お楽しみはこれからだッ!!
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第24回 “リクエスト特集”
 掲載誌 糸納豆EXPRESS Vol.10. No.2.(通巻第24号)
 編集/発行 たこいきおし/蛸井潔
 発行日 1992/11/28


 “お楽しみはこれからだッ!!”連載第24回。たった今気づいたんだけど、糸納豆って、今号で通巻24号なのだな。なかなか面白い偶然である。こんな偶然、今後もう二度と起こりっこない。なぜなら、“お楽しみ”は毎回違うファンジンに載ってるから、次に糸納豆に載る時は間違いなく糸納豆の通巻号数を一号以上は上回ることになるからである。

 と、いう記念すべき第24回のテーマは“リクエスト特集”。

「よーし長官!!
 地下へ行くぞ!!」
「地下ァ!?」
「私はこんなコトもあろうかと、密かにこの建物の地下に秘密基地を作っておいたんじゃよ」
「うちは防衛庁なんだから、勝手に作られると困るんだがな──」
「言っちゃったら秘密にならんじゃないかね」
「………」

 墨田区にお住まい(当時)の梶浦正規さん(28(当時))のリクエスト。『岸和田博士の科学的愛情』。コミックスは講談社KCアフタヌーンから好評発売中だ!

 実は東北大SF研には“岸和田博士”なる人物が一人、実在している(笑)。今年(92年)の3月に博士号を取得したばかりの気鋭の地震学者、岸和田6がそれである(笑)。

 と、書いてから気づいたが、岸和田の本名(笑)って“岸和田”じゃなかったのだった。じゃあ“岸和田博士”じゃないじゃねーか(笑)。

 なんだ、つまらん(笑)。


 いや、失礼しました(笑)。何しろ我々はもうかれこれ10年も岸和田のことを「岸和田」「岸和田」と呼び続けてきたもので(笑)、岸和田の本名が田中などというごくありふれた名前であることを、しょっちゅう忘れるのである(笑)。

 中には、岸和田の実家に電話して、「岸和田をお願いします」などと口走ってしまったやつもいる(笑)。

 もともと東北大SF研に“田中”という名字の部員を“田中”と読んではいけない(笑)、などという謎の不文律があったのがいけないのだが、今さらそれを言っても始まらない(笑)。

 じゃ、その“田中”が何故に“岸和田”になってしまったのかってーと、単に実家の住所が“岸和田”だったのね(笑)。

 しかし岸和田はまだいい方で、もう一人の“田中”という男に到っては“19”である(笑)。数字二つだよ(笑)。もはや人間の名前ではないな(笑)。

 ただ、岸和田の場合、なまじ“名前”としての体をなしているために無用の混乱を招くのであって、一概によいともいえない。とはいえ、10年も呼ばれ続けてりゃ、ほとんど本名みたいなもんだよな(笑)。

「今からもう10年も前の話だ……。
 私はこんな事もあろうかと、密かに山本さんちの地下に海底戦艦の秘密基地を作っておいたんじゃよ。
 もちろん山本さんにも秘密でな」
「どーしてあんたはところかまわず秘密基地を作るんだア!?」

 前置きが長くなったけど(笑)、マンガの話に戻ろう。

 これは、マッド・サイエンティストものとしては、近年出色の出来物。リアルで緻密な絵柄と、話のばかばかしさの落差が、何ともいえずオカしい。

 しかし、この作者、トニーたけざきという人の絵を見ていて、思い出した人がいる。高寺彰彦である。

 僕はこの二人の絵って、けっこう似てると思うんだけど、共通点はというと、リアルで緻密であること、と他にもう一つ、細い線でびっしりと描き込まれた結果、画面が全体として“黒っぽい”印象を与える、ということ。

 これと対称的なのはやっぱり大友克洋で、あれだけ描き込まれていながらなぜか画面から受ける印象は“白い”。今や大友克洋なみのマンガ家ってそこら中にごろごろいるんだけど(基礎的デッサン力、という点からみれば、ね)、それでも大友克洋は“ワン・アンド・オンリー”の人だと思う。あれでストーリーが上手ければ天下を取れた(?)に違いない、と思う(笑)。

 しかしいかんせん、大友克洋で一番面白いのって初期の小味な短編群なんだよね。そういえば『岸和田博士』って、大友克洋のコミカルなSF短編とか、昔角川の“バラエティ”に載ってた『饅頭こわい』あたりの感覚に一脈通じるところがなくもないような気がするな。


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