■ 保険に関するIN証言 |
足立東,状況証拠(pp.237-244)によればIY宅の保険会社の訪問者関係の事実はおそらく以下のとおり.専門の保険調査員が保険の金額を言い間違えたとは思えないという指摘あり.
1963-**-**: 「TTさんがIYさんに貸金がある」という手紙をTTさんが書いたことにして,T生命勧誘員MKさんがT生命に送付(足立東による取材)
1963-05-19: T生命本社から嘱託された保険協会所属の調査員(当時68歳)がIY宅訪問(警察の捜査)
1963-07-**: T生命MK勧誘員(当時47歳)がIY宅訪問(足立東による取材)
1963-08-26員面調書
「今年の三,四月頃T生命の者だという60歳近い人が来て,IYさん50万入っていんだが,TTさんから手紙来て借財あったから入ったという文面だから見に来た」という来訪者があったがIYさんが留守だったためその夜IYさんに問いただしたところ「俺は払わねが,TTが払っていんだっぺや」という返事だった.「今年の夏にもT生命の50歳くらいの男が来て,この前は失礼なことを言ってすみませんでした,と言って扇子二個と手拭い箱入りを置いていったのです」
1963-08-30員面調書
「不思議に思うのは,箱屋さんが私の夫に多額の保険を掛けていたことであります.私は前にお話ししたように保険会社の方が来たことがありましたから,箱屋さんが掛けているらしいことは知っていましたが,それは少額と思っていました」
1963-11-18検面調書
「TTがIYに保険を掛けていたことは,夫からも聞いたこともなく,今度の事件で初めて知りました」
1964-03-23第一審第四回公判:TTさんがIYさんにT生命の保険を掛けているらしいことを年をとった人が来て知らされた
検察官 | 夫のIYに高額の生命保険が掛けられてあったことは知っているか. |
IN | ある時,保険会社の人が調べに来たことがありました.高額の生命保険を掛けた覚えがないので,その時,額を聞いておきませんでした.しかし,父ちゃんが死んでから六日目になって,T生命保険会社から保険金六百万円,満期金二百万円の保険証券が送られてきましたので,掛けてあることが分かりました. |
裁判長 | T生命保険会社の人が来たのはいつか. |
IN | 三八年五月か六月でした. |
裁判長 | その時の様子を述べられたい. |
IN | その時,年とった人が来て,保険会社から来ました,と言うので,入ったことのあるN生命の人が来たのかと思い,N生命保険会社の人か,と尋ねました.先方は,T(保険会社)から来たのだが,お宅で保険に入ったと聞いたのでうかがってみました,と言いました.不審に思って,何かの間違いでしょう,と言っても,御主人はIYさんですね,と言い,TTから本社に私の家には沢山の借金があるとの手紙が届いていることとか,近所で調べたが,お宅はそのような借金がある家ではないとか話していました.察するに,負債の状況,財産の状況を調べにきたようです.その時,私は保険に入っていない旨一筆認めました. |
裁判長 | 保険料の払い込みをしたことはないか. |
IN | ありません. |
1969-06-02第二審第一三回公判:IYさんの死後届いた保険証券を見てはじめて保険のことを知った
弁護人 | で,保険についてあなたはIYさんが生きているうちに話したことがあるんですか,ないんですか. |
IN | ・・・・・ |
弁護人 | 前の証言を見ると,話したことがないと言ったり,あると言ったり,また何回か変ってるんで,まあどれが正しいのかよう分からんので聞くんですけどもね. |
IN | 保険が嫌いで入らなかったから,入ったとも思っていなかったし. |
弁護人 | いやいや,入っていたと思っていたかいないかじゃなしに,保険のことについてIYさんと話したことがあるのかないのかというふうに聞いているんですがね.おじさんが調べに来たことがあるんでしょう. |
IN | ・・・・・ |
弁護人 | ね,それは覚えてるでしょう. |
IN | ・・・・・ |
弁護人 | どうですか. |
IN | ・・・・・ |
弁護人 | それとも答えたくないのですか. |
IN | 来たのは来たような気もする... |
弁護人 | 前に何回もそのことについて聞かれてるでしょう.その聞かれてからそれほどたったわけでもないから,はっきりと覚えてるんでしょう.気もするなんていうような程度じゃなくてね. |
IN | ・・・・・ |
弁護人 | じゃ,また来たような気がすると言ったから続けて聞きますけれどもね,その来た時にT生命の方から来たんだというようなことで,まあうちでは入っていないということで,おじさんを帰して,そのあとでIYさんにそのことを話したことがあるのかないのか,ということを聞いているんです.どうですか. |
IN | ・・・・・ |
弁護人 | 答えたくないんですね. |
IN | ・・・・・ |
検察官 | 保険に入っておったということは,死んでから分かったんですか. |
IN | うん |
検察官 | 書類が来たんでしょう |
IN | 葬式を終えて二日位と思ったけど,来たのでこんなのに入ってたのかなと思ったんだ. |
検察官 | 生きてる当時,あなたはIYさんが保険に入っているということを本当に知らなかったんですね. |
IN | はあ,そんなの誰が来ても入らなかったから,入ってると思わなかった.N生命も掛けないであったから,そんな入ってるとも思わなかったし,同じ名前の人ももう二人いるから,どこかと間違って来てるのかと,それもはっきり,そんな気もするし,あれしちゃったけれども,間違いだと思った. |