■ チタン検出の意味とは?

原審では胃内容物から検出された「痕跡のチタン」(微量のチタン)を根拠に青酸化合物を薬用カプセルに詰めて飲ませたとした.判決の根拠を以下に示す.

(A)チタンが体内から検出された
(B)酸化チタンはカプセルの乳白色の着色剤として一般的に利用されている
(C)冨山氏は白色を呈するカプセル剤であるトリブラを所持していた

チタンは土中に多量に存在し食物にも含まれているので自然に胃の中に入るという鑑定を再審請求で提出した結果,東京高裁は,

(D)日頃摂取していた野菜類からチタンは体内に入る可能性がある

としながらも,チタンがカプセルに由来することを排除するものではないとして棄却した.なお,IYさん方付近の土壌には国内の土壌の平均含有量よりも多いチタンが含まれ,IYさんは死亡する約三時間前にチタンを含む牛乳を原料とする飲料を飲んでいる.
原審がカプセル所持の根拠としているのは冨山さんの供述(事件当時は所持していないと主張)と内妻IMさん,その娘IAさんの供述に拠っているが,3人の供述から導き出されるカプセル薬は大木製薬の車酔い止め薬トリブラで,当時のトリブラは白色の薬剤が透明なカプセルに充填されていた.透明なカプセルは着色剤としてのチタン化合物を含まない.

(E)所持していたとされるカプセルにチタンは含まれていない

(A)〜(E)からはカプセルを使用したとも使用しなかったとも結論付けることはできない.即ち裁判では根拠無しにカプセルを使用したと判断したことになる.しかし,第二次再審請求の棄却決定通知は,

冨山さんがトリブラを所持していたという証言を引用している判決文には白色のカプセルを利用して殺害したとのみ記載されているので,トリブラが白色であろうが透明であろうが犯行には関係ない(ニュースレター第4号)

旨述べている.


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