できればNetscapeでみてほしいなあ

去年に引き続き、今年もコンサート通いが続きそうです。
音楽的なことはかけないから、コンサートをネタにしたエッセイ集、になればいいな。

2001年11月20日
大阪フィルハーモニー交響楽団 第351回定期演奏会
外山 雄三:指揮
漆原 朝子:ヴァイオリン

大阪フィル
フェスティバルホール 
A席 1階 DD列 R12番

メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲
シューベルト  :交響曲 第9番 ザ・グレイト

 本当ならば、16日の東京公演と、この演奏会でブルックナー3番を聴いて、朝比奈ブルックナー8番勝負の最終回ということになるはずだったのだけれども。前にも書いたように、朝比奈さんが過労で入院してしまったので、今日の演奏会は外山雄三、シューベルトに。

 今回は定期で、僕は定期会員になっているし、変更が決まったのが結構前で、リハをする時間もたぶんいつも通りあっただろうから、聴きに行きました。朝比奈を目当てに集まった客の前で、朝比奈抜きの大阪フィル、どんな演奏をしてくれるんだろう。

 座席は、今回から新しいところ、Box席の一つ後ろ。ブルックナー3番のために取った、ブラスのベルが見える席。Box席とは壁で仕切られてるから、ちょっと前の隙間が狭いんだよね。窮屈。

 さて、演奏。

 どうでもいいんだけど、メンデルスゾーンじゃない曲って、思いつかないのかなあ。去年と今年で3回目だよ、これ聞くの(と思って見返してみたら、一回はアンサンブル金沢でした)。まあ、いつもソリストが違うからいいけれど。

 今回のメンデルスゾーン。
 ハイ、よく眠れました。

 最初のソロの一音聞いただけで、あんまり迫ってこないな、って思ったからね。ただのBGMになってしまいました。席が後ろに移ったからってのもあるけど、もうちょっと届いて欲しいなあ、音。

 寝起きにスパークリングワインを流し込んで、シューベルト。ザ・グレイト。第一次クラッシックブームの最後の方に買ったムーティ/ウィーンフィル。ほとんど聞いていなかったので引っぱり出して一回聞いて臨んだ演奏会。この時代にしてはやたら長い交響曲。

 まあ、演奏についてはなんにもいいたくないです。

 メトロノームを前にして演奏したら、こんな感じになるのかな。
 こんなタテノリの曲ってあるんだな。
 チェコフィルのホルン、うまかったな。
 外山さん、オペラの時にはあんなにいい演奏してくれたのに。どうしちゃったのかな。

 じいさんが引退したら、僕は、大フィルの定期には行かなくなるんだろうな。

 

2001年11月8日
富士電機スーパーコンサート
ウラディーミル・アシュケナージ :指揮
チェコ・フィルハーモニー管弦楽団
ザ・シンフォニーホール 2階FF列50番 B席

スメタナ 連作交響詩 我が祖国

 さて、チェコフィル
 衝動的にいった10月のブルックナーを除けば、今年初めての外タレのコンサート。入場料高いのもあるし、歳喰ってくると前ほどありがたみがないんだよね、外タレって。日本にもいい人いっぱいいるじゃん、って思っちゃって。
 でも、チェコフィル。
 高校の頃、ホルンふきの友人が、チェコフィルの主席ホルン奏者、ティルシャルにはまってて、そのせいでちょっと印象的なオーケストラ。でもほとんどその演奏は聴いたことがないから、実はどんな音がするのかも知らない。さて、ほんとはどんな音がするのかな?

 曲は、スメタナ。我が祖国。
 まあ、定番なんだけどね。ご当地ソング。来日プログラムには、マーラーとか、もっとシリアスな曲が並んでるのに、なんで大阪はスメタナなんだ、って思ってたんだ、正直なところ。予習CDは、クーベリック/ウィーンフィル。

 さて、演奏。
 結構でっかい編成でやるんだ。ホルン7,ラッパ、トロンボン4ずつ。我が祖国って、そういう曲だったっけ?

 一曲目。
 ううむ。渋い。弦の音もラッパもソロも、音量が押さえられているせいもあるのか、渋い。しょぼいと紙一重の渋さ。さて、どうなるんでしょう。周りの客席のノイズが、とても気になってしょうがない。
 二曲目。
 モルダウ。さざ波にのってたゆたう流麗なメロディも、シンフォニーホールを埋め尽くすまでには行かなくて。13公演中休みは2日だけだもんなあ、しょうがないのかなあ。って思ってたのだけれども。
 三曲目。
 最後ちかくの、トロンボンのsoli。簡単なユニゾンなんだけれども。これがね、すっ、と飛び込んできた。なんてきれいな音なんだろう。ピッチもアーティキュレーションも。完全にそろっていて、なおかつ合わせなきゃっていうこわごわした部分が全くない。ああ、これが外タレの力か、って思ったところで休憩。

 このトロンボンソリだけでも今日の収穫はあったな、って思っていたのだけれども。

 休憩後の、四曲目。
 これ、すごい。
 前半から、音量が一ランク上がったのだけれども、ただそれだけなのだけれども。すごい。
 え、おんなじオケ? おんなじ曲?
 それくらい、弦が鳴る。管も鳴る。ティンパニが決まる。
 オーボエのソロ。その前のE♭クラリネットかな?すごく好き。それから、おんなじ楽器で、違う楽器同士でユニゾンのソリがたくさんあるんだけど、これもすべて決まって。

そして、ホルン。

 ああ。こんなホルン、聴いたことないよ。もちろんこのソリストは、先日引退したティルシャルではないのだけれども。そんなことは関係なしに、きれいな音で、唄う唄う。高音域を探りながら吹くなんてことも全くなし。ただ自然に音がでてきて、それが音楽。
 ホルンだけじゃなくて、すべてのソロ、そして弦楽器にいたるまで、みんなそうなんだ。

 ご当地ソングのプログラムだからって、甘く見てました。ごめんなさい。

 一言だけいわせてもらえれば。

うめぇ。チェコフィル。

 そうそう。会場でCD買って、アシュケナージのサイン会でサインもらってきました。ミーハーと呼んでください

 

 本当は、この部分には、10月30日の南海コンサート、「朝比奈隆 秋宵のチャイコフスキー」というコンサートが入る予定でした。
 しかし、朝比奈さんが、10月25日の名古屋公演のあと、過労で入院してしまったため、このコンサートは、指揮者が井上道義氏に変更になりました。
 僕は、指揮者の変更になったこのコンサート、行こうか行くまいかずっと迷ったのですが、結局行きませんでした。

 迷っているときに聴いた朝比奈のチャイ5のディスク。野暮ったいけど一直線で、誠実な響きのするチャイ5。たぶん、他の指揮者ではこれは聴けないから。

 今までだって、一期一会で朝比奈さんと対峙して来たつもりだったのに、みっともないほどに取り乱してしまいました。これからだって、もっと聴きたい、ずっと聴きたいと思いながら、一期一会を続けるのでしょう。

 今は、朝比奈さんの、一日も早い回復をお祈りします。

2001年10月11日
大阪フィルハーモニー交響楽団 第350回定期演奏会
イルジ・ビエロフラーヴィク:指揮
伊藤 恵:ピアノ

大阪フィル
フェスティバルホール 
A席 1階 N列 R3番

スメタナ 歌劇「売られた花嫁」序曲
シューマン ピアノ協奏曲 イ短調
ドヴォルザーク 交響曲 第6番

 このごろ、コンサートのあとに飲み会が入ることが多くて。一回一回の印象が充分定着しないうちに新しい刺激(飲み会)が入るのはちょっともったいないのだけれども。

 さて、大フィル定期会員になって一年。二度目の更新時期がやってきました。今回はちょっと席を変更して、後ろの席に。やっぱりトロンボーンのベルが見えるところでブルックナーの3番は聴きたいなあ、って。

 今回の演奏会は、もう王道を行くクラッシックのコンサート。序曲で始まってコンチェルト。そして最後は交響曲。なんか新鮮だよね。こういうの。

 序曲。
 スメタナって、にわか勉強の我が祖国くらいしか知らないのだけれども、これとっても楽しい。ビートのない弦の早引きのユニゾンが、楽器を変えて受け継がれていく最初っからもうわくわく。大フィルの弦のアンサンブルも結構やるじゃん、って見直した。
 そして、コンチェルト。
 初めて聴くシューマン。ピアニストはもうおなじみの伊藤さん。札幌でも見たね。そのときは皇帝だったけど。
 今回のシューマンは、それはもう、愛のコンチェルト。恋人同士の、甘い語らいの音楽。
 そういえば、そういう音楽って、とんと聴いてないなあ。まあ僕の聴くのが交響曲主体だからしょうがないのだけれども。まるまるひとつの交響曲が、甘い語らいに終始するのも大変だしね。でも、よかったよ。秋らしくて。

 15分の休憩をはさんで、ドヴォルザーク。
 これも実は初めてなんだよね、第6番。ドヴォルザークはメロディがとっても魅力的だから、初めてでも全然心配してないんだけれども。
 と言う予想通り、とっても聞き易い、耳になじみやすい音楽。たぶん指揮のせいなんだけど、堅苦しくない程度にかっちりしていて、安心してリラックスできる。
 最後は、またもや弦楽器のユニゾンの掛け合い。チェロとコントラバスの4バース(2バースかな?)なんてもう、手に汗握ってしまいました。

 いいな、ドヴォルザーク。いい全集ないかな?

 と大満足のフェスをあとにして、急ぎ足に飲み会の席に向かったのでした。。。

 

2001年10月5日(金)
ロイヤル・フランダース・フィルハーモニー管弦楽団
フィリップ・ヘレヴェッヘ:指揮

いずみホール 1階G列9番 S席

ブルックナー 交響曲 第9番 全4楽章完全版

期待と不安。 ヒトの創りし第四楽章。

 最後まで迷ったのだけれどもね。ブルックナーの9番。4楽章付き。
 ブルックナーの9番。神の音楽。作曲途中で神に召された、未完の音楽。
 未完を未完のまま、神に近づけた、二週間前の9番。僕はそれに大満足してるから、今回のコンサートは、最後まで迷ってた。
 もう一度、神の音楽が聴けるのか? 聴けたとしたら、どの演奏家でも神の響きがすることに対して幻滅してしまうのではないか。聴けなかったとしたら、二週間前の演奏まで自分の中でかすんでしまうのではないか。決して安くはないチケット代、半分(以上?)の確率で無駄になることを承知で出かけるべきなのか?
 結局、ブルックナー自身の遺した未完成のスコアを演奏できる形に補筆した第四楽章への期待にあらがうことができなかったのだけれども。

 前日に電話して予約。初めてのいずみホール。
 大阪の環状線は、一駅ごとにころころとその表情を変えるのだけれども、大阪城公園駅は、人気の全くない閑静で上品な公演のまん前。ちょっと歩くとホテルとオフィスの高層ビル街。
 公園を抜けて(ほんとは抜けないんだけどね、ちょっと間違って)、噴水のあるホテルの中庭。そこにある長蛇の列。どうやら当日券の列。電話予約でまだチケットもらってないから、その列の最後について。ちょっと時間かかったけど無事チケットをゲット。
 ホールのロビーは、高級感あふれてて。ちょっと狭いけどサントリーホールみたい。パウンドケーキとコーヒでおなかを押さえて、公演プログラムを買って。ああ、外タレの演奏会なんだな、って実感。
 外タレの演奏会と言えば、客層もフェスの大フィルとは全然違ってて。ぱりっとしたスーツのおじさんと、おしゃれに着飾ったおばさんが多い。ハイソ、って感じだね。ジーパンの私は隅っこでおとなしくしてた。

 ホールは、思ってたよりも狭い。天井も低いかな。ザ・シンフォニーに比べてだけど。二階席はホールの横だけで、メインは一階席だけ。後ろの方はかなり傾斜がきつくて階段教室みたい。椅子は立派でゴージャス。
 ちょっと驚いたね。こんな小粋なコンサートホールがあったなんて。
 ただし、ステージは小さいのかな。大人数の弦楽器が乗り切らずに、コントラバスはステージの後ろに。そのおかげで、ホルンは左にラッパとトロンボンは右に。ティンパニはその右隅にこぢんまり。さて、どんな音がでてくるのかな。
 あ、席はね。前日にとったとはおもえないくらいい場所で。

さて、演奏。

  最初のトレモロから、神が宿らないことは分かってしまったのだけれども。オーラがなかったからね。
 席が近いこともあって、はっきりくっきりクリアな演奏。
 弦がクリアだから、一楽章で多用されるブルックナー休止の効果的なこと。
 それから、なんといってもホルン。9人の最強奏でも、まったく音が濁らない、歪まない、割れない。小さめのホールを、ホルンの音で満たす。ソロもびびらない。色気はないけど。
 ホルンがこんな感じだから、コラールのトゥッティでも、支配するのはホルン。トロンボーンが支配する大フィルとはちょっと違う。僕はトロンボンふきだからね、ちょっと残念。

 三楽章のラスト近く。フォルテシモから木管楽器だけがピアノで残るところ。えっ、こんなところあったっけ、って言うほど印象的だった。そして、ワグナーチューバの短めのロングトーンで三楽章が終わって。

そして、四楽章。  ヒトの創りし、神の尻拭い。

 まったく初めて聴く部分だから、演奏はどうとか、曲はどうとかいえないのだけれども。でも、9番の最終楽章として、ブルックナー生涯の最終楽章として、どうかなあ。迫力不足って言うか、なんていうか。
 コラールのバランスが、僕にとって迫力不足だったって言うのが大きな原因なのかもしれないけれど、ちょっと欲求不満。
 最後近くなって、2拍3連のリズムパターンがブルックナーなんだ、って感じさせてくれたけど。

 ブルックナーの(スケッチではなく)遺筆スコアを元に復元した、ってプログラムでは力説してんだけれども、やっぱりそれは完成スコアではないわけで。その上に神のアイディアが宿るはずだった、その前のスコアを元にしてくれてもねえ、っていう感じかな。

 でもこれで、すっきりしました。未完は未完のまま、僕は原典版の9番を、愛していくのでしょう。ずっと。

 

2001年9月24日(祝)
朝比奈隆の軌跡 2001 ブルックナー後期交響曲選集
朝比奈 隆:指揮
大坂フィルハーモニー交響楽団
ザ・シンフォニーホール 2階AA席36番 A席

ブルックナー 交響曲 第9番

 このページを作って、僕が演奏会の感想を書いているのは、何回も何回もあるコンサートの、一回一回の記憶を薄れさせないためなんだけれども。
 あの演奏、どんなだったっけ。とか、この曲みたことある気がするな、とか。そういう風にならないため。ああ、この曲の時はこんなだったな、ってあとからでも思うために、しこしこ書き続けているんだ。

 だから、今回は、書く必要なんてまったくないんだよ。

 

だって、この演奏を、忘れるわけがないもの。

 というか、まったく覚えていない、のかな。

 朝比奈ブルックナー8(!!)番勝負も、いよいよ大詰め。6番目。ザ・シンフォニーでの最終勝負。そして9番。
 三連休の三日目だったから、その前3日かけて僕の持ってるすべての9番のディスクを引っぱり出して。
  朝比奈/ジャンジャン、朝比奈/二回目全集、朝比奈/都響、朝比奈/N響。ヴァンド/ベルリン、ヴァンド/NDR、そしてヨッフム。ヨッフムだけは(演奏が)せわしなくて最後まで聴けなかったけど。
 いつもは、コンサート前1週間って1回くらいしか聴かないのだけれども。何度聴いてもよく分からない9番、未完の交響曲。

 自分の中で曲の評価がしっかりしてないからか、あんまり緊張感がなくて。なるようになるさと思って会場に行ったのだけれども、林のようなマイクとテレビカメラと、9個並んだホルン用の椅子と、そのうちの4個においてあるワグナーチューバをみると、やっぱり緊張してきて。

 予定されている最後の、ザ・シンフォニーでのブルックナー。

 開演。
 わらわらとみんなが入ってきて。コンマス、第二ヴァイオリン、チェロの主席の席だけが空席。
  ヴァイオリンとチェロの席が埋まって。コンマス入ってチューニング。

 朝比奈さんが、入ってきた。

 そして、トレモロ。
 ブルックナー開始。

 その、最初の一音。あれ、聞き慣れてるテンポとちょっと違う? 音量もレコードより大きい? と思った瞬間、なんかこみ上げてきた。

それから先は、わけわかんなくて。

 今日は飛ばすな、って思ったのは覚えてる。テンポじゃなくって、音量、音色的に。ブラスは割れる寸前だし、弦楽器は銅が響いてる音じゃなくって弦が鳴ってる音がいっぱい聞こえてくるし。
 でも、それが全部ひとつになって聴こえてくる。どのパーツが、じゃなくて、塊がぐわん、って。
 もう、真っ白。でも、真っ白になるのがもったいなくて、にじむ目を凝らして、朝比奈さんの後ろ姿を睨み付けた。浮き上がってどっかに行ってしまいそうな魂を強引につなぎ止めて、一音も聴き逃さないように、って。

 二楽章。
 タタタンタンタタタン 5拍子を刻む弦の音。明らかにff(フォルテシモ)。スコア見たことないから知らないけれど、イメージではmfのところ。今日の朝比奈さん、全体的に記号二つ分強い(スコア見たことないからね、ほんとのところは知らないよ)。
 すみません。あとからスコアを見たら、タタタンタンタンタンタンの6拍子でした。それもff。失礼しました。まあ、CDとのイメージの差、ということで。

 ああ、そうか。
 これ、9番なんだ。フィナーレ楽章がないから、全体的に強いんだ。
 そう思ったら、なんか哀しくなった。こんな音楽が、未完だなんて。

 9番のジンクス、ってあるよね。
 交響曲作曲家が、9番までで亡くなってしまうことが多い、っての。
 これ、人間が世界(交響曲)を創造しようとするのは、9曲が限界なんだ、燃え尽きて灰になってしまうんだ、って思ってたんだけれども。
 もしかしたら違うのかもしれないね。天才作曲家は、9曲で突き抜けてしまうのかもしれない。9曲目で、神の仲間入りをする音楽を作って、召されてしまうのかも。

 三楽章までで、終楽章なしでも神に召されるのに充分だったブルックナーの音楽は、4本のワグナーチューバの永い永いロングトーンで終わりを迎えて。

 

 完全な、静寂。
 朝比奈さんの、指揮棒が下りて。

 

 ざわざわと、控えめな拍手。
 ブラボーコールのないまま、拍手が大きくなる。
 コンマスと握手する朝比奈さん。一列目の弦楽器奏者みんなと、握手を交わして。
 そして、会場を振り向いた。

 割れんばかりの拍手。
 ブラボーコール。
 大半は、もう何を言っているか分からない叫び声

 ただただ、拍手

 ただただ、拍手

 

 そして、ただただ、拍手

 

 

 ありがとう、ほんとうにありがとう。朝比奈さん。大フィルのみなさん。

 

2001年9月20日
大阪フィルハーモニー交響楽団 第350回定期演奏会
外山雄三:指揮、トーク
加藤 直:演出、トーク
福井 敬、菅 英三子、勝部 太、岩城拓也、田中 勉:歌
武元寿賀子:踊り
特別編成合唱団、大阪すみよし少年少女合唱団:合唱

大阪フィル
フェスティバルホール 
A席 1階 N列 R3番

レオンカヴァッロ:歌劇 道化師 演奏会形式

 さて、今回はオペラ。
 言葉わかんないから唄もんは遠慮しがちなんだけど、定期でやってくれるとちょっとうれしいよね。
 でも、道化師?何それ。レオンカヴァッロ?誰それ状態なんだけど。まあいいよね。大衆オペラだもん。

 もちろん原語上演だから、お話の筋さえ分からなかった88年のナブッコの記憶がよみがえってビビってたんだけど、そんな心配はいらなかったみたい。
 上演前に、指揮者と演出家の加藤さんのプレトーク。上演時間が短いからサービスみたいだったけど、大阪の人は短いコンサーとなれてるよ。まあいいけど、たまにはこういうお話もおもしろかった。
 加藤さんの前説でトークショウは終わって。

 さて、演奏。
 ステージの左側にこぢんまりとオケが入ってきて、序曲が始まって。そのうちにソリストが入ってきて歌い出す。左側にはちょっとしたステージがあつらえてあって、そのステージの奥側には入退場用の幕が下りている。さらに後ろは合唱用の雛壇があって。

 しかし。
 前説がちょっと長すぎて、眠くなっちゃった。演奏が始まった頃には舟こぎ状態。所々目を開けるんだけど、眠気は強烈。演奏は進む。
 目を開いたのは、1幕の後半かな。
 旅一座の団長の女房が団員とくっついて。やきもち焼いた他の団員が団長にちくって。喜劇を上映中にすったもんだがあって、っていうお話なんだけど。
 団長の女房しか女性の歌手はいないんだけど、舞台にはもう一人女性の踊り子。この人はまったく歌わないで踊りだけで、女房の気持ちを表したり、進行役になったりするんだけれども。僕が目を開いたときは女房が男と喧嘩中。それに併せて薄絹の幕の向こうで踊る踊り子。これがすごいよくって、眠気が吹っ飛んでしまいました。
  それまでもったいなかったな。
  そのあと、団長の見事なアリアで一幕は幕。

 二幕は、喜劇がだんだん激昂してきて、団長が女房の男と女房を刺してしまうのだけれども、ここでも踊り子大活躍。オケの演奏会というのに目は釘付け。まあオペラだもんね。

 なんか得した気分だけど、眠くなっちゃったのはもったいなかったな。

 

2001年9月15日
尼崎市民交響楽団  第16回定期演奏会
辻 敏治:指揮
西村志保:チェロ
尼崎市民交響楽団
アルカイックホール  自由席 1階右の後ろの方

ドヴォルザーク:スラブ舞曲第1番
ブラームス  :交響曲
 第3番
ドヴォルザーク:チェロ協奏曲

 会社の人の所属しているアマチュアオケ。
 クラッシック、聞く方には戻ってきたけれど、演奏する方に戻る気は今のところないから、あんまりアマオケに興味はなかったのだけれども。招待券もらったからね。

 尼崎は、雨。駅から5分くらいのところにあるアルカイックホール。ちょうど僕らが高校の頃に演奏会をしていた市民会館と同じくらいの感じかな。

 今日のメインはブラ3,となんの疑いもなく思っていたのだけれども、プログラムもらったらドヴォルザークのチェロコンがメイン。ふうん、そうなんだ。聴いたことない曲だけど。
 客席はいったら、おんなじ会社の人が見に来てたからとなりに陣取って。

 そして、開演。スラヴ舞曲。そしてブラ3。
 こういっちゃあかなり失礼なんだけど、結構びっくり。アマチュアバンドだから、演奏のあらを先回りして探して、それを埋める心の準備をしながら聴かなきゃな、って思ってたんだけど、全然そんなことない。
 そりゃあ楽器の個々の音とか、そういうことを言い出したらきりがないけれど、曲としてちゃんときこえてくる。

 ほんと、失礼ないい方だね。ごめんなさい。

 休み時間にぱらぱらプログラムめくると、来年の定演の曲目が載ってた。田園。  そうだよね。アマチュアオケって、一年前から曲決まってるんだよね。一年かけて、曲を作ってく。定演のリハが3日しかないプロオケとは比べものにならないほどの曲に対する練習量。そしてたぶん、曲に対する思い入れも。もちろん、楽器そのものの練習量は、アマの方が比べものにならないほど少ないけれど。

 そんなこと思いながら、休憩後のチェロコン。
 これ、いいです。チェロは留学帰りのセミプロで、線は細いけどよく弾いてたし、ドヴォルザークの優しいメロディとケレンに満ちたオーケストレーションがこのオケによくはまってた。

 帰りの電車は、甲子園帰りの子供たちで混雑していたけれど、結構いい演奏会でした。ちょっとアマオケの広告にも、目を通そうかな。

 

2001年9月9日
大阪フィルハーモニー交響楽団 札幌公演
朝比奈 隆:指揮
伊藤 恵 :ピアノ
大阪フィル
札幌コンサートホール Kitara 1階5列3番 S席

ベートーヴェン:ピアノ協奏曲 第5番 皇帝
ベートーヴェン:交響曲 第7番

 さて。
 完全オフの8月も終わって、解禁第一弾。

 朝比奈求めて、キタエミナミエ。ここは北国、北海道。そう、大阪フィルの札幌公演です。まあ、アホと呼んでください。
 でもさあ、今年一回しかやんないベートーヴェンだよ(除く9番).それも、7番。去年、1楽章から4楽章まで涙に曇ってよく聴けなかった、7番。旅の途中にふらふら吸い寄せられても、しょうがないよね。大フィルのみんなもリゾートのついでにコンサート、なんてつもりじゃなければいいけれど。

 日曜のお昼からの公演。開場を待つ人は、ロマンスグレイの夫婦の方が多いみたい。まあ邦人音楽家で一万円のコンサートだからね。若い人にはきついでしょう。
 それでも会場はほぼいっぱい。
 どんなホールなんだろ? って期待して開場と同時に入ったkitaraホール。

 これが、びっくり。

 まるいんだ。何もかも。客席の椅子の並びは一番チェロのあたりを中心にした同心円だし、二階席、三回席のレイアウトも、それぞれ丸く切り取られていて。結構広いはずなのに、なんだかこぢんまり。5列目、端から3列目の僕の席も、ヴァイオリンの最後の人の前、くらいのところでまったく問題なし。今まで朝比奈さんに一番近いかも。わくわく。

 大フィルのみんなもよそ行きなのか、開場後のステージには人がほとんどいない。コントラバスがちょっと音出ししてるくらい。

 さて、開演。
 伊藤さんの皇帝って、お正月にも聴いたかな。演奏どうこうはわかんないけど、残響が長いな、このホール。長いって言うか、強いのかな。ブルックナー、聴きたいな。
 伊藤さんは大人気で、何度もカーテンコールに応えて。

 15分の休憩のあと、7番。

  そうそう、休憩の間、オーボエとクラがずっとハモリのところの練習してた。こういうのって、得した気分なのかな?
 僕の席は、ヴァイオリンのすぐ近くだから、他の楽器の音は、ヴァイオリンの人たちの間から漏れてくるんだ。要はバランスが少しよろしくない、ってかんじなんだけど。
 でも、7番。リズムの神化。そんなことは関係ないんだ。1楽章で、ちょっとアンサンブル乱れててもったいなかったけど。でも、楽器をかえてどこまでもひたすら昇っていくフレーズ。いいよね。

 2楽章。葬送行進曲

 2楽章の頭は、ビオラ、チェロ、コントラバスがはだかで葬送行進曲をやるんだけど、ここはすごかった。今までヴァイオリンに消されていた(あくまで席のせいね)低音が、ずっしりと響いて。ホールの過剰な残響と、チェロ、コントラバスの床から伝わる響きがとてもいいバランスで。ああ、7番だ。僕の大好きな7番なんだ、って。
 3楽章。この楽章のターーーータラ(1文字8分音符)って言う第二主題。これがこの曲のメインの主題なんだけど(あくまで僕の中でね)弦がこれを奏でているときに、傍若無人ロングトーンをするトランペット。ただのオクターブのユニゾンなのにもの悲しい響き。もちろん動いている音形がメインのはずなのに、どんどん繰り返していくうちにロングトーンのラッパがメインになっていって。そして頭が白くなっていく。ああ、この遠慮のないブラスが大フィルなんだ。これが朝比奈隆なんだ。

 北の果てまできても、いつもと変わらない朝比奈さんなんだ。

 4楽章。このリズムと繰り返しの交響曲は、フィナーレまで突っ走って。
 もちろん、というべきだろうけど、拍手だって突っ走った。最後の音が、まだ残響にもならないうちからのブラボーと拍手。
 その拍手も、カーテンコール一回でオケが退出するとあっさり終わっちゃったけど。

 でも、いいんだよ。だって7番だもん。だって、かなりの人は朝比奈さん初体験のはずだもん。だって、こんな北の果てで、こんな高い入場料なのにほぼ満員なんだもん。でもって、いつもの朝比奈さんだったんだもん。

 大阪から遠くにいる人が、朝比奈さんにふれるせっかくの機会を、僕なんかが邪魔しちゃっていいのかな、ってちょっと心苦しかったんだけれども。

 でも、許してくれるよね。きっと。
 ありがと

 

2001年7月12日
大阪フィルハーモニー交響楽団 第350回定期演奏会
岩城 宏之:指揮
東京混声楽団員
大阪フィル
フェスティバルホール 
A席 1階 N列 R3番

カリンニコフ 交響曲第1番
藤家 渓子  思いだす ひとびとのしぐさを
ベリオ    シンフォニア

 いやあ。
 今回ほど気合いの入らない演奏会も珍しいね。
  あゆと朝比奈さんで、もう別腹までおなかいっぱい。パイプオルガンで喉にまでなんか引っかかってるし。

 しかも、全部きいたことない曲。
 予習をしようという気持ちもわかないくらい、だらーっと雪崩れこんだ演奏会。

 あ、でも、期待してないわけじゃなんだよ。岩城さんは去年、アンサンブル金沢でいい演奏聴かせてくれたし。チラシを見る限りではロシアものの交響曲は聴きやすそうだし。

 というわけで、演奏会。
 その前に、南海コンサートのチケット買って、景気つけて。

 プログラムは、チラシから変更になってカリンニコフが先。交響曲を前座にもってくるってことは、他の二曲、結構でっかいのかな。東混からソリストきてるみたいだし。
 さて、岩城さん。おっきな病気して最近復帰したそうだけど、元気そう。ぴょんぴょん跳んできて、ちょこんとお辞儀して(あくまでイメージ的にね)、一楽章。
 ううん。
 いいなあ。
 今年は、交響曲といえばブルックナー。重厚な楽器群の重なりで聴かせて行くけど、魅力的なメロディ、というところからは程遠いブルックナー。いつの間にか、交響曲というのはそういうものだと思っていたのだけれども。

 でも。当たり前だけどそうじゃないのだってあり。ちょっと寂しげないかにもロシアの旋律が、いろんな楽器で歌われて。
 相変わらず弦の響きは絶好調。

 先日の、ブルックナーが終わったあと、遠方から聴きに来ていた知人と話をしたのだけれども。その知人は、セル/クリーグランドのような、アンサンブルのかちっとした演奏が好きだから、アンサンブル金沢は大好きで、でも今回の大フィルは好みではない。だけれども、最後にはそんなことどうでもよくなって、朝比奈さんがよかった、といったことをいっていたのだけれども。
 確かに、朝比奈さんのブルックナー(特に最近の7,8番)は、かちっとした演奏とはとてもいえないけれども。
 ちなみに僕は、かちっとしていることにそれほど重きを置きません。気になるほどずれてたら困りものだけれども。あんまりかちっとしているのは、吹奏楽時代を思いだすからね。

 というわけで、僕は半分、大フィルにはかちっとした演奏はできないんだと思ってた。でも、それは間違いだったんだね。アンサンブル金沢の音楽監督もしている岩城さんの、とってもわかりやすい指揮のもとで、とってもわかりやすい曲はかちっと進行していく。素朴で寂しげなロシアの曲には、これがほんと、似合っている。ちょっともうけもの。

 休憩の間に、ステージには、PAのスピーカーと、客席から壇上にあがるための階段がわらわらとおかれて。さて、何が始まるんだろう。プログラムをみると、ベリオは電子楽器まで使うらしい。両方とも現代物? ううむ、大丈夫かなあ。ちょっと苦手なんだよね、現代物。

 二部の最初は、日本人の作品。かなり少ない編成で、演奏が始まって。ラッパのフラッタータンギングを多用した、画に描いたような現代物。まあ、聞き易いは聴きやすいんだけどね。私には分かりませんでした。
 演奏終わって、客席に呼びかける岩城さん。作曲者の藤家さんが客席から招かれる。藤家さんはうれしそうでした。再演される作品って、あんまりないんだろうなあ。

 一端弦は退出して、ステージ上のイスが並び替えられる。指揮者をぐるっと囲むイスには、ハンドマイクが用意されて。
 そのイスには、東京混声合唱団のソリスト8人が座って。さながら声楽コンチェルト。
 その曲の始まりは、ハンドマイクを持ったソリスト。それぞれマイクを離し気味にして、ヴォーカリーズで歌う。いや、歌詞はあるのかな? みんなが違うことを断片的にいってるから、よく分からないけど。
 それがね、心地いいんだ。弦と管、そして、ハープや電子チェンバロ、右、左、中に配置された打楽器。いろんなところから音が出てくるけど、それをまとめる中央の8人の歌手。おもしろい音。聴いたことない。
 ただし、ちょっと長かったけどね。第6部まであるんだけど、3部くらいで終わってれば、もうほんとにお気に入りだったのに。

 でも、思わぬ拾いものでした。
 雨も降らなかったし。

 

2001年7月7日
朝比奈隆の軌跡 2001 ブルックナー後期交響曲選集
朝比奈 隆:指揮
大坂フィルハーモニー交響楽団
ザ・シンフォニーホール 2階AA席36番 A席

ブルックナー 交響曲 第8番

 朝比奈/ブルックナーシリーズも、後半戦。
 今回の8番は、その中でも最大の山場。半年ぶりの、8番。

 前回の7番は、その前の、神々しいまでの5番のおかげで点数を甘くしてもらえたけれども、今回は逆。あの5番を基準として、期待は膨らむばかり。さて、どんな演奏を聴かせてくれるのでしょうか。

 土曜日の演奏会って、いいよね。わくわくして、いつもの休日よりも少し早起きして、掃除、洗濯終わってコーヒーのみながら音楽をかける。このときの音楽は、もちろんブルックナーとか朝比奈ではなくて、緊張をほぐすための軽音楽。
  今回は、先週以来ファンになった浜崎あゆみ。高まる緊張を、とりあえずほぐさなきゃ。

 昨日の雨のおかげで過ごしやすくなった外を歩いて、いざ、シンフォニーホールへ。
 あんまり考えないようにしてたんだけど、ホールに近づくにつれて緊張してきちゃった。シンフォニーホールの8番。どんな音を聴かせてくれるんだろう。前回の7番程度じゃあ、納得しないよ。期待してるんだから。

 ホールに着いて。
 今回は食事もチケットものぞかずに席へ。祈るような気持ちで集中力を高めて。

 何でこんなに緊張するんだろう、って考えてたら思いついた。二ヶ月ぶりなんだ、朝比奈さん。去年の8月以来の一ヶ月以上のごぶさた。元気なんでしょうね。

ステージ上の楽員さんも、少しずつ増えて。
 みんなそろって。コンマスがでてきてチューニング。
そして、朝比奈さんの入場。
トレモロと一緒に出るホルン。
8番が、始まった。

 ラッパの音がちょっと割れてるかな。ブラスが全体的に余裕ない感じ。ワグナーチューバとホルンは、いいよ。ソロも上出来。
  でも、なんといっても今回は弦。どんな小さい音でも、会場全体に響いてる。思ってたよりも弦の活躍の場が多くて、ああ、7番の次の交響曲なんだ、って思って聴いてた。
 ちょこちょこと、崩れそうになる縦の線を、みんなで聴きあって合わせようとしてるのがよく分かる。合奏って、こうなんだよね。

でも、そんなことは些細なことで。

 ブルックナーは、神の視点の交響曲だ、ってよくいわれるけど。8番は、その中でも一番神々しい。その神と、演奏者である人間のせめぎ合いが、生演奏の醍醐味。

スコアは、神の領域。
朝比奈さんの中でなっている音も、神の領域。
楽団員は、人間。

 では、神と人間の境界は?
 つまり、指揮棒に神は宿っているか。
 その答えを探しながら聴いていたんだけれども。でも途中からどっちでもよくなって。あの瞬間にその答えをゆだねることにした。

 それにしても。これで二回目だけれども。ほんとにでかいね。8番。全部の楽章が、天国にいるように幸せで、時が止まったかのように長い。いつまでも終わらない気がして、とても幸せだった。

 でも、人間の創った神の音楽は、やがて終わるときがきて。

 ティンパニの連打の中、ブラスのトゥッティで下降音形。最後の音をのばすでもなくあっさり終わり。
 そして、審判の時。

 僕はね、悔しいよ。
 本当に悔しい

 これだけの演奏が。
 この、ものすごい演奏が。
 それでも奇跡を呼べなかったなんて。
 朝比奈93歳のバースディコンサートが、5番の時のような沈黙に祝福されなかったなんて

 その一瞬、歓喜の涙に変わるはずだったものは、こみ上げてきた悔しさとともに、僕の中に飲み込まれてしまいました。

 七夕だね。
 僕の心の短冊には、来年のバースデーも、元気でいてください、って書いたよ。

 

2001年7月3日(火)
風のオーケストラ パイプオルガンで聴く管弦楽の夕べ
エルンスト・エーリッヒ シュテンダー:パイプオルガン
ザ・シンフォニーホール 2階AA列28番 A席

ムソルグスキー 組曲「展覧会の絵」
ブルックナー  交響曲 第7番より 終楽章
グリーグ    ペール=ギュント 管弦楽組曲第1番
ベートーヴェン 交響曲 第5番 運命

さて、色物。

 どんな色物かっていうと、ベートーヴェンやブルックナーの交響曲を、パイプオルガンで演奏しよう、っていう色物。
 元々、ブルックナーの交響曲は、オルガンの響きがする、っていわれてて、確かにオルガンのイメージがあるから、結構楽しみにしてた色物。

 それはともかく、暑いね。大阪は10日連続の真夏日。それが途切れる気配もないけどね。
 今日はいつもよりも少し遅めに会社を出たから、ちょっと急いで駅まで歩いて。それがまた暑い暑い。でもバスよりも速く付いたから満足。
 ザ・シンフォニーの前は、ちょっとした公園になっていて、コンビニでおやつを買ってそこでぱく付いたのだけれども、蠅と蚊がうるさい。振り払いながら食べてまた汗かいて。

 さて、入場。
  発売日から少し経ってチケットとったのに、「どこでもあいてますよ」っていわれたから、どんな入りかちょっと心配だったんだけれども、4割くらい入ってたのかな。まあそんなもんでしょう。
 どこでもある席から私が選んだのは、二階席一番前のど真ん中。オルガンがステージ奥の二階にあるから、そこが特等席。

さて、演奏。
展覧会の絵、最初のプロムナード。
最初の2音で帰りたくなった。

 だって、だって。つまんないんだもん。聞き苦しいんだもん。退屈なんだもん。
 ちゃんというと、たどたどしい。指が転んで、ためらって。テンポ感がない。
  オルガンって、いろいろ操作するところがあるみたいだし、鍵盤押さえてから音でるまでのラグもあるだろうし、楽器ごとに鍵盤のサイズまで違うみたいだし。って言い訳考えてあげてたんだけど。
 それにしたって。

 次のブルックナーもそう。
 オルガンっぽいブルックナーの中で、一番オルガンっぽくない7番を持ってきて。なんの工夫もない編曲。まだまだたどたどしい。ああ、これが目当てだったのに。。。

 休憩中、やってられっか、って、他のコンサートのチケットのぞきにいったりして(いつもは演奏会に集中するために、極力避けてるんです、そういうの)。気付けにビール流し込んで。
 二階席の真ん中は、いい席なんだけど人口密度が高いから、ちょっと後ろの端っこで、誰もいない席に陣取って、第二部。

 第二部は、オルガン普及会みたいなとこのおばちゃんのトークから。まあ、それはいいや。
 そしてグリーク。
 この曲、子供の時の目覚まし時計の曲なんだよね。なじみだけど、あんまりうれしくないなあ。
 でも、これ結構いいです。オケでなじんでる曲じゃないから、オルガンでしっくりするし、オルガンといえばって私の世代に聞けば100人が100人とも答える宇宙戦艦ヤマトの音楽みたいな荘厳なコードののばしもあるし。何より無理してない。まだたどたどしいけど。
 でも、ちょっとほっとした。

 そして、最後ベートーヴェン。
 これはあたりです。元々運命って、トッカータとフーガ ニ短調みたいな感じで、対位法の嵐だから、オルガンには合うんだろうけど、原曲のイメージそのままに、トリオからフィナーレまで、おもしろく聞けました。といっても、途中でトイレに行っちゃったんだけど。ビールが悪かったね、反省。
 最初はどうなるかと思ったけれど、二部で盛り返して、まあ楽しかった演奏会でした。

 一番の収穫はね。二階の上、端っこの席でも結構いい音してたこと。秋の外タレ二連発、ここら辺だとやすい席が空いてるんだよね。
  らっき。

 さて、色物済んで、土曜までブルックナーの心の準備。気合い入れるぞ。

 

2001年6月6日(水)
大阪フィルハーモニー交響楽団 第349回定期演奏会
ジャン フルネ:指揮
ミリアム ハンネカート ジェイクス:イングリッシュホルン
大阪フィル
フェスティバルホール 
A席 1階 N列 R3番

ラロ 歌劇「イスの王様」序曲
マクミラン 「世界の解放」 管弦楽とイングリッシュホルンによる(日本初演)
ファリャ 舞踊組曲「三角帽子」第2部
ラヴェル ボレロ

梅雨入りしたね。

 今日は朝から豪雨で(朝だけ、って話もあったけど)、なれない革靴で傘を差しながら長い距離を歩かなくっちゃいけなかったからちょっと憂鬱で、でも気温は上がらなかったから夕方はさわやかで。

 考えてみると、大フィルの今年の定期、特に前半って結構ヘンなプログラム。
  オケの演奏会って、やっぱり目玉は交響曲ってことになると思うんだけれども、交響曲をやるのは2回だけ。それもブルックナーはいいとして、カリンニコフ。誰それ? ひょっとして有名? 知らないのおれだけ?? 
 あとは、マタイ受難曲とオペラ。そして今日のフランス小品集
 別に交響曲じゃなきゃだめ、っていうつもりはないけれども、緊張感はないよね、聴くのに。でも今日はボレロだから、別な意味での緊張感。

 ボレロはね、好きだよ。ムーティのボレロを聴いて、ムーティのファンになったし。人見記念のムーティ/フィラデルフィアのボレロ、忘れられない。それから、マゼール/フランス国立のボレロで、クラッシックがキライになった。あれはオーチャードホールだったっけ?

 よく、WEBで見かける素人さんによる演奏評に、テンポのことが書いてあるんだけれども。「アダージョはゆったりとしたテンポで風格あふれる、、、」みたいなの。あれって好きじゃないんだ。語彙がないなあ、って思っちゃって。
 でも、ボレロは別。ボレロの演奏の好き嫌いは、ほとんどがテンポで決まるよね(あくまで私見)。ぼくの大好きなムーティは、17分っていう、かなりゆったりめ(15分前半くらいが多いかな。14分台は速い速い)の演奏。フィラデルフィアのソリストは、このゆっくり目のテンポを前乗りで唄いまくって、ゆっくりには聴こえない。特にトロンボンのソロ。ゆったり唄ってるはずなのに、暴れ馬を乗りこなすようにスリリング。そして最高の音色。人見で聴いたときは唄い方CDと一緒で、鳥肌たちまくり。

 あ、大フィルの話だね。
 ゴホン。というわけで今日はフランスもの限定ファミリー名曲コンサート。ジャンおじさんは88歳でフランスものの巨匠らしいけど、大フィルとフランスものはイメージが合わないなあ、って聴く前には勝手に思ってたんだけど。

 結構いいよ。一曲目のラロ。弦がきらびやか、って云う感じではないから、土着のフランスものっていうイメージだけど、楽しめました。
 次のイングリッシュホルンのコンチェルトはコメント控えます。現代物は分からん。
 休憩はさんで、三角帽子。これとかラロって、むかしロンドンレーベルのカタログでさんざんみたから聴いた気になってたんだけれども、どうやら気のせいだったらしい。。弦も結構軽くなってきて、ご機嫌ご機嫌。ところで、一曲目でグロッケン叩いてて、この曲ではたぶんバスドラ叩いてた丸顔のお姉さん、大フィルの人? みたことないなあ、あんなかわいい人、見逃さないと思うんだけどなあ。

 さて、スネアが真ん中に陣取って、ボレロ。ディスクだと聴こえるか聴こえないかだけれども、実演では意外にしっかりした音量から始まって。最初はフルート。おお、結構いいじゃん。最後にブレスがなくなっちゃったけど。ヴァイオリンは背筋をまっすぐたてて楽器もたてて。お疲れさま。

 オーボエもクラリネットもよかったよ。サックスはさすがになれてるし。ファゴットが苦しそうだったのは残念だけど。
 そしていつの間にかヴァイオリンはピチカートで、全員でウクレレ状態。結構ビジュアルがおもしろかった。

 一番の山場、ホルンとピッコロ。これ、完璧でした。ピッチもバランスも、音色の溶け合い方も。そしてノーミス。鳥肌立ちました。これで満足確定。あとはトロンボーンとトゥッティのバランス。
 トロンボンは、音色はまあまあだったけれども、ちょっと音量が小さかったかな。その前の弦楽に負けてました。唄い方はよかった。
 最後のトゥッティ。ぼくが求めているバランスは、ちょっと一般的じゃないっていうのは分かっているから、それはいいのだけれども、もうちょっと音量があるとうれしかったな。何しろボレロだからね。去年のローマの松なみのカタルシスが欲しかった。

 でも、そんなのは後から考えたこと。ホルンとピッコロに酔ってたぼくは、もう立ち上がってブラボー状態。いつもの定期に比べてカーテンコールも2回くらい多かったし、きっとみんなも大満足だったと思うよ。

 たまにはいいね。名曲コンサート。でも、8月のコバケン名曲コンサートはちょっと。体力ないっす。(未完成、運命、新世界って、何時間やるつもりや)
 ぼくの次は、おまちかね、ブルックナー月間、色物コンサートです。おたのしみに。

 

2001年5月10日(木)
大阪フィルハーモニー交響楽団 第348回定期演奏会
朝比奈 隆:指揮
大阪フィル
フェスティバルホール 
A席 1階 N列 R3番

ブルックナー 交響曲 第7番

 さて、7番。
 ブルックナー7番勝負の4回目。去年の9月から続いた毎月朝比奈さんシリーズの、とりあえずは最終回。来月は朝比奈さんおやすみです。
 そして、あの5番の次のコンサート。

 あの5番。
 たぶん、聴いた人には、これでわかってもらえると思うんだけれども。あの、5番。4月21日、ザ・シンフォニーホール。大音響でホールを揺るがし、そして、終演後の完全な静寂を呼び込んだ、あの、5番

 あれからずっと、あのコンサートのおかげで満足しているから、今回の7番は、あまり貪欲にならずに、気軽に楽しむ気分。ブルックナー聞くには、ちょっと音響的にしんどいフェスだしね。

 7番って、他のブルックナーの交響曲とは歴然と違うんだよね。金管のコラールは終楽章までおあずけで、大編成の室内楽みたいな弦楽器の精緻なアンサンブルが「ゴシック建築のような」大伽藍を築いていく。そして、ワーグナーチューバによる葬送行進曲。オルガンサウンドで押しまくる他の曲に比べると、結構普通っぽい。だから人気あるのかな。

 さて、ステージ。
 指揮台の両脇に5メートルはあろうかというマイクスタンドが、ラグビーのゴールのようにそびえ立っていて、そのほかにもマイクが点々。でも、ステージ手前の座布団に乗ったマイクがないから、江崎さんじゃないのかな?

 朝比奈さん出てきて、一楽章。
 普段に比べると、、とても大きく手を振り回す朝比奈さん。でも、出てくる音は、、、?  あれっ。アンサンブルが。。。コンマスが踊りまくるんだけれども、効き目なかったですねぇ、今回は。
 弦がずれて、木管のソロもずれて、ホルンの掛け合いは崩壊してて。いやあ、スリリングでした。よく止まらなかった。

 二楽章も似たようなもんだったけど、ワーグナーチューバの音がすごく好きだからみんな許します。最後のロングトーン、いつまでも終わらないロングトーン。あとほんのちょっとだけ長かったら、ぼくも窒息してたでしょう。

 ここで入り口で待ってたお客さんがどっと入ってきたので、仕切り直し。コンマス立ってチューニング。
 仕切り直しがよかったのか、テンポが速くなって乗れたのかはわからないけれども、三、四楽章は危うさもなく、すごくいい演奏でした。

  なんかこう書くと、あんまりいい演奏じゃなく思えてくるね。実際は結構満足だったんだけれども。まあ、涙出てくるとか、終わったあと座り込んで動けないとかってことはなかったけど。
 それでも、朝比奈さんのブルックナーだったし。
  5番があまりにすごかったから、毎回ああじゃないと、って欲張るんじゃなくって、たまにでもああいうのを聴かせてくれるなら、ずっと聴きに行くよ、っていう気分なんだよね、今は。

 ただし、次の8番は期待いっぱいで行くからね。がんばってね。

 

2001年4月21日(土)
朝比奈隆の軌跡 2001 ブルックナー後期交響曲選集
朝比奈 隆:指揮
大坂フィルハーモニー交響楽団
ザ・シンフォニーホール 2階AA席36番 A席

ブルックナー 交響曲 第5番

 僕は、冷静に聴くことができたと思うよ。たぶんね。

 ずっと静かにどたばたしてる、って感じの日常で、シンフォニーのブルックナーだっていうのに、特に予習もできなかったけど。まあ、ブル5のディスクっていっぱい持ってるから、特に予習は必要ないんだけれども。
 別に気分が盛り上がらない、ってわけじゃないと思うのだけれども、なんかこう、一週間前からわくわくってな感じではなかったね。
 むしろ怖かったのかな。
 待ちに待った朝比奈/シンフォニーのブルックナー。なのに、なんか怖かった。聴いてしまうのが、怖かった。
 僕の曲の理解がこんなに拙いのに、聴いてしまっていいのか。
 僕の気分があんまり晴れないのに、聴いてしまっていいのか。


 聴いてしまったら、おしまいになっちゃうんじゃないか。

 この前の8番は、まだ余裕があった。7月にもう一度あるからね。その前の4番は、まだ序盤戦だったし。
 でも、5番。結局流れたけど、シカゴ響を振るときに持っていこうとした5番。それほどの自信作。ブルックナーシリーズの、最初の山場の5番。
 僕が見ることができる、最後になるかもしれない5番。
 その5番を、僕は冷静に聴くことができた、と思うよ。

 小雨にもかかわらず、もちろん会場はほぼ満員。シリーズ通し券の僕の席は、2階席の2列目。フェスの席が、ちょうどヴァイオリンとおんなじくらいの高さの席で、ちょっと視覚的に不満だったので(私、ブラス吹きだから、もう少し見たいんです、ラッパの人たち)、二階席はちょっとうれしい。優先予約の日に、半休とって電話かけ続けた甲斐がありました。。。
 上から見下ろすステージには、多分いつもよりかなりたくさんの椅子が並んでいて(数えたわけじゃないけれど)。テレビカメラとマイクの数もいつもよりかなり多い。しっかり録ってね、江崎さん(朝比奈/大フィルのCDを録音しているエンジニアさんです)。

 さて、開演。
 ぞろぞろと楽団員がはいって来たけれども、ステージ後方の左側、ホルンの隣の椅子10個くらいは空いたまま。フィナーレ用のブラス隊なのね。でも、第九のコーラスを最初から入れる朝比奈さんらしくないね、途中で入れるのって。まあいいけど。
 他の席が埋まって、コンマスがはいってチューニング。
 チューニングがすんで、コンマス座って、沈黙

 会場はざわめいているけれども、オケは沈黙
 咳払いは続いているけれども、オケは沈黙

 オケの沈黙の緊張感が伝染して、会場の咳払いも落ち着いた。そこでやっと、朝比奈さんの入場。
 コンマスと握手して、会場に礼をして。指揮台にのぼると、スコアの端をちょっと折って捲れやすくするいつもの動作。

 そして指揮棒をあげて。
 おろした。

 5番は、他で多用されているトレモロ始まりではなくって、ピチカート始まりなんだよね。緊張感あふれるピチカートではじまって、ブラスのコラールが盛り上がって。

 そして全休止。

 シンフォニーホールは、残響が長いから、この全休止が本当にいいんだ。さっきまでホールを満たしていた音の欠片が、ちょっとだけとどまってスッと消えていく。これが、本当に目に見えるようでね。しあわせだよね。
 それから、ホルン。
 ブルックナーって、ホルンのソロが多いんだけれども、大フィルのホルンは本番に弱い人が多いのか、大事なところでちょっと、ってことが多かったのだけれども。今日はよかったよ。フルートとの掛け合いとか、楽しく聴けた。

 3楽章の前に入ってきたブラス隊は、ラッパ2,ホルン2,トロンボン3にチューバというフル編成。さてさて、どんなフィナーレになるんだろう。

 ここまでは、いや、フィナーレだって、冷静に聴いてたんだよ。大フィルのブラスはよく鳴るから、普通のラッパとトロンボンだけでも結構な音量になって。4楽章はもう、すごいことになってるんだけれどもサポートブラス隊はぴくりとも動かない。これじゃあいらないじゃん、と思ってたんだけれども、本当の最後、全員吹きはじめたときは凄かった。
 今回の編成では、ステージ奥の真ん中にティンパニがでんと構えて。その右側にラッパとトロンボン、左側にホルン。サポート隊はホルンのさらに左なんだけれども。
 それまでは、いくら大きい音でも、トロンボンとラッパは右側から聞こえてくる。耳をこらせばヴァイオリンはその前からって分かる。
 ところがね、サポート隊が入った瞬間に、もう、どっから音が出ているか分からない。ステージの全部の音が、一つのまとまった圧力になってぐわっ、って。音量の問題じゃないんだね。凄かった。

 でも、ここまではやっぱり冷静に、そんなことも考えていられたのだけれども。

 ブル5の終わりは、ティンパニの連打が続いていて、その中を管弦の短いコードが何回もフォルテシモで出てきて、そして一斉に休止。ってことになるのだけれども。ちょっと巧く説明できないけれど、ものすごく高揚感のある終わり方。ティンパニのリズムそのままブラボーに突入してもおかしくない。実際突入してるディスクもあるし。
 でも、ここはシンフォニーホール。1楽章で聴いたブルックナー休止の残響。さいごの休止でもう一回聴きたいよね。でもこの終わり方じゃあ無理だよね。
 はじまる前から結構そのことが頭にあって、ああ、この気持ちを共有できる人だけで聴けたらどんなにすばらしいだろう、と思っていたのだけれども。

 

 そして、さいごのコード。
 空中で指揮棒を止める朝比奈さん。

 


 指揮棒をおろす朝比奈さん。

 そして、拍手。
 


 時間にしたら数瞬なんだけれども、完全な、静寂。指揮棒が止まって、音の蜃気楼が天上に昇っていくまでの、間。そして、今まで聞いたどれよりも大きい、拍手。
 ほんとに短い間だったし、人によってはこれでも拍手が早い、っていうのだろうけれども。
 でも、涙がこみ上げてくるまでには、充分な時間だったよ。
 チューニングの後、緊張感が伝わるまで舞台に出なかった朝比奈さんの演出。ブルックナー休止がすごく心地よかったシンフォニーホール。そして何よりも、演奏の緊張感。あの、英雄や7番でも起こったフライング拍手を、力でねじ伏せた92歳の朝比奈さん。
 二回のカーテンコールの後、あっさりオケを引っ込めて、一人で舞台に出てきた朝比奈さん。それまでほとんど誰も帰らずに、三階席まで全員のスタンディング・オベーション。

 ブラボーの叫びが飛び交う中、小さくありがとう、って呟いたよ。大きい声出すと、ばれちゃうからね。泣きながら叫んでるのが。

 本当にありがとう。
 大坂フィルのみなさんと、トラの方々(都響の人たちかな?)。
 それから、朝比奈さん。

 来年、新日でやるんだよね?ブル5。

 

2001年4月14日(土)
大阪フィルハーモニー交響楽団 第347回定期演奏会
若杉 弘:指揮
波多野 均、三原 剛、平松英子、竹本節子、吉田浩之、多田羅迪夫:独唱
中野哲也、秋津智承、金崎美和子、小林英之:独奏
大阪フィル
大坂フィルハーモニー合唱団
大坂すみよし少年少女合唱団
フェスティバルホール 
A席 1階 N列 R3番

J.S.バッハ マタイ受難曲

絢爛豪華 キリストの生涯!! (要、解説)

 ちょっと前の演奏会になってしまうんだけれども、やっぱりきちんと書いておかないとね。

 僕程度のクラッシック好きだと、バッハの名前はよく知ってても、マタイ受難曲は聴いたことがない。
  だいたいどんな曲かも知らないし、予習CD探してみても3枚組が多くってちょっと遠慮気味。ほとんどなにも知らないで臨んだ演奏会。
 こういう人、きっと他にもいると思うんだけれども。

 ちょっとはやめに会場について、いつもより厚めのプログラムに目を通す。歌詞と対訳が延々と載っていて、それが分からないと大変そう。演奏中は読みながら、ってわけにはいかないだろうから、会場が明るいうちに読んでおこう。
 内容は、あれ、どっかでみたことあるぞ。 それも最近。ごく最近。

 イエスの勢力がどんどん大きくなって危機感を抱いたローマ法王の勢力が、イエスをとらえようとして。イエスの弟子ユダは、目的もなく大きくなるイエスの勢力に危惧を抱いていて。ユダの心を引き離すマリアの香油のエピソード。
 ユダの裏切りでイエスは捕らえられて.ユダは罪悪感から自殺して。引きずり回されて処刑されるイエス。

 あ、これって、ジーサス・クライスト・スーパースター

 そうなんです。マタイ受難曲は、僕の大好きなロックオペラ、ジーサス・クライスト・スーパースターのクラッシック版なんです(ってジーサスがマタイ受難曲のロック版なんだって)。
 そうと分かれば話は早い。三時間を越す演奏時間も、たくさんいるソリストも、合唱団も、全然怖くない。どっからでもかかってらっしゃい。
 安心したら、ワインが飲みたくなった。まだ上演には時間があるな。スパークリングワインでも飲もっと。

 ステージには合唱団二つと、独唱者6人のイスが並んでてちょっときつめ。人いっぱいで暑そう。ってまだ4月だったんだっけ(これを書いてるのは6月の末なんです)。

 ずいぶん前の演奏だから、細かいところ良くは覚えてないんだけど、エヴァンジェリスト(福音書記者)の波多野さん、歌もさることながらその容姿もぴったりの配役でした。この人がナレーターとなって話が進行して行くから、メインのソリストなんです。
 そのほかも、子供の合唱団も含めて、楽しく最後までみることができました。

 途中からやっぱりつらくなって、プログラムめくりながらの鑑賞になったけど、みんなしてたから、いいよね。会場の明かりも、いつもよりも心なしか明るかったし。
 土曜日の五時からって、ちょっといつもと雰囲気の違う定期。ちょっとお得な気分でした。

 

2001年3月22日(木)
大阪フィルハーモニー交響楽団 第346回定期演奏会
秋山 和慶:指揮
大阪フィル
フェスティバルホール 
A席 1階 N列 R3番

モーツァルト:交響曲 第36番 リンツ
マーラー  :交響曲 大地の歌

巨匠的な?、マーラー  

 さて、三月マーラー月間(といっても二回だけだけど)の締めくくりは、秋山和慶の大地の歌。高校の時の音楽の先生が和慶(わけいさんっていってるけどね)さんの弟子だったので、ちょっと親しみを感じてます(聴いたことないけど)。
 プログラムは、モーツァルト、マーラーという「巨匠的な」プログラム(大フィルチラシより)。予習CDは、ムーティ/ウィーンとクレンペラー。

 ムーティのモーツァルトなんて、ひいきの僕でさえミスマッチだろうとは思うのだけれども、以前の友人が、モーツァルトのホントの良さを教えてくれようとセル/クリーヴランドを勧めてくれたときに、比較用に一緒にプレゼントしてくれたのがこれ。今回のリンツはムーティの方に入っていたので、ひさびさに引っぱり出しました。

 さて、本番。
 モーツァルト。これがねえ。
 結局僕はモーツァルトの指揮者による違いがよく分からないんだな。そりゃあセルとムーティは違うけれど、でもどっちもモーツァルト。曲があまりにも完成され過ぎていて、モーツァルト以外のものに化ける余地が全くない。だから、誰が振ってもモーツァルト(あくまでも僕にはね)。
 次に備えて気持ちよくうとうとしてしまいました。

 15分の休憩を挟んでマーラー。
 僕ははっきり言って、マーラーについてなんにも知りません。曲もこれまで一番しか聴いたことがありません。高校の時に、レコードやで大声で「おっ、これボーカル入りの交響曲だ」といってみんなに笑われて以来、レコード売場のマーラーの棚には近寄らないようにしてたからね。クレンペラーも、アマゾンコムで一番安かったやつ。夜しかCD聴けない僕にとって、急に音がでっかくなったり延々と小さかったりする大地の歌は、BGMにもなりにくい曲だったんだ。

 それはさておき。
 テナーとアルトが指揮者の右左に配置して、それが楽章ごとに交互に唄う6楽章の交響曲。なんか最初はどうなることかと思ったけど、これが結構おもしろい。いろんな楽器にソロが回るし、ブラスも活躍するし。チェロのソロとクラリネットのデュオがめちゃくちゃ綺麗。今回はホルンも大健闘、いつもこうやってよね。当然何をいってるのか分からない歌も事前にプログラムの日本語訳を読んだおかげで、堅苦しいことをいってるわけではなさそうだ、ということだけは分かったし。
 六楽章の後半はとくに、ホントに楽しかった。

 こういう知らない曲で拾い物をするって、定期会員の楽しみだよね。

 

2001年3月19日
朝比奈隆 ブラームス・チクルス
朝比奈 隆:指揮
豊島 泰嗣:ヴァイオリン
毛利 伯郎:チェロ
新日本フィルハーモニー交響楽団
サントリーホール 1階12列7番 S席

ブラームス:ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲
ブラームス:交響曲 第4番

標準語のオケ、標準語のお客

 朝比奈求めてニシエヒガシエ。やってきましたサントリーホール。南北線が通ってから、交通の便もよくなったし、アークヒルズ内のオープンカフェは、なんにも頼まなくても座ってられるし。昔よりずっとイメージがよくなったよ。サントリーホール。

 開場を告げるからくり時計が鳴り響いて、重そうなドアが開いて。チラシくれるお姉さんにチケット渡そうとしたら、「チケットは中の方で」。そうか。ロビーではチケットいらないのね。
 ロビーで売ってるCDは、当然のことながら新日フィルの物が多くて。ワーグナーのリング全曲なんて、大阪の会場じゃあみたことないよなあ。なんてお上りさん気分。ってお上りさんなんだけど、正真正銘。
 チケット切って、客席にはいると。おお、シンフォニーホールよりでっかいぞ。椅子の間も心持ち広くて、奥行きも広い。天井はシンフォニーの方が高いのかな。昔何回か来たことあるはずなんだけど、もう忘れたね。すっかり。

 お客さんは、平日だったせいか、会社帰りのおじさん多数。会社帰りのOL同士ちらほら。学生さんらしいカップル、中年夫婦、御両親への接待、その他諸々。ちょっとした社交場。作業着のままとか、ジーパンにセーターとか、そういうのはあんまりいないね。まあ梅田と違って、会社から歩いて会場、なんて人はほとんどいないからかな。
  そして、喋ってる言葉は、そりゃあもう標準語。僕自身は関東出身だから、標準語は自由に操れる、と思ってたんだけれども、東京で知らない人に話しかけるときは一度頭の中でおさらいしちゃうよね、きちんと標準語かどうか。そして、周りから標準語が聞こえてくるとちょっと、違和感。もう大阪人になりかけてるのかな。

 さて。
 新日フィルは大阪フィルと違って、大部分のプレーヤーが開演ベルの後にぞろぞろと入ってくる。そして、チェロとヴァイオリンのソリスト。そして朝比奈さん。お客さんの話を聞くともなしに聞いていると、やっぱり外タレ扱いの朝比奈さん。

 1曲目は協奏曲。
 はっきり言ってあんまり興味ないんだよね、コンチェルト。ソリスト二人とも男だし。。。ちょっとヴァイオリンが鳴りきらない感じだけど、チェロのソロはいいなあ。床に直接付いてるから音響くのかなあ。
 あ、音楽的なこと知りたい人は、いいページ紹介するから言ってね。

 そして、休憩のあと、ブラームス4番。
 これがねえ。もう。
 前のコンチェルトの時から思ってたんだけれども、音のまろやかさって言ったらもう。すんごいよ。
 大フィルの場合は、どんなにいっぱいの楽器が鳴ってても、あれとこれとそれ、って鳴ってる楽器が分かる(気がする)んだけれども、新日は分からない。ものすごくブレンドされて、まろやかな全体としての響きが聞こえてくる。もちろんオケのせいなのかホールのせいなのかは知らないけれどもね。
 ブルックナーのようにブラスばりばりって曲じゃないからかなあ、とも思ったのだけれども、トゥッティでもそうだから、オケの音なんだろうなあ。

 でもこれがね、ブラームスにぴったり。楽章が終わった後の、響きの余韻がだんだん消えてくところなんか、いいよぉ。それからホルンのソロ。もうこれ持って帰ろうよ、大阪に。ね、朝比奈さん。
 もう全編この音が気持ちよくて。それに浸ってたらあっという間に過ぎちゃった。

 ただ、4楽章の後は早急な拍手とブラボーで、ちょっと残念。音楽聴いてたらあのタイミングでは手をたたけないと思うんだけれどもなあ。それから、カーテンコールの時に、二階席の人が結構慌てて何人も帰っていく。どうしたのかな、と思ったらステージに集まってるのね。一般参賀のために。
 きちんとオケに拍手してから来るのが礼儀だろう、とは思うのだけれども。まあ外タレだからしょうがないか。何しろこっちみたいに毎月朝比奈さん聴けるわけじゃないもんね。ってちょっと自慢。

 いやあ、来た甲斐ありました。ヒガシマデ。
 都響のブルックナーはとれそうにないけれども、来年のN響の英雄。これはがんばって取るぞ!!!

(演奏会のまえに)
 ずっとどうしようか迷っていたのだけれども、行きます。サントリーホール。大フィル以外の、初めての朝比奈さん。

 

2001年3月15日(木)
大阪フィル「春を呼ぶコンサート」
小林 研一郎:指揮
小山 実稚恵:ピアノ
大阪フィル
ザ・シンフォニーホール  2階AA列30番 A席

ヴェルディ:歌劇「運命の力」序曲
リスト  :ピアノ協奏曲 第1番
マーラー :交響曲 第1番

 春を呼ぶか、コバケン/マーラー

 つい三日ほど前までは、雪が降ったりして滅茶苦茶寒かったのに、今日はぽかぽか陽気。一冬着続けた黒いジャンパーを脱ぎ捨てて、ちょっと軽めのハーフコートでザ・シンフォニーへ。コバケンは、僕のこころにも春を呼んでくれるかな。

 なんかとっても久々のザ・シンフォニー。二月はフェスだったし、一月の悲愴は、裏から観たから、なんと去年の11月、ロマンティック以来のザ・シンフォニー。そして初めてのコバケン。初めてのマーラー。

 開幕前はコーヒーとドーナツでちょっとおなかを押さえて。座席は二階席の一列目、ほぼ真ん中。よくポスターとかにあるオーケストラの俯瞰ショットが観られるところ。
 時間になって、チューニングが終わって。走ってきたコバケン。コンマスと握手して、観客に挨拶して、そしてオケに礼をしてから指揮台にのぼるコバケン。暗譜のコバケン。

 ヴェルディ、運命の力。
 冒頭。ラッパとトロンボン。
 これがさ、よく鳴るんだ。この曲に限らず、今日のオケは鳴りまくり。大フィルって鳴るやん。やっぱブルックナーで感じた欲求不満は座席のせいなのかなあ。それならいいのだけれども。

 ピアノ協奏曲
 ピアノに限らずコンチェルトって、結構人気あるんだよね。おれにはよく分からないんだけれども。今日のピアノはあんまり好きじゃないなあ。音濁ってるし。音粒のむらか知らないけど、きこえない音もあるし。でも気持ちよかった。うとうとして、気がついたら終わってた。
 不必要に長いピアノへのカーテンコールのあとの休憩。20分間うとうとしたり、ピアノ片づけるの見物したり。

 さて、マーラー。
 コンチェルトではスコアを観ながら振ってたコバケン。マーラーではまた暗譜に戻って。
 そして一楽章がはじまった。

 マーラーってさ、なんか難しそうだよね。声が入ってるやつとか、やたら長いやつとか。編成とかもやたら大きくて。ちょっと取っつきにくいから、結構敬遠してた。今回のチケット買ってから、大昔に買ったムーティの巨人を引っぱり出して聴いてたのだけれど、親しみやすいメロディが唐突に聞こえてくるけれど、全体像はよく分からない。取っつきにくい純文学系かな、って。

 ところがさ。
 生で聴くマーラーは、ちっとも取っつきにくくない。一楽章は、弦のロングトーン(トレモロ、じゃないよねえ)の上で管が代わる代わる遊んでて。ラッパももっぱらミュートつけたりして。ハープからヴァイオリン、ビオラと左右に音が流れるピチカートとか、余韻充分の全休止とか。(ああ、ブルックナーの全休止がこのホールで聴けるんだ。。。)
 二楽章からは、ホントに歌にでもなりそうなメロディを弦バスのソロでとか、一つのメロディを、ファゴット、バスクラ、チェロって引き継いでディミニエンドしてったりとか。なんかおもしろいしかけいっぱいで目が忙しい。

 そしてホルン8,ラッパ4,トロンボン4,チューバのブラス隊。ティンパニ2セット、バスドラ2つ、5人の打楽器。木管はダブルリードが多くて見分けがつかんし。こいつらを一気に鳴らし切る終楽章。いいなあ。こりゃあ純文学と言うよりは、ブ厚いノベルスだね。
 ところで、ホルンとラッパの間に、おねーちゃんが座っていたのだけれども、このおねーちゃんが、ずっとぴくりとも動かない。一楽章途中からずっと気になってみてたのだけれども、動き出したのはなんと、ラストの1分間。ラッパのアシだったのだけれども。まったく出番のない3楽章まで、まめにパート踏めくってたね。ご苦労様でした。

 さて、その最後一分、練習番号52の5個前からは、ブラス隊総立ちの大祭り。佐渡さんのローマの松もびっくりするほどのフルブロウ。コバケンて大馬鹿やね。これはブラボーではなくて、口笛とかイェーイ、とかでしょう。ちなみにものすごいほめ言葉よ。誤解のないように断っておくと

 カーテンコールというか、長いソリスト紹介のあとは、コバケンの挨拶と、アンコール。これが練習番号52の5個前から。つまりフィナーレの1分間。
 これ、いる?
 この大盛り上がりの必然性を1時間かけて築いてきたのに。そこだけ抜き出して。しかも演奏は本編にはとてもかなわない。なんのためにあったのでしょう? ちょっと理解に苦しみます。

 しかしながら、ちょっともやもやしていて、気分転換がほしかった僕には大満足のコンサートでした。そして、二階席で観るブルックナー三番勝負も、とても楽しみになってきました。

(演奏会のまえに)
 さて、3月は怒濤の週三回コンサート。怒濤のマーラー。今回はコバケン初体験。「ライブの人」コバケンは、どんなマーラーを聴かせてくれるのでしょう。
 予習の巨人は、ムーティ/フィラデルフィア。あ、もちろんヴェルディもね。どっちも15年くらいまえに買ったCDだね。なつかし。

 

2001年3月10日
'01 J1 1stステージ 第1節
名古屋市瑞穂競技場
SS席バック Tブロック196番

名古屋グランパスエイト vs 浦和レッズ

 さて。プロ野球より一足先に、新世紀のJリーグ開幕。
 去年は武者修行の旅に出ていた浦和レッズも、無事に帰ってきた。

 今年前半でいなくなりそうなJの2大スーパースター、小野伸二とピクシーを観に、大阪からはるばる名古屋までドライブ。
 大阪は曇り。途中の関ヶ原は雪。名古屋は、、、瑞穂に下り立ったときに降っていたのはみぞれ。さむいっす。

 

2001年2月9日(金)
大阪フィルハーモニー交響楽団 第345回定期演奏会
朝比奈 隆:指揮
大阪フィル
フェスティバルホール 
A席 1階 N列 R3番

ブルックナー:交響曲 第8番 ハース版

 決戦の、金曜日。

 金曜日にコンサートがあると、一週間の過ごし方が変わるよね。体力と気力のピークを金曜日の夕方にもって来なきゃいけないから、平日は早く寝るようにしたり。耳を澄んだ状態にするために、パチンコは遠慮したり、ウォークマンもしなかったり。前の日はお酒も断とう、、とは思ったんだけどつい習慣で呑んでしまったり。そうそう、若い楽団員のやってるHPを覗かない、っていうのも大切な準備だね。
 予習用のCDも、前の週によく聴いて、土日に気合い入れて聴いて。その後は火曜日に一回軽く聴く。なれすぎたり、飽きたりしない聴き方って、難しいよね。
 まあ、そうやって二週間も前から気合いのはいる演奏会って、そうはないのだけれども。今回は、その気合いのはいるコンサート。朝比奈ブルックナー7番勝負の、第二回。

 すっかりはまってるよ。ブルックナー。半年前までは、まったく知らなかったブルックナー。今回やる8番のディスクは、いつの間にやら、朝比奈3種、ヴァントにヨッフムと、5種類の演奏が集まってた。あ、フルトヴェングラーもあったっけ。一番聴いたのが朝比奈/94年モノかな。響きが好き。

 さて。当日。
 朝比奈のブルックナーとあって(っても前回の4番はがらがらだったけどね)、定演なのだけれどもいつもよりヒトが多め。少なくとも一階席には空席はない。休憩なしの一発勝負だから、開演前のトイレも混雑気味。
 20分くらいまえに入場したのだけれど、チケット売場を覗くでもなく、そのまま席に直行してパンフに目を通したら、目をつむって時を待つ。こんなこといったらいけないのかもしれないけど、やっぱ新世界や悲愴とは気合いが違う(俺のね)。

さて、演奏。なんだけれども。

 いやー、でっかいね。ブル8.なんだかんだいってもCDだと2枚に分かれて入ってるから入れ替えが息抜きになるし、そもそもそんなに気合い入れて聴かないからだけど、こんなでっかいんだ。って。
 それからね、3楽章。ライナーとか今回の曲目解説とかにも、「比類のない美しさ」とか「人間の英知を越えた美」とか絶賛されてるんだけど、いまいちピンときてなかったんだ。そうか?って。ところがね。これがほんとなんだ。ホルンのデュオの美しさっていったらもう。今までなに聴いてたんだろう、って思っちゃうよね。それが延々と続くこの至福。いいなあ。これなんだなあ。これがブルックナー。

 でも全体的にはどうだったんでしょう。ホルンのソロは相変わらず本番に弱いし。フレーズの切り方が雑でメロディがつながってないところも幾つもあったし。あと、トゥッティのバランスが期待してたものと違ったし(これはね、私の席のせいなんですけど。金管すべて見えないのに、バストロのベルだけは真正面に見えている、っていう)。

 あと、客席。なんかざわついてるのはしょうがないのかな。演奏中って、意識して耳のゲインをあげてるから、客席の雑音がやたら入ってくる。隣のおっちゃんのいびきや、後ろのおっちゃんの楽章ごとの話し声、トゥッティからピアニシモになったとたんの遠慮のないくしゃみとか。最悪なのはやっぱり演奏直後の拍手。余韻もなにもあったもんじゃないブラボー。あんななに聴いてんの? オケと一緒に息はいてたら、そんなタイミングで声だせるわけないじゃん。っていうほどの絶妙なタイミング。もう、、、

 なんか書いてていやになっちゃった。ごめんね、読んでくれる人も。本当はとってもいい演奏で、家に帰っても4楽章とか口ずさみながらにこにこしてたのに、なんか変な文章になちゃったね。

 やっぱり平和な気持ちで聴きにいかないと、楽しめないね。

 

2001年1月26日(金)
2001 南海コンサート
朝比奈 隆:指揮
大阪フィル
ザ・シンフォニーホール 2階W列18番 B席

チャイコフスキー:スラヴ行進曲
チャイコフスキー:交響曲 第6番 悲愴

初体験!正面からの朝比奈さん

 さて、久しぶりのザ・シンフォニー。
 このところ、立て続けに朝比奈さんがあって、しかも企画モノが続くので、どうしようかな、と思わないこともなかったんだけれども。でも、だからこそ。
  本当に気合いを入れたコンサートではもったいなくてできないけれども、一度はやってみたかったこと、やっちゃいました。

そう。 今回の席は、ステージの裏側なんです。

 今まで、テレビ放送とかでしか見たことがない、指揮する朝比奈さんを正面から見られる席。
 発売日に電話かけ続けた甲斐あって、一列目の、ほぼ真ん中。打楽器奏者の頭に触れるくらいの席。

 さて、曲。チャイコフスキーの「悲愴」。試聴盤は小澤/ボストン。だって安かったんだもん。。。こればっか。
 CD聴いて思ったんだけど、結構むかし好きだったんだ、この曲。親父の世界名曲全集なんて黴の生えたレコードとか、ノイズだらけのFMを必至にエアチェックしたりとかでよく聴いてた。「悲愴」なんてわりには、結構派手な曲だな、って思ってた。

 前座のスラヴ行進曲と休憩が終わって、入ってきた朝比奈さん。そして、一楽章。
 本人がヴァイオリン弾きだからなのかどうか知らないけれど、朝比奈さんの弦楽器に対する指揮は、管楽器に対するそれとまったく違う。きっと、管はソロ楽器だから、って思ってるんだと思うけれども、フレージングから強弱から、ほとんど指示を出さないんだ。ところが弦のパートになるともう。楽器ごとに押さえろ、もっと出せ。左手ふるわせてヴィブラート。テンポも細かく揺すって「うんっ」って気合いのうめき声。

 そして、でてくる音は、重厚で華やかで、そして緊張感にあふれて。

 もちろん、ステージの上から聴いてるから、ティンパニは下から響くし、ラッパは譜面台の音が直接跳ね返ってくるし。トゥッティのフォルテシモが止んで弦のピアノ、なんて時は耳がハレーション起こして聞こえないし。
 でも、でも。
 ベートヴェンの3番の2楽章や、7番にあったあの緊張感を、また聴けた。ポピュラー音楽のように、ビートに乗って自然に進んで行くんじゃなくって、ほっとけば止まろうとする音楽を、一人の男が支配し、動かしていく緊張感を。おとこの表情を、身振りを見ながら聴くことができた。

 2,3楽章はだれてたけど。。。

 そして4楽章。華やかだった今までの反動で、どこまでも暗くしずんでいく「悲愴」。
 フィナーレ。コントラバスのピアニッシモが静かに消えて。
 完全な静寂。
 朝比奈さんが指揮棒を下ろして。
 朝比奈さんがスコアを閉じて。
 そして、朝比奈さんが指揮台を降りようとしたとき。ようやく起こった拍手。
  いつものような派手さはないけれども、じわじわと長引く、拍手。

 かんむりコンサートだから、普段クラッシックに縁がなくて義理で来てる人が多いと思うから、ブラボーがなかったのも、最後の間も、曲に呑まれて、と言うよりはタイミングが分からなくて、ということかもしれないけれども。
 いつもの待ってましたブラボーより、ずっとずっとよかった。

 ベートヴェンやブルックナーのように、当然のように名演奏を期待していったコンサートではないけれども(あの新世界の後だしね)、ちょっとにこにこして小雨の路に出ていける、もうけもののコンサートでした。
 ありがとう、朝比奈さん。
 そして、大フィルのみなさん。

 

2001年1月13日
大阪フィル第344回定期演奏会
尾高 忠明:指揮
榎田 雅祥:フルート
若林 顕 :ピアノ
フェスティバルホール 1階N列R3番 A席

武満 徹 :フルートとオーケストラのための「ウォーター・ドリーミング」
バルトーク:ピアノ協奏曲 第3番
シベリウス:交響曲 第1番

あー、楽しかった

 さて、気を取り直して。
 定演会員第2弾。武満とバルトークとシベリウス。武満とバルトークは、現代の中では古典的、というくらいの知識しかない。もちろん初聴き。
 シベリウスは、去年佐渡さんで聴いた2番。フィンランディアみたい。ってのが感想のすべて。みんながんばったね、っていうかんじ。
 予習CDは、シベリウス。オーマンディ/フィラデルフィア。安かったんだもん。でもけっこう好き。

 前日、新年会でほぼ朝まで飲んでいて。やばい、土日ってマチネーだったっけ!って飛び起きたのはマチネーだったら余裕で間に合わない時間。フェスはマチネーじゃなかったのね。よかった。
 この日、大阪はけっこう寒くって。梅田で立ち寄った店、けっこう時間くってお昼ご飯も食べる暇なくって(おいおい7時開演だぞ)。でもまあ、ちょっとうきうき、5日ぶりのフェス。気楽に聴けるコンサートって、久々だよね。

 定演会員も2度目となると席にもなれて。周りもよく知った顔で。チケット売場覗いたらコバケン/マーラーのいい席があったから買っちゃって。。。
  さて演奏。
 1曲目、武満。ううむ。よくわからんのね、武満って。ノヴェンバー・ステップスもわからんかったけど。幽玄を目指してるんだろうなあ、とは思うのだけれども。冴えないフルートソロの後ろでがんばってたファゴットが印象的でした。
 2曲目、バルトーク。これ、すき。2楽章がとっても綺麗。クラッシック聴いてて、綺麗っていうの、なかったよね。交響曲しか聴かないせいもあるかもしれないけれど。これ、ほんとに綺麗。でもピアノのパートじゃなくって、弦のところだけど。あと、ピアノの後ろで飛んだり跳ねたりしてる指揮者もおもしろい。
 休憩、いつもならふらふらするんだけれど、客席でじっとしてた。寒かったからね。
 そして、メインは、シベリウス。この曲は1楽章のブラスのメロディがかっこいいんだけど、開演前に、幕間に、みんなして練習してる。さて、指揮者のダンスに、どんな音が飛び出すかな。

 いやあ、これ、楽しいね。飛んだり跳ねたりの指揮者に、飛んだり跳ねたりのオケ。佐渡さんよりももう少し軽めの飛んだり跳ねたりで、すごくわかりやすい。
  最後のピアニッシモも、オーバーデスチャーでしっかり決めて。
 1,2曲目でフライング拍手してた斜め前のおっちゃんも、一瞬、余韻を噛みしめてた(まだまだ、短いけど)。
 朝比奈さんの時のような、緊張感はないけれど(あくまでも僕にね)、気楽な、楽しい演奏会でした。

 帰りは雨で寒かったから、いつものように梅田まで歩かずに地下鉄に乗ったんだけれども、楽器ケースとスーツケースを抱えた人たちがいっぱい。さすがプロ、撤収早いね。

 

2001年1月8日
第70回大阪フィル新春名曲コンサート
朝比奈 隆:指揮
伊藤  恵:ピアノ
大阪フィル
フェスティバルホール 1階P列R10番 指定席

ベートーヴェン ピアノ協奏曲 第5番 皇帝
ドヴォルザーク 交響曲 第9番 新世界より

新世紀の聴き初め、新世界

 前世紀は第九で終わったのだけれども、その10日後、おんなじところ、おんなじ演奏者で新世紀の始まりは新世界。
 ちょっと前から、演奏会のメインの曲くらいは初めて聴く、っていうのやめようとCDで予習してるんだけれども。新世界はムーティとリーバ。10年以上前にムーティの買ってたのすっかり忘れて、廉価版のをもう一枚買っちゃった。
 まあ、聴くまでもなかったんだけれども。

 新春名曲コンサートだからかもしれないけれど、なんかいつものコンサートとは客の感じが違うね。ちっちゃい子供や、若いカップルとか。おばちゃんが一人で来てるのも目立ったかな。いろんな人が聴く地元のオケ、いいね。
 さて、演奏は。

 まず皇帝。これも、中学校の音楽の時間に聴きそうな有名曲。おなじみのメロディがとっても心地いい。
 ただね。なんかざわざわしてるんだなあ。いや、演奏じゃなっくって、客席がね。あっちから赤ちゃんのぐずついてる声がするかと思えば、こっちでは紙袋探ってるようながさがさって音がずっとしてる。あげくに携帯鳴らすやつもいて。
 演奏会ってさ、音の合間の静寂を楽しむんだよね。家のオーディオでは絶対聴けない、音圧の合間の、絶対的な静けさ。
 そりゃあ、2000人もいるんだから、しわぶきひとつない、ってのはなかなかないんだけど、でもちょっとざわざわしすぎだなあ。

 休憩のあとの、新世界。気付けに一杯、ワインを嗜んでのぞんだ新世界。
 この曲って、一楽章から四楽章まで、どこをとってもいいメロディで、わかりやすいんだけれども。その分BGMとして聴いちゃうことが多くって。CD2枚でけっこう予習したつもりなのに、一楽章の頭とか、二楽章のブレイクとか、えっ、こんな曲なんだ。ってのが結構あって、おもしろかった。
 でも、前の日に、ムーティ/フィラデルフィア聴いちゃったのはちょっと失敗かな。どうしてもブラスに耳がいって比べちゃう。この席、ちょっと前過ぎてブラスが見えないから、その分音の迫力も感じにくいみたい。

 でも、お年賀の名曲コンサート。くさくさした11連休の締めくくり、いい気分ででてきたよ。
 今年も一年、満足してホールをあとにできますように。