●いつも音をめぐる環境を考えている。音は単体として存在するものではない。音は現象である。空間に流れているさまざまな要素の微細な発露として音はある。時間ー空間。波ー風ー光ー重力。素材のふるえ。構造と形態と記憶された時間。集合音。人とのかかわり。
日常的な空間の中の、これらの要素が重なり合った数々のポイントに析出している結晶を１つずつ拾い上げて、その心地よさに耳を済ましていたい。
伊達伸明
●中国に〈園林〉という庭をめぐる思想があります。その中で第宅・園林は自邸の庭（すなわち邸居）として、風景を楽しむ邸居・味覚を楽しむ園田居・神仙と霊的交流をする山居と並んで、生活をエンジョイする遊びの空間であり、歌舞音曲の広場として位置づけられています。
今回私どものギャラリーで紹介する伊達伸明さんの作品は、楽器の造形であり、音のインスタレーションです。もちろん演奏することができ、視覚的にも聴覚的にも楽しませてくれる彼の作品は、テレビなどの映像によってリアリティーの質が変化してしまっている私たちを、きっと〈生〉の響宴の園に誘ってくれるものとおもいます。
