■ 再審請求に関する救済お願い書 (1) もどる

(冨山常喜さんが1992年6月8日付、日本弁護士連合会に提出した文書。元は縦書)

拝啓 新緑の候ながら、連日の雷鳴や梅雨めいた空模様等の鬱陶しい毎日が続いておりますが、御会におかせられましては、そうした空模様などとは係りなく、日夜倦むことのない御献身の日々に明け暮れておられることと御拝察申し上げます。

実は私こと、先生には初めて御意を得ます冨山と申すものでございますが、或いは何かの折にでも、茨城県の僻陬に発生致しました「波崎事件」という殺人事件を、お耳の片隅にでもお挟みになられた御記憶がおありのことかと存じますが、私はその犯人と目されまして、全く身に覚えのないまま、最後まで必死の抗弁の容れられず、ついに極刑の判決を受けて、二審でも認められないままそれが確定して現在に至っている次第です。

先生方におかれましては、洵に信じられないことがらかも存じませんが、本件に関する限り、紛れもなくそれは真実のことであり、全く何ら物的証拠があるわけでもなく、ましてや身に覚えのないことで自白の致しよう筈もなく、連日休憩なしの、1日15、6時間にも及ぶ、精神的拷問にも似た苛酷な取り調べにも耐え抜いて、一度としてそれに屈したことはありませんでした。にも関わらず、恣意にでっち上げた<推認><推測><仮定><推断>などどいう、自らの仮想に仮託した状況証拠の寄せ集めだけを以って、強引に死刑の判決を下されてしまったのであります。

勿論直ちに控訴は致しましたものの、高裁におきましてもまた、併合をでっち上げられておりました「殺人未遂」の方だけは、その余りの杜撰さを指摘して、これを無罪とは致しましたものの、殺人事件の方は、いくつかの飛躍や誤認の一部は認めながら、全体を否定する程のものとは認められないとして、これを容認されてしまったのであります。その後即時抗告、異議申し立て等もすべて却下さら、昭和51年4月、最高裁の上告棄却を以って、最終的に死刑が確定、再審代理人の故庄司宏よりの第一次再審請求は却下されて現在第二次を請求中であります。


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