オルセー美術館展
展覧会名:オルセー美術館展
会場:東京都美術館
日時:1996年3月2日
入場料:1100円



 パリの駅舎を改造したというオルセー美術館に、1度は行ってみたいとは思っていたけれど、そこにどんな絵が展示されているのかについては、あまり知識がなかった。印象派?それともシュールレアリスム?大勢の観客が詰めかけていると聞いていたから、多分印象派の絵が大半だろうと考えていた。

 東京都美術館で、普段使わない入り口からメイン展示場へと入ると、すでに大勢の入場者で、どの部屋もいっぱいだった。入り口を別にして柵をこしらえてあるぐらいだから、きっと日曜日ともなれば、中に入れない人で列ができるのだろう。絵ははやり、印象派のものが多く、モネ、マネ、ルノワール、ゴッホ、ゴーガンと、いわゆる大御所の絵は抑えていた。もっとも、それぞれの作家の代表作、と胸を張っていえるだけの作品かというとそうでもなくて、まあとりあえず、人寄せパンダ的に出展されていたのは、ちょっと残念だった。

 印象に残ったのは、雪景色を描いた2枚。1枚はモネの「オンフールの雪の道と二輪馬車」。郊外の雪の道を、馬車が進んでいく絵で、道の両脇に、屋根に雪が積もった家が数軒、建っている。冷え冷えとする光景なのに、なぜか暖かみを感じるのは、雪の持つ柔らかいイメージが、頭にあるからなのだろう。田舎の雪景色に、都会では見られなくなった田舎の暖かい風情を、感じることができたからだろう。

 もう1枚はギュスターヴ・カイユボットの「雪を被った屋根」。モネの絵から一転して、こちらは都会の家並に積もった雪を、少し高い視点から描いている。今の東京のように、平たいビルが延々と続く状況では、おそらく永遠に見ることのできないであろう景色。屋根の稜線と空が融け合うその隙間を、白い雪が埋めていて、何ともいえない美しさを醸し出している。

 最後に、お気に入りの画家、オディロン・ルドンの絵が2枚、アンリ・ルソーの絵が1枚、出展されていて、嬉しかった。特にルドンは、初期の黒い版画のような絵ではなく、派手な色彩を用いるようになってからの作品だったのがよかった。郊外のそびえ立つ木の下で、カンデラに照らされて巡礼が休息を取っている「エジプトへの逃避」。夜をかくも美しく描く絵には、なかなかお目にかかれるものではない。そして「エヴァ」。ルドンが何度も描いたモティーフの「目を閉じて」にも似た、地平にそびえる女性の半身が、わずかに顔を多々向けた絵には、深い瞑想から紬だされる、優しい気持ちにあふれているような気がした。

 展覧会美人は175センチくらいはあるだろう長身を、はやりのロングダウンで包んだ、モデルのような女性。ルドンの前を何度も行ったり来たりしていて、その度にすれ違った。満足満足。


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