要チェック

  評価 ☆☆1/2  (01/6/28) 8月14日加筆


ball1ハムナプトラ2 黄金のピラミッド
原題 THE MUMMY RETURNS  (米/UIP 130分 2001年)
監督 スティーブン・ソマーズ
出演 ブレンダン・フレイザー  レイチェル・ワイズ
 邪悪のミイラ王・イムホテップとの闘いの後、結婚したニックとエブリンは結婚して、子供もできていた。しかし、彼らが発見した黄金のピラミッドの謎を秘めたブレスレットを追ってきた何者かに息子を誘拐さけれてしまう…。二人は彼を救出するため、再びエジプトへと向かう…。

 私はこの手の映画は結構好きで、「インディアナ・ジョーンズシリーズ」(ィンディ・ジョーンズと言うのはどんなものかな?)とか、ロマンシングストーンシリーズも結構見ています。一作目のハムナプトラも割と面白く見ました。主人公グループのメンバーが結構あっさりゾンビにやられてしまうところなど…。
 しかし、この作品はどうかと思います。確かに特撮のできには見るべきものがあります。それに対して、メインストーリーがちょっと寒い感じですね。一番の問題は不死ということでしようか。前作で死んだはずのイムホテップは生き返っているし、この手の冒険ものでは必須条件である死への恐怖が希薄になってしまい、格闘シーンでもあまりハラハラしなくて手に汗握らない感じになってしまっています。メインのアクションよりも現地民族のCG合戦の方が迫力ある感じなので本末転倒。ヒロインの殺され方もあっけないけれど、誰もそのまま死んでしまうとは信じていない(笑)。前作を見ているとまだわかりやすいですが、「スコーピオン・キング」をわざわざ呼び起こしてまたやっつけるという話が何か面倒くさい気がします。もっと単純でいいのに、時間も長いし、理屈っぽい感じかします。列車のエピソードもいらないのでは…。主役より悪役の方が魅力ある感じだし、特撮だけの映画かなぁ。ところで、レイチェル・ワイズ、二の腕太いですね。

  評価 ☆☆☆  (01/6/24) 8月12日加筆


ball1郡上一揆
   (郡上一揆制作委員会 112分 2000年)
監督 神山 征二郎
出演 緒方 直人  岩崎 ひろみ
 江戸時代中期、美濃国郡上藩は年貢米の取り立てに従来の一定の年貢をとるやり方に変えて、その年の出来高に応じて年貢を変える検見取りに変えようとしていた。農民たちはこれに反対した運動を起こし、一旦は国家老もこの案を取りやめることに同意したが、翌年藩主はまた検見取りを強行しようと指示を出した。

 今時の邦画には見られないなかなか硬派な作品です。岐阜県やJA、生協あたりが政策、協力して作っている作品です。出演も緒方直人、加藤剛、林隆三、前田吟等かなり豪華です。エキストラなどもかなり集めていて、結構お金がかかっていそうな感じです。監督は「ハチ公物語」「ひめゆりの塔」などの神山征二郎。史実に基づいているでしょうから、そんなに冒険はできないでしょうが、それなりの見せ場もありしっかりした作りになっています。まじめな作品ですが、この時期に作っていることもあって、ちょっと政治的なものも感じてしまいます。緒方直人の首は親父の拳、そっくりなのがびっくりだったのと加藤剛が時代劇で裁かれる方なのはちょっと違和感が…。岩崎ひろみは予想外の好演?
 北九州では自主上映の形態でしたが、予想以上の観客数でした。泣いている人も多かったです。  

  評価 ☆☆☆☆ (01/6/24) 7月22日加筆


ball1みんなのいえ
   (東宝 115分 2001年)
監督 三谷 幸喜
出演 唐沢 寿明  田中 邦衛
 自分の家を建てようとする、放送作家と教師の夫婦。妻の学校の後輩に設計を、父親に施工を依頼しようとする。ところが、元々はインテリア・デザイナーで初めての家の設計に気合いが入る設計者と、昔気質の大工の意見がことごとく対立する。「古畑任三郎」などでおなじみ、三谷幸喜の「ラヂオの時間」に続く二本目の映画作品。

 三谷幸喜が有名になったのは、テレビの「やっぱり猫が好き」以降だと思いますが、結構彼の作品は見ています。最近、朝日新聞の夕刊にエッセーを週一回連載といるのですが、これもなかなか面白いと思います。
 今回の作品ですが、前作と同じくコメディの体裁になつていますね。若夫婦が家を建てようとするのですが、それが次第に二人のものではなく、親や設計デザイナーなどを含めた「みんなのいえ」になっていくという話です。結構面白い話だし、笑えます。でも、ちょっと不満を感じました。「みんなのいえ」ではあるのですが、肝心の夫婦がちょっと弱いのです。田中直樹と八木亜希子という、まあ俳優が本業ではない二人が演じているというのはいいとして、自分たちの家と言う意識があまり感じさせられないのが不思議です。自分たちでこういう家を建てたいと意志がないのです。ドアが内開きでも外開きでも関心がなく、和室があろうがなかろうがデザイナーと大工任せというのはどうも…。普通、主婦だったら水回りはどうしてほしいなどと注文するはずですよね。この辺が一切ふれられていません。それと費用の問題です。結構とお金がかかっている家だと思いますが、その辺無頓着ですね。大工との会話で少し出てくるくらいです。あんな仕様もない脚本しか書いていない脚本家と教師の夫婦がんなに稼いでいるとも思えないのですが、ローンの話も出てきてないですね。そもそも今住んでいる家もベッドルームなどかなり広そうで、夫が仕事する書斎をのぞけは引っ越す理由がない? そういえば新居の書斎もでてこないしなあ。そういうのは無視して、唐沢寿明演じるデザイナーと田中邦衛演じる大工のやりとりだけ見ていればいいのかなあ。それはそれで面白かったがちょっと主役がそちらだと言うのも変な気がしました。全体としては「ラヂオの時間」の群像劇の方が私にとっては面白かったです。

  評価 ☆☆☆☆  (01/6/23) 7月20日加筆

ball1花様年華
原題 花様年華 IN THE MOOD FOR LOVE (香港/松竹 98分 2000年)
監督 王家衛(ウォン・カーウァイ)
出演 梁朝偉(トニー・レオン)  張曼玉(マギー・チャン)
 1960年代の香港。偶然、同じ日に同じアパートに引っ越してきた二組の夫婦がいた。いずれも共稼ぎなのだが、出張などが多く生活がすれ違いがちである。屋台などで挨拶をかわしているうちに、お互いの伴侶同士が不倫関係にあることがわかる。「恋する惑星」「楽園の瑕」のウォン・カーウァイの新作、主演はトニー・レオンとマギー・チャン。

 いゃぁ、大人の映画ですね。仕掛けは不倫の話になっていますが、その中身は実にプラトニック。現実的ではないかも知れませんが、設定を60年代にしているせいでかなり雰囲気がでています。主役二人の実年齢と近い役柄でしょう。その辺りも効果的になっています。  従来のウォン・カーウァイ、撮影のクリストファー・ドイル、コンビのタッチとちょっと違う気もしますが、これはこれでなかなか見応えがあります。もう一人カメラにリー・ピンピンがクレジットされていますが、その辺りの影響でしょうか。マギー・チャンのチャイナ・ドレスの色合い、最初の屋台へ向かう階段でのすれ違い、レストランでの食事の情景のアップ、窓や鏡を使ってのシーン構成、ホテルのカーテンなどのふくれ方。どのシーンを見ても無駄がなく、うっとりする様なシーンの連続です。テーマカラーは深紅。音楽もなかなか効果的ですね。トニー・レオンとマギー・チャン、いずれの伴侶も声は聞こえるけれど、映像としてはちゃんと撮っていないところも効果的です。しかし、彼らを放っておいて不倫するとはなんと贅沢な相手でしょ(笑)
 終盤のシンガポールやカンボジアのシーンがいるのかなぁという疑問がありますが、CGなどに頼らず、じっくりと俳優と映像で見せてくれた作品だったという気がします。
 


  評価 ☆☆☆☆  (01/6/17)


ball1メトロポリス
(東映他/東宝 103分 2001年)
監督 りん たろう

 超高層建築ジグラットの完成式典に沸く超巨大国家都市・メトロポリス。そこに生体を使って人造人間を開発する天才科学者が潜伏しているとの情報を元に捜査を始める。秘密の研究所を突き止めた彼らが見たのは、メトロポリスの陰の権力者の以来で作られたアンドロイドだった……。手塚治虫の原作を「AKIRA』の大友克洋が脚本化し、「銀河鉄道999」のりんたろうが演出した長編アニメーション。

 原作は私も小学生の時だったか、読んでいていまだにすごく印象に残っています。この作品、原作とは違い、若干ストーリーをいじっています。また、原作とはアンドロイドの名前が違うし、両性具有でもありません。今もう一度、原作を読み返してみると、かなり平面的なアニメなのですが、映画化されたこの作品はCGにかなり凝っていて、かなり費用がかかっている風に見えます。しかし、原作は50年ほど前の作品、しかもSFですから、ある程度古さを感じさせるのは仕方がないものかもしれません。何か先に映画になった作品に持っていってしまわれているという感じかな。でも、それだけ他の作品に先んじる先見性を持っていた作品とも言えます。
 本多俊之の音楽がいいですね。ディキシーランド・ジャズみたいな音楽がよく合っています。ちょっと今になっては類型的な話で、一般的には難しい作品かも知れませんが、個人的には思い入れもあり、受けた作品です。


  評価 ☆☆☆☆  (01/6/10)


ball1ホタル
(東映他/東映 114分 2001年)
監督 降旗 康男
出演 高倉 健  田中 裕子
 主人公は鹿児島の漁師。激動の「昭和」と言う一つの世代が天皇の崩御によってその幕を閉じた年、青森に住む友人の訃報を聞き愕然とする。そして、その墓前に病身の妻を伴って訪れた。彼らは第二次世界大戦時の特攻隊員の生き残りであった。

 良くも悪くもいかにも典型的な日本映画と言った感じの作品です。カメラは御大、木村大作ですが、動き回ることなく、健さんやそのバックにある風景をとり続けます。ストーリーの方もメインにあるのは、生と死の問題と夫婦愛と言った普遍的なもので、それに戦争問題や民族問題を絡ませたオーソドックスな作品です。厳しい言い方をすれば、ターゲットは高年齢層の人でしょうが、それ以外もそこそこ幅広い年齢層の人に受け入れられる作品でしょうか。高校生相手の試写会でも好評だったようですし…。
 主演はもちろん高倉健、脇も小林稔侍や井川比佐志、夏八木勲と言ったベテランで固めています。しかし、とりわけ熱演しているのは田中裕子や奈良岡朋子と言った女優陣の気がします。ただ、田中裕子はちょっと健さんと年齢が合わなく見えるのが不自然な気もしますが…。井川比佐志の孫娘役の水橋貴己という子が、結構キーパーソンな役柄なのですが、ちょっと力不足な点は否めません。あと、原田龍二や小澤征悦もでていますが。扱いが軽く、出ているだけという感じ…
 まあそこそこの水準作ではあるけれど、そんなに高い評価を与えるほどの作品でもないと言ったところが率直な感想でしょうか。メインになると思っていたラストの韓国に出かけるシーンが割と短くて、逆に浮いた感じに見えました。特攻前や妻の病気などのエピソードをちょっと欲張って詰め込み過ぎたのでしょうか。何故、田中裕子と結婚するようになったのかなど、もう少し、丁寧に描いた方が良い気がしました。


  評価 ☆☆☆  (01/6/10)


ball1マレーナ
原題 Malena (伊・米/ギャガ=ヒューマックス 92分 2000年)
監督 ジュゼッペ・トルナトーレ
出演 モニカ・ベルッチ  ジュゼッペ・スルファーロ
 第二次世界大戦に参戦したイタリア・シチリアの田舎町。ある少年が初めてマレーナと言う女性に出会う。彼女は彼が通っている学校の教師の娘で、出征している兵士の妻。その美しさは町中の男たちを魅了し、町中の女たちから嫉妬の目でにらまれていた。思春期を迎えた少年は、彼女の美しさに心をときめかせ、彼女に恋い焦がれるようになった。彼の夫が前線で戦死したという知らせによって、彼女に不幸が訪れる。短編小説を原作に「ニュー・シネマ・パラダイス」のG・トルナトーレが脚色・監督した新作。

 思春期の少年が年上の女性に対して抱くほろ苦い初恋…。文学や映画に取ってはある種、普遍的テーマを描いた作品です。演出したのがトルナトーレということで、それなりにそつなくできてはいます。しかし、そう言った普遍的な内容を彼がどう撮るのかを期待してみるとちょっと期待はずれに終わった気がします。
 雰囲気はいいのですが、メインストーリーに今ひとつ乗れなかったのが残念です。少年の女性に対する感情はかなり俗っぽい感じだし、不倫関係で揉めるところもコントみたいでどこか陳腐な感じです。マレーネが身を持ち崩した後、街の女性たちの反感を買ってリンチされたりするのも何かやり過ぎな感じもするし、それなのにラストでわざわざまた街に戻ってくるのもちょっと理解できませんでした。
 マレーナを物語の中心に持ってきているではなく、少年の視点で見ている客観的なストーリーになっているため、なぜマレーナが酷い目に遭っていくのか、理由がよくわかりません。そのため、風景がとてもきれいな街なのですが、人々はすごく冷たい感じがします。少年の父親やマレーナの父親の性格描写は割と描かれているのに、少年やマレーナの性格があまり描かれていないため、肝心の少年もただの色気付いたガキのように見えます。マレーナを見ているだけで助けようともあまりしないし…。
 この作品は最初に女優ありきですね。マレーネを演じているベルッチの魅力でこの作品が成り立っている気がします。あと、街の風景がとても気持ちが良いですね。お約束のエンリオ・モリコーネの音楽もいつもながら印象的。その辺のデテールはいいのに、全体を通してみるとやはり期待していたほどの感動がなかったのが、残念でした。前作の「海の上のピアニスト」もそうだったけれど、ちょっと私とピントが合わなくなっている気がします。なお、マレーネを演じているベルッチは「マトリックス2」に出演のようです。


  評価 ☆☆☆  (01/6/9)


ball1JSA
原題 JSA(Joint Security Area) (韓国/シネ・カノン=アミューズ 110分 2000年)
監督 パク・チャヌク
出演 イ・ヨンエ   イ・ビョンホン
 韓国と北朝鮮の国境にある板門店の共同警備区域JSAで銃撃事件が起こった。生き残った南北両軍の兵士たちは何故か互いに全く異なる主張を繰り返す。事件の解決をゆだねられた中立国監督委員会に、責任捜査官として派遣された韓国系スイス人である女性将校は、事情聴取を続けながら、次第に事件の真相に迫っていく。

 韓国で、「シュリ」や「タイタニック」を上回る歴代興収ナンバーワンになった作品とのです。最近、日本で公開される韓国映画が増えてきましたが、日本でも異例の拡大公開となりました。
 場面、撮影や編集などは非常にうまいと思いました。銃撃事件自体は冒頭で映してしまっていて、そのシーンが証言や推理の進展に従って再三出て来ます。その展開の仕方もうまく、撮影も微妙に違っていて、矛盾がない様に撮っています。また、死体の検死のシーンなども良くできていて、リアリティがある気がします。しかし、底辺にあるストーリーの流れがどうもちょっと浅い感じがします。事件の原因にしても、結末にしても意外性があまりありません。そういうことを求める映画ではないのかも知れませんが、ちょっと不満です。キーパーソンになっているスイス軍の女性将校の設定もどうかと思います。登場人物が男性ばかりになるのを防ぎ、謎解きをさせるための設定でしょうが、どうも登場シーンから不自然さが目立ちます。
 演じている女優自体は非常にきれいでいいのです。(プロモ来日の様子も見ましたが、素顔もなかなか…)。主演の北の士官は「シュリ」にも出ていたソン・ガンホ。韓国側の兵長も川口能活に似ていて、かっこよかったです。はたして日本でもヒットするでしょうか。悪い作品ではないので、隣国の情勢の勉強がてら見るのもいいでしよう。


  評価 ☆☆☆1/2  (01/5/27)


ball12001年宇宙の旅〈新世紀特別版〉
原題 2001: A SPACE ODYSSEY (米MGM/ワーナー 149分 68年)
監督 スタンリー・キューブリック
出演 キア・デュリア  ゲイリー・ロックウッド
 1968年に製作されたスタンリー・キューブリックの代表作で、アーサー・C・クラークの短編を彼と共に長編の脚本にして、映画化した作品。その後の映画作品などに多くの影響を与えた作品だが、タイトルと同じ年になった今回は「新世紀特別版」と銘打っての公開。以前は70mmのシネラマ方式で上映されたのだが、それと同じ画面比率を35mmフィルムで再現している。

 やはり今年はこの作品を見ないわけに行かないでしよう。久々の鑑賞です。私が初めてこの作品をちゃんと見たのは、東京・京橋のところにあったテアトル東京という映画館であったリバイバル上映でした。この映画館、今はもうありませんが、シネラマの設備を持っていて、とにかくスクリーンが大きく、その上湾曲していました。前の方の席で観ていると、画面の両端まで視線が行き渡らず、字幕が右側に出ていると左側で何が行われているかわからない(笑)という様な映画館でした。作品の内容と共にさすが、東京の映画館と感心した記憶があるのですが、その後取り壊されてしまい、西武系のホテルの中のミニシアターにその形を変えてしまいました。
 この作品、今のCG技術からすれば、何ともない作品かも知れませんが、その当時としてはやはり画期的な作品でしょうね。宇宙遊泳のシーンやラストの光の洪水のシーンなども傑出したものだと思います。宇宙船の造形やステーションの中の椅子など、記憶が薄れていたシーンも再確認ができました。ストーリー的には意味が分からないとも言われがちですが、そんなことは言わずに感覚で観る映画でしょうね。キューブリックも一切説明はしないと言っていたことだし…。
 シネコンのレイトショーで観客は少ないのかなと思っていたら以外と多く、ラストのクレジットが終わった後の「美しく青きドナウ」が鳴り終わるまで、皆さんが席を立たなかったのには感動しました。うーむ。シネコンの映画ファンってかなりマナー良いですね。

  評価 ☆☆☆☆  (01/5/26)


ball1トラフィック
原題 TRAFFIC (米/ヘラルド 148分 2000年)
監督 スティーブン・ソダーバーグ
出演 マイケル・ダグラス  ベネチオ・デル・トロ
  米国の社会に根深く浸透し、陰の経済を形成している麻薬流通の実態を、麻薬を送り込む側、流通業者、取り締まる捜査官など複数の立場から描く、社会派のサスペンス映画。3つのストーリーを軸に、膨大な登場人物をまとめ上げた作品。監督は「セックスと嘘とビデオテープ」のスティーブ・ソダーバーグ。「エリン・ブロコビッチ」と本作で今年のアカデミー監督賞、ダブル・ノミネートになった作品。

 148分の長編。メキシコのティファナ、米国のサンデイエゴ、ワシントン、シンシナティなどを舞台に直接の接点がない話をうまくまとめています。それぞれの画面について色調や画質を変えて撮影しています。ロケもそれぞれ現地でおこなったようで、かなり迫力がある映像になっています。題材的にはオリバー・ストーンがやってもおかしくない題材ですが、ソダーバーグ、それなりに頑張っている感じです。監督自らが撮影を担当しているようですが、手持ちカメラも多用しています。この辺りはかなり効果的なのですが、観ているほうに取ってはどうもテレビのドキュメンタリーを見ている様な感覚がして、映画やドラマにのめり込むというところまで行かず、ふーん、そうなのね、と言った所で感想が終わってしまうような気がします。ちょっとエピソードを詰め込みすぎたのか、それぞれのインパクトが薄くなってしまっている気がします。ドラッグにはまるマイケル・ダグラスの娘の話もちょっと中途半端だし、夫が麻薬商人であることを知らなかったキャサリン・ゼタ・ジョーンズがいつのまにか、その稼業に入っていく経緯も生活のためとは言え、どうも納得できる説明になっていません。しかし、助演男優賞を取ったベネチオ・デル・トロを儲け役ですね。サンディエゴやティファナは10年前に行ったことがあるのですが、国境越えのシーンなどちょっと懐かしい気がしました。米国から出る時はノーチェックなのですが、戻ってくる時はチェックされます。地元の人でもサンディエゴ側に車を置いていくことが多いのに私たちは、知らずに自動車で行って来ました。


  評価 ☆☆☆☆  (01/5/20)


ball1ショコラ
原題 CHOCOLAT (米/松竹=アスミック・エース 121分 2000年)
監督 ラッセ・ハルストレム
出演 ジュリエット・ビノシュ  ヴィクトワール・ティヴィソル
 1950年代のフランスの保守的な田舎町。そこに流れてきた母親と少女は小さなチョコレート・ショップを開く。客の好みをピタリとあてる彼女のチョコは一部の客に評判になるが、四句節から復活祭にかけて絶食する習慣があるような古い村では、それを苦々しく見ている人たちもいる。村長はこの親子を何とか追い出そうと画策するが…。監督は「サイダー・ハウス・ルール」のラッセ・ハルストレム。

 明治製菓他、お菓子業界大推薦の作品です。(笑) 見終わった後、チョコの一つでも食べたくなりますねぇ。主演はジュリエット・ビノシュ。こう言った非凡で個性的な主人公をさせるとピカ一ですね。このキャラクターを受け入れられるかどうかが、この作品の評価に大きくかかわってきます。私は程々ですね。そんなに鼻につく嫌らしい役ではなかったので、ある程度受け入れられました。娘役はヴィクトワール・ティヴィソル。あの「ボネット」の女の子です。うーん。かわいい。彼女だけ見ているのもいいですね。
 ジョニー・デップやジュディ・ディンチもいいですね。村長役もいいかな。他にもレナ・オリンやキャリー=アン・モスが出ていて、脇役はかなり豪華です。舞台はフランスの田舎なのですが、話ているのは英語。それはいいのですが、挨拶はボン・ジュールなどとフランス語を喋っているのが、どうも意味不明でしたね。口の動きを見ていると吹替ではないと思いますが…。
 ストーリーは予定通りですが、逆にちょっと薄っべらな感じもしますね。ラストの村民の心変わりも唐突な感じだし…。アカデミー賞の候補になっていましたが、この監督の作品としては、そんなに評価すべき作品ではないと思います。チョコや料理は美味しそうだし、水準作ではあるのですが…。

  評価 ☆☆☆1/2  (01/5/19)


ball1クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲
(東宝 89分 2001年)
監督 原 恵一
声の出演 矢島 晶子  ならはし みき
 春日部に出現した20世紀博というテーマパーク。1970年の街角や風俗を再現し、大人の郷愁を誘って評判のテーマパークなのだが、その裏には世界全体を「あの懐かしい時代」に戻そうとするとんでもないたくらみが隠されていた…。 。

 こういう映画まで見に行っていたらきりがなくて大変なのですが、とても評判がいいので、見に行ってきました。みてびっくり、とても子ども向けとは思えない内容です。大人を対象にしている映画といえるでしょう。逆に子どもには分からない話題で難しいのではないかと思える位です。
 冒頭から大阪万博の太陽の塔が出てきます。これが何かを知っているか知らないかで、かなりの対象が絞られてしまいますね。私は万博には行ってはいませんが、パビリオンの名前は結構覚えています(笑)。他にもかなり懐かしいものが出てきますね。晋ちゃんの親、ひろしとみさえが万博を知っている世代とも思えないのですが、しんちゃんも登場して10年経っているので、その辺は大目にみましょう。それを言ったら、磯野波平は今いくつだということにもなりまかすから…。昔の町並みの造形がいいですね。ちょっとしみじみしてしまいました。敵役の名前はケンとチャコだし、ケンメリは出てくるし、スバル360が公用車?だし…。まるでプロジェクトXの世界です(笑) しかし、そんなことで感傷的になっていたら、私たちも秘密組織「イェスタディ・ワンス・モア」の餌食になってしまいます。この映画も妙に感傷的になるだけでなく、そのことに警鐘を鳴らしている様なところがシニカルな作品です。ラストで一件落着したあと、家族愛の話にもっていったところがちょっと…ですが、そんなにおしつけがましい話でもなかったのでよかったです。
 うむむ。このシリーズ、テレビ放映の時も放映時間が早いので、なかなか見せれないのですが、ちょっとほうっておけない作品です。

  評価 ☆☆☆☆  (01/5/19)


ball1ギター弾きの恋
原題 SWEET AND LOWDOWN (米/ギャガ 95分 99年)
監督 ウディ・アレン
出演 ショーン・ペン  サマンサ・モートン
 1930年代に活躍した世界で二番目にうまいと自称していたジャズ・ギタリスト、エメット・レイの伝記映画。彼の大ファンであるウディ・アレン監督の新作。出演はショーン・ペン、サマンサ・モートン。

 監督自身や著名なジャズ評論家などのインタビューを挟んでギタリストの半生について描いていくスタイルはいかにもウディ・アレンらしい作りになっています。ギタリストを演じているのはショーン・ペンですが、なかなかいい味を出しています。女性やお金にだらしなく、盗癖はあるし仕事に平気で穴をあけたりする男ですが、自分は芸術家だからそうしているのだからいいのだという独特の哲学はそれなりの説得力があり、そんなに嫌みではありません。演奏シーンはちょっと音とギターを弾く手が合ってはいないけれど、それなりにうまく見せています。彼が唯一惚れ込む女性を演じているのがサマンサ・モートンですが、彼女がまたいい演技です。口がきけない女性の役ですが、表情の作り方がうまく、感情がよく出ています。食事のシーンがやたら多いのですが…。彼女の演技には、主人公の一時的な妻を演じていて、いつもは濃い役のユマ・サーマンもちょっとかすんでしまっている感じです。
 恋愛映画というのが宣伝文句になっていますが、ちょっと音楽の方を追いかけすぎた感じもして、その辺はちょっと中途半端な感じもしなくはありません。でも、おしゃれな佳作と言ったところでしょうか。
 ところがこの作品、主人公は実在の人物ではなく、監督が作り出した人物なのです。見事にだまされますねぇ。主人公のモデルは作品中でも彼が一番うまいと主人公に言わせているギタリストで監督自身が大ファンだそうです。ウディ・アレンのこの手の映画としては、「カメレオンマン」というのがありますが、これも傑作です。未見の方には是非お勧めです。

  評価 ☆☆☆☆  (01/5/13)


ball1アメリカン・サイコ
原題 AMERICAN PSYCHO (米/アミューズ 102分 2000年)
監督 メアリー・ハロン
出演 クリスチャン・ベール  ウィレム・デフォー
 ニューヨークのウォール街で働くエリート・ビジネスマンが主人公。全てを手に入れ何一つ不自由がない筈の彼だが、さしたる理由もなく次々に人を殺していく…。ブレット・イーストン・エリスの、全米にセンセーションを呼び起こしたという原作の映画化。監督は「I SHOT ANDY WARHOL」の女流監督メアリー・ハロン。

 予告編に釣られて見に行ったのですが、さっぱり何が言いたいのかわからない作品でした。80年代、言うなればバブルの頃が舞台で、ヤッピーやヤング・エグゼプティブなどと騒がれていた様な青年が主人公です。何故かホームレスやライバル?次々と殺していく訳ですが、心理的なものから来るものなのか病気なのか、説明不足で分かりにくい。殺害の証拠はいくらでも残しているのに、警察は調べに来ない。唯一調べに来る探偵のウィレム・デフォーだが、終盤までは出てこない。警察と銃撃戦しても死なない(笑) まあ、そういう映画ではなくサイコ・ホラーに近い作品なのでしょうが、不自然さばかりが目立ち、非常にストレスが溜まる映画です。殺害する動機も自分より洒落た名刺を作ったからとか、自分が取れない有名レストランの予約がすぐ取れるからとか言う理由なので、殺害シーンはかなりどぎついのですが、思わず苦笑してしまいます。「レス・ザン・ゼロ」の原作者の作品とのことですが、原作もこんなのかな。ディカプリオも出たがっていた映画とのことですが…
 代わりに主人公を演じているクリスチャン・ベールがカッコよく、筋肉美を見せびらかしています。「太陽の帝国」の少年役の彼からは想像が出来ませんね。彼のファンの人以外は見ても退屈な映画でしょう。ああ、あと、ジェネシス、フィル・コリンズとかホイットニー・ヒューストンの音楽の講釈も笑えます。

  評価 ☆☆  (01/5/13)


ball1スターリングラード
原題 ENEMY AT THE GATES (米、英、アイルランド/日本ヘラルド 132分 2001年 SRD)
監督 ジャン・ジャック・アノー
出演 ジュード・ロウ  ジョゼフ・ファインズ
  第二次世界大戦、ヨーロッパにおいて凄惨を極めた戦場の一つが、ソ連のスターリングラードでの攻防戦であった。ソ連とドイツが勝利をかけて戦った激戦地を舞台に、実在の狙撃者としてその名をあげたソ連の伝説の狙撃手がいた。そして、そんな彼を抹殺しようとドイツも狙撃者を送り込んできた。
 監督は「薔薇の名前」「セブン・イヤーズ・イン・チベット」の名匠ジャン・ジャック・アノー。出演はジュード・ロウ、エド・ハリス等。

 単純に見れば戦争映画です。娯楽映画としての戦争映画が受け入れられにくくなって以来、一時期、あまり製作されなくなりましたが、「プライベート・ライアン」のヒット以来は、割とコンスタントに作られている気がします。今年はもうすぐ、「パールハーバー」も公開されますね。この「スターリングラード」は第二次世界大戦の中でも有名な闘いを描いた作品ですが、記憶が正しければ、大昔に「スターリングラード大攻防戦」という映画を観ている気がします。あの映画は戦車戦がメインだつたかな。今度の「スターリングラード」も「プライベート・ライアン」同様、戦場の凄惨な描写が話題になっている様ですが、見てみるとかなりそれだけではなく、ちょっと様子が違うような気がします。なるほど冒頭の突撃シーンなどはなかなかの迫力があります。しかし、その後は戦場を舞台としての狙撃手同士の一対一の闘い、あるいは女性兵士を間に挟んでの味方の幹部との三角関係を描いた作品になっています。
 狙撃手達の戦いはとても新鮮で見応えがあったのですが、もう一方の恋愛劇の方は段々進行してくると、ちょっと叙情的すぎて緩慢になり、逆効果な感じも受けました。
 主役の狙撃手を演じていたのが、最近人気上昇中のジュード・ロウですが、何か雰囲気があっていいですね。相手役のドイツ将校がエド・ハリス。さすがにうまく、見ごたえがある演技をしています。女性兵役のレイチェル・ワイズは今一つかな。あんまりきれいでない所を狙ったんでしょうが…。あんな所で濡れ場をしなくてもと思うけれど、ジャン・ジャック・アノーだから欠かせないのかな?
 で、冒頭の突撃シーンの話に戻りますが、とても悲惨な光景ですね。徴兵されたばかりの様な若者達に十分な武器も渡さずに肉弾戦に突撃させる。しかも敵陣まで行き着かず、逃げ帰ってくる彼らを味方である筈のものが撃ち殺していくとは…。ソ連もむごいことさせるものです 。この辺を考えると母親の為に三人目の兄弟を殺させてはならないと前線に探しに行く「プライベート・ライアン」考えようによっては米国流の呑気な話にも思えます。
 ソ連とドイツの間に翻弄されるスパイ?少年の行動も今一つわからないところもあるし、狙撃手の闘いもいちいち狙わずに、隠れていそうなところを砲撃すればいいのにとも思うけれど、それを言ったら話にならないかな。
 狙撃手の決着もちょっとあっけなかった気がします。ラストの病院のシーンもカメラの引きで終わったら評価するけれど、その後また寄ってしまったのが私的には減点。全体の雰囲気はいいだけにちょっと惜しい作品です。

  評価 ☆☆☆☆  (01/5/6)


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