スイング・ジャズとモダン・ジャズ 4

   d.ハード・バップの誕生日 その1

 また間が空いちゃったね。ごめんなさい(m_m)。
 しかし、イチローすごいね。野球なんて地元の球団を応援するのが楽しみなんだと思ってたから、大リーグってほとんど興味なかったんだけど、こればっかりはわくわくしちゃったよ。
 こういう、イチローみたいな新しいムーヴメントっていうのは、達成の瞬間がわかりやすいよね。一つのシングルヒットで、試合が十何分も中断するんだから、だれにでも分かる、新しい歴史の誕生。
 
 でも、そういう面でみると、音楽の新しい歴史の誕生の瞬間っていうのは、分かりにくいよね。ジャズが始まった瞬間、なんて、その時に居合わせた人にだって分からないもんね。少数の異端児が先鋭的な実験をやって、それが少しずつ人々に受け入れられていって、そのスタイルを取り入れるミュージシャンが多くなっていって、いつの間にか定着する。それが新しい音楽の誕生だよね、普通。
 
 だとすると、ハードバップっていうのは少し特殊なのかな。この音楽には、はっきりと誕生日があります。しかも二つも。
 もちろん、前回紹介したような過渡期の音楽っていうのはあって、突然発生したわけではないんだけど、たぶんその場に居合わせた人の幾人かは、「ああ、今新しい音楽の誕生に立ち会ってるんだ」って思ったんじゃないかなあ、そのとき。
 
 その誕生日はね、一つは1954年2月21日。それからもう一つは、1954年4月29日。
 
 そう。ハード・バップっていう音楽は、1954年2月21日、N.Y.のバードランドっていうライブハウスに響き渡ったPee-Wee-Marquetteの金切り声で始まったんだ。
 その模様を収めたのがこれ。

A NIGHT AT BIRDLAND WITH THE ART BLAKEY QUINTET

 バードランドの夜。その後、ハード・バップの伝道師となるアート・ブレイキーが、ハードバップの代名詞となった新人、クリフォード・ブラウンをフィーチャーしたライブ盤。
 
 バードランドってのは、ニューヨーク54番街の有名なジャズのライブハウス。もちろんバードっていうのはハード・バップの巨匠チャーリー・パーカーの愛称のこと。そのチャーリー・パーカーが「信じられない。今、目の前でお前さんが演奏してるのを見た。でも、信じられないんだ」といったといわれている驚異の新人トランペッターがクリフォード・ブラウン
 どう驚異なのかって? そりゃあ聴いてみてよ。
 
 ビバップと比べて、演奏が長くなったり、編曲に工夫があったり、って言うのがハード・バップなんだけど、一番の違いは、わかりやすいとか取っつきやすいとか、そういうことなんじゃないかなあ。
 もう、それはこのアルバムを聴いてもらえればあとはなんにもいらないと思うんだけれども。
 ブレイキーのタイコもブラウニーのラッパも、ルーのアルトもホレスのピアノもカーリーのベースも。ピー・ウィーのMCも客も何もかもが熱くなって火を噴いている。巨大な熱気がに満たされてるんだけれども、闇雲に爆発してるだけじゃなくって、きちんと形を成している。
 それにしても悔しいよね、このタイトル。The Night じゃなくって A NIGHT。僕の中では限りなく特別なバードランドの一夜、なんだけどね。
 
 そして、この日、このメンバーで始まったハード・バップは、まさにそれが理由で数奇な運命をたどります。永遠に愛される輝きを持つかわりに、実に短命に終わってしまう。しかしなおかつ、、、
 まあ、それはまた次のお話なんだけれどもね。
 
 もう一つの誕生日は、また別の機会に、ね。
 
 ジャズって一言でいうけれど、どんなイメージを持つ? 火の出るようなHotな音楽を思い浮かべた人は、今日の一枚、是非聞いてみてくださいね。

 

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