シューマッハが抜けて、どうなることかと思ったけれど。今年のエフワンは、とんでもなかったね。
もちろん、とんでもなく、おもしろかった、ってこと。
去年までは、シューマッハのフェラーリも最後まで優勝争いをしてはいたけれど、二年連続ルノーのアロンソがチャンピオンになって。
そして今年。
シューマッハの抜けたフェラーリに、キミ・ライコネンが「勝つために」マクラーレンから入ってきて。
そのマクラーレンには、チャンピオンチームのルノーを飛び出したチャンプ、アロンソが入ってきて。
マクラーレンのもう一人は、ロン・デニスの秘蔵っ子、新人のハミルトン。
アロンソ抜けたルノーは、代わりに入ったコバライネンと、居残りのフィジケラ。
フェラーリのもう一人も、皇帝ミハエルの最後の相棒、マッサが残留して。
前評判では、(僕は、もうあんまり雑誌も読まなくなったので、僕の前評判、ってことね)やっと来たライコネンの時代、それに挑戦者として絡む現役チャンピオン、アロンソ。こういう構図だったんだよね。
開幕戦は、ライコネン、アロンソ、そしてマクラーレンのハミルトン。
それ見たことか、ライコネンの独走だ。とか思って、その後あんまり観てなかったのだけど、気がついたら、おもしろいことになってたね。
開幕から四戦の優勝者は、ライコネン、アロンソ、マッサが二回。
そして、この時点でのポイントリーダーは。
なんと、マクラーレンの新人。優勝していないハミルトン、30ポイント。続くのはアロンソ28。脅威の新人、ハミルトン!
開幕からずっと表彰台に乗り続けているハミルトン、6戦7戦を連勝して、その時点で58点。2位のアロンソ48点。マッサ39、ライコネン振るわず32点。
優勝しなくても、三位になれば4点しか差がつかないポイント制を考えると、前半であっても26点の差は、もうチャンピオン争いから脱落、って思ってもちっとも不思議じゃないよね。
あ、この時点でこの四人、リタイアはライコネンの一回のみ。マッサが一回失格になっているけれど。それ以外はみんなポイントを取っている。
速いけれど、ちょっと取りこぼしのあるアロンソと、優勝しないときでもいつも表彰台のハミルトン。抜群の信頼性を持つマクラーレン。対するは、速いときはめちゃくちゃ速いけど、ちょっと波が荒いフェラーリ。そういう構図の前半戦。
そこから、8,9戦とライコネンががんばって二連勝。次の10戦、リタイアだけれどもハミルトンに9位でおつきあいしてもらって運も向上。さあがんばろう、ライコネン。
しかしね。
中盤戦の終わり、12戦までを見ると、今年のエフワンがいかにとんでもなかったか分かるよね。
12戦終了時、3勝が4人。
誰一人抜け出すことができない優勝争い。
ポイントリーダーは、相変わらずハミルトンの84。アロンソくっついて79。ライコネン縮まらず68。マッサも69。残り5戦。フェラーリ苦しい。
このころからね、マクラーレンに不協和音が響き始めた。新人の(そして多分エフワン初の黒人である)ハミルトンに対するプレッシャー。王者のプライド、アロンソがおもしろいわけもなく、チーム内競争を公然と標榜するロン・デニスの元、確執は深まるばかり。
さらに、スパイ疑惑によるコンストラクターズポイントの剥奪。
そして。
第11戦ハンガリーグランプリでの、確執の表面化。
予選で、2台だけ別次元の速さで争うマクラーレン。終了直前、アロンソピットイン。あとからピットのハミルトン。
普通に行けば、ハミルトンがぎりぎりの時間でもう一度、タイムアタックができるはずだったのに。
アロンソのピットインが長引いて、ハミルトンピットに入れず。最後のタイムアタック間に合わず。予選2位。
そのレースは、結局ハミルトンが優勝したのだけれど、その前戦での連続表彰台ストップ、0ポイントのあたりから、ハミルトンに暗雲が忍び寄ってきた。
13戦のリタイアで、マッサがチャンピオンシップ争いから脱落して。残り4戦、ハミルトンとライコネンの差は18。リタイアのないハミルトンを考えたら、普通は勝負あり。
ところが、14戦から3つで、二つ勝ったライコネンは、ハミルトンのリタイアに助けられて、最終戦を前に差を11詰めて7点差。
ここで整理をしておくと。残り一戦、三つ巴。
ハミルトン107、アロンソ103、そしてライコネン100。勝ち数はライコネン5、アロンソ、ハミルトンが4。
可能性としては、誰にでもある。
でも、現実的には、自力優勝のあるハミルトンが絶対有利で。
そして、最終戦。
予選結果は、地元のマッサ、ハミルトン、ライコネン、アロンソ。このまま行けば、史上初の新人チャンピオン!
スタート。
焦ったのかハミルトン。1コーナーでライコネンに抜かれ、すぐあとにアロンソに並ばれてコースオフ。1周で8位まで落ちた。フェラーリはワンツー。
この時点で、マッサ、ライコネン、アロンソ、そして8位にハミルトン。
マッサがライコネンに(合法的に)譲れば、ライコネンのチャンプが見えた!
もちろん、そうはさせじのハミルトン。これから見せるごぼう抜き。
と思ったところ、7周で謎のスローダウン。すぐにペースは戻ったけれど、順位は18位。
これ、本人曰く、焦ってエマージェントボタンを押してしまったらしい。電気系がリスタートしている間、全く走れなかった。
いつぞやの、最終コーナーを立ち上がれないナイジェル・マンセルを想い出すよね。ひょっとしてハミルトンって、天然?
二度目のピットインで、マッサをかわしたライコネン。アロンソを阻むマッサの紅い壁(ライコネンが優勝したら、アロンソがチャンプになるためには2位が必要)。
そうなると、興味はハミルトン。
18位まで落ちたハミルトンのごぼう抜き。4点とれば、5位になればチャンピオン。
がんばって、がんばって、がんばって、がんばって、がんばって。
ハミルトン7位まであげてきた。
でも、そこで71周終了。万事休す。
勝ったのは、ライコネン。
ハミルトンとアロンソ、1点差の同点。
こんな事って、あるんだね。
誰の独走も許さなかった、マクラーレンの足の引っ張り合いと、(前半の)フェラーリの信頼性のなさ。
土壇場で、チームプレーに専念できたフェラーリと、譲れなかったマクラーレン。
漁夫の利というには、苦しすぎるシーズンを勝ち抜いたライコネン。
僕がまじめにエフワンを見ていた最後の時期にやってきた脅威の新人。やっと勝ったね。
おめでと。