お楽しみはこれからだッ!!
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第32回 “たけやぶやけた”
 掲載誌 霧笛15
 編集/発行 五×嵐耕/五×嵐耕・五×嵐宏子
 発行日 1994/9/30


 みなさま、お久しぶりです。ここしばらくは“霧笛”の原稿をさぼっていたので、ここらでちょっと気合を入れてみることにしました。しかしこの1年ばかりパソコン通信にハマっていたこともあって(笑)、ファンジン用の原稿生産量がやや減少傾向でしたね。通信での発言を総合すると年間に生産してる文章の量自体はたぶんおんなじくらいなんだと思うんだけど(笑)、やってることの質としては今イチ散漫という感があるのは否めない(笑)。毎日延々と雑談してるだけ、というような面もなくはないからね、アレは(笑)。

 ま、それはそれとして、今回のテーマは“たけやぶやけた”ということで……

「女はオレより頭いいやつとしか口きかないことにしたの!」
「なにそれー」
「お前より頭いー女なんかいるかぁ?」
「そんなのシバちゃんしかいないじゃーーん」

 台詞はやぶうち優「純情POWERのトップ!」(FCちゃお『水色時代』6巻に収録)より。学年で成績トップの柴実と2位の修治はいつもへらず口を叩きあうような仲。ある時修治は自分に言い寄ってくる女の子が後を絶たないのにうんざりして右の台詞のような「宣言」をする。それでも柴実とはいつも通りだったんだけど、ある日修治に「女の子らしくない」といわれてショックを受けた柴実は夏休み一ヶ月かけて“女の子らしさ”の勉強に力を入れる。で、すっかりかわいらしくなってしまったまではよかったんだけど成績はてきめんに落ちて今度は修治と口をきけなくなってしまい…。


 …と、まあ、何というか他愛なくもかあいらしい少女マンガ短編なのであった。これで掲載誌が“ちゃお”というのは実にうなずけるものはある(笑)。

 僕も流石に“ちゃお”などという雑誌はふつー守備範囲外なんだけど、本屋さんでの『水色時代』の平積み状況などから判断するにやぶうち優は現在の“ちゃお”の稼ぎ頭であるらしい。もっとも“ちゃお”という雑誌自体同じカテゴリーの“りぼん”“なかよし”と比べると昔っから存在自体が地味な雑誌なので、“ちゃお”で一番なんていってもいわゆるところの“マイナーメジャー”ってやつかなあ(笑)。

 で、問題の(?)『水色時代』だけど、これは主人公の女の子の小学生から中学生にかけての日常の中で起こるさまざまな出来事をこまごまと描き出した日常スケッチ的な作品。つまらないことで悩んだり喜んだり腹を立てたり、そんなエピソードの一つ一つにわかりやすく教訓の一つも盛り込まれていたり(笑)、まあ、もうすぐ30になる男が読むにはかなり気恥ずかしさを伴うマンガではある(笑)。

 そのいささか教条主義的な成長物語という形式から感じられる地味さ、生真面目さは、少コミやサンデーにも共通する小学館という会社のカラーではないかと思う。そういえば高橋亮子に『風いろ日記』(なんていって何人くらいの人がわかるだろうか(笑))という小学生の女の子の普通の日常を淡々と描いた日常スケッチといった風のマンガがあったんだけど、これがやっぱり掲載誌は“ちゃお”だったんだよね。

 そんなこんなで、やぶうち優は単発の短編作品の方がいいと思う。因みにやぶうち優の初期短編の絵柄は明らかにあるマンガ家の影響が強く感じられる(作風はかなり違うけど(笑))。

 結局翌年の夏にハリーとリンダは結婚した。
 わたしは髪を伸ばしはじめ、
 学校でわたしにプロポーズしたばかが二人いた。
  

 と、いう訳で竹本泉である。台詞は「真夏の夜に見る夢」(KCなかよし『ひまわりえのぐ』に収録)より。

 最近は活躍舞台が“なかよし”ではなくてゲームコミック系のマイナー雑誌中心。みょーなことが日常的に起こる世界で主人公の女の子が遭遇するみょーな出来事を描くぽよよんとしたマンガ、という作風は相変わらずである。もっとも最近の作品は“竹本泉のマンガ”として出版社や読者が期待しているものを意識して描いている(笑)、という感がなくもない。“なかよし”の頃の作品の方が自然体というか、肩の力が抜けている感じがする。作風にも今より幅があったように思う。

 と、いう訳で作品はその頃の物からセレクトしてみた。ちょっとボーイッシュなモーリーは13歳の女の子。10以上も年の離れた姉のリンダとその恋人ハリーの成り行きを憧れに近い感情を持って見守っている。引用したのはラストのモノローグ。作中竹本泉らしい変な事件も起こったりはするんだけど、全体に淡々として読後に余韻を残す、好短編ではないかと思う。こーゆー割とふつーな感じの作品にも“みょーなマンガ”とはまた違った竹本泉にしか出せない味というがあって、僕は好きなんだけどね(笑)。今の竹本泉の活躍舞台からはこの手の作品は生まれてきそうにないのがちょっと残念、かな。


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