神奈川月記9803

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木曜日の夜どんと衝撃を受けて脇腹がぞくぞくぞくと寒くなり,眉間とこめかみを火矢が貫通する。これは近年お馴染みの風邪の引き方なのでどうと言うこともなく,対感冒体制に入って早く床に着く。
翌朝ぼらけ目が覚めてまだ悪寒と頭痛が残っている。ってもひと晩で決着を着けることができなくなって久しいからこれまたどうと言うこともなく,2年振りに病院に行く気になって熱を計ってみて驚いた。38度8分。わー。
ふだん熱を出さない者は,熱が出ていると知ると弱い。発熱を認識することでげんなり度が弥増すのである。9時ちかくになるまで震えながら待って仕事場に年休の電話を入れ,近所の病院に這って行く。
毎度毎度おもうのであるが,あの病院の待ち時間ね,あの間に点滴うてよおめえよ。前回と同じので良いからよ。カルテあんでしょ。今回の症状に合わなくて容態が悪くなってもそこは自己責任で良いからよ。
100分くらいの点滴を受けて頓服薬を貰って帰り,ひたすら眠る眠る。目が覚めるたび(数時間おき)に汗でぐじょぐじょになったシャツとパンツを穿き替え,電解質飲料をラッパ飲みしてまた眠る眠る。眠れない間はチューバッカのように唸っている。唸ると体力を浪費しそうなものだが,何故か声を上げているほうが楽である。
ただ今回は点滴で症状の改善された感じがなく,金・土・日と3日3晩ずっと38度8分を維持していた。こわー。おれ,熱があると脳細胞がみな煮えて死ぬような気がして怖くなるんよね。ただでさえ1日何万個も死んでいくとか言われとるのに。
月曜日にまた病院に行ってホルモン剤(ステロイド?)を添加した点滴に吸入投薬を追加,夕方までに何とか1度さがって危機を脱した気になった。火曜の朝には36度7分と平熱のちょい上にまで回復する。
しかしてここからの一進一退が長く続いている。何かというと38度ちかくまでひょろひょろと熱が上がり,全身虚脱状態となるのだ。気管支の奥が常に痛かゆい状態で,喋り始めに咳こむ。高熱と悪寒に支配されたのとは別に,咳と下痢の感冒を改めて引きなおしたのかなあ。
にしてもちと長すぎる。最初の発熱からたばこを吸わなくなっているから断ニコ・排タールの擾乱期ではあるのだが,もう1箇月になんなんとす。それでいろいろと厭な想像も浮かんでしまうのであった。これはもう頭蓋の中に蝦蟇蛙が潜み・腹膜の間に幼体エイリアンが産み付けられているに相違ないのだ。
話は前後するのだけれど,おれ定期検診の結果で精密検査を受けろと言われてたのね。17歳のころ自然気胸をやってるからレントゲンを撮れば必ず陰が写り,常に再検やら精検には引っ掛かる。そんなんでいつもシカトゥしてたんだけど,だんだん陰が大きくなってるみたいだからCT検査を受けておきなさいと膝詰めで諭されて,そういう手筈になってたん。予備検査とCT走査の間が2週間ちかく開いていて,そこにこのインフルエンザが割り込んできたのである。
CTを受けるのは代代木にある大病院でインフルエンザの治療は近所の中病院だ。おれも気を遣うよ。大病院の予備検査で心電図やら胸部レントゲンやら採血やらしたのは感冒にやられる前でありCTは冒された後なのである。安易に連結して妙な診断を下されては適わんぞ。
それはさて措きCTスキャンは初めて受ける。おれは超音波のエコーで体組織の画像を描き出す手法のことと思っていたのだが,コンピュータ断層撮影(Computer Tomography)の略であるから超音波に限らずX線や核磁気共鳴による走査法も含むようである。でも核磁気のはNMRとか専用の略語で呼ぶよなあ。どうも一般的にはレントゲンをいろんな角度から撮りまくって合成するのを指すようで,それなら被曝量はシャレにならんくらいであるだろい。
検査前の絶食とか薬剤注入とかのイニシエイションはなく,上半身も上着を脱ぐだけで裸にならなくてよく,単に寝転がって両手を万歳していればタイムトンネルふうのドーナツ型装置へ寝台ごと挿入され,撮影されまくるだけだった。カメラはドーナツの内周をくりんくりん周回していて,そこへ撮りたい部位を合わせるべく寝台のほうがコマ送り的に前後する仕掛けである。完全に無痛で,止めろぅ・ジョッカァといった雰囲気は微塵もない。シャターの切れるような音がするからそれを数えるに,全部で100枚は撮ったと思う。
で,結局は肺炎ということらしい。それも結核性が疑われている。XレイやCTスキャンの画像はけっこう深刻なものがあるのであるが,血液検査の結果はそんなに悪くない。喀痰検査で白黒を付けるから痰を出せ痰を出せと責められるのであるが,皮肉なもので求められると出ないもんだね。空咳ばかりである。
静かにしていられるうちは良いのだ。気分も悪くない。しかし何か引き金になって咳込みのハンマが落ちるともうダメである。げほげほげほげほげほげほげほ全呼吸が咳に費やされ肺と背中に激痛が走り体温が急上昇。やっと収まったと思えば頭痛が後追いで襲ってくる。腹筋と背筋が急激な運動で痛い。
わしゃどうしたら良いのだ。
今回ちょっとターニング_ポイントかなという気がしている。一時仕事を離れて静養と充電に努めるべきなのかもしれない。仕事の区切りとしては最悪に近いタイミングなのであるが,仕事場でげほげほ言われたら周りの方方も気分わるかろう。

1998年3月7日


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風邪の引き方
 矢野顕子。

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チューバッカ
 『STAR WARS』でハン=ソロの相方だった類人猿? 星間旅行をするような種族には見えないのだが。

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頭蓋の中に蝦蟇蛙が潜み
 タイトル忘れちゃったんだけど,日野日出志のマンガにこういうのがあったん。あああ思い出しちまった。おぞぞぞ。

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17歳のころ
 ジャニス_イアンでしたか。

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止めろぅ・ジョッカァ
 何も『ノリダー』のほうにしなくても本家『ライダー』に間に合っていたのであるが,おれ観なかったのだ。ノリダーは何本かビデオに残っているぞ。

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written by nii. n
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