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神奈川月記9609

冠省
まったくの素人として入社して,爾来ホスト マシン環境でCOBOLによるプログラム開発を主体にやってきた。つまり今いちばん余ってる奴。
もうあんまおもんないなあと思っていたら,やっとPCの絡んだお仕事にありついた。やでうでしやと喜ぶもおれは業務仕様を考えるティームに回され,いちばん楽しいプログラミングをやらせてもらえない。あんまおもんないなあと思っていてもしかたがない,開発言語は知っているほうが良いに決まっているので──そもSEだの蜂の頭だのが(ソフトウェアの開発言語において)モノリンガルやバイリンガルでは甚だ心許ないのである──宛われたノウトPC(i486の66MHzにRAM16MB・MS DOS 5.0(泣)+Windows3.1)にVisualBasicの2.0(何とまあ)を入れてもらい,ぼちぼち弄くるようになった。サーヴァが解ればもっと良いが,そっちは精鋭ティームが完全に掌握して黒く塗りつぶしてしまっている。まずはクライアント側の勉強だね,自前のPCにもきっと役立つし。
Windows以前,UNIXがPCをも制するのではないかと言われていたころ社内教育の一環でC言語入門の講座を受けてみたことがある。ひと講座10万円ちかいような社用カリキュラマシーンであるが,当時はCOBOL頭のこんこんちき(まぁ,今も)で,てんで歯が立たなかった。
むろん単体のif文は解る・printfも解る・ループのさせ方も解る。さて関数なのだ・引数なのだ・ポインタなのだと進んだところではっとたじろぎ,説明を聞いてその場では納得するのだけれど,遣おうとして全然わかっていないことに気づく。CALLなのかLINKAGEなのか(m:n)なのかといちいち母語(COBOL)に翻訳するようでは異国の心は理解できん。暗黙の宣言て何? どうして関数を呼ぶときとその関数で操作するときとで引数の名前が違うの。main()からして関数とは一体どういうことなの。
結局このときは挫折した。数年たつ内に大ホスト主義も左前がかってき,いよいよ不安が募る。COBOLのすっかり廃れてしまうことはあり得ないんだけど,仕事を選べなくなるのが怖い。脱ホスト系にちょいとでも道を付けておかないと──それが洋洋たる前途となるか逃走経路となるかはさて措き──口に糊する手段を失いかねない。
それでCについてはまた独習を試みて前回よりは理解した(気になった)ものの,何しろ仕事で遣わないためたちまち錆びる。そうこうしている内にやっと仕事場でもPCを使うようになってきた。初めて関数の意味が解ったのはEXCELのVBAマクロでのことである。
今の職場には定型文書はWORDかEXCELで作成されていることという妙な内規がある。どっちもくそ重くて参るがEXCELのほうはそのポテンシャルを慮るとまだ許せる。WORDはきっぱり無駄に重い。社内メールに添付されたのがWORD文書だとそれだけでげんなりする。開けてみてしょーもないテキストならコロしたくなる。メモ帳で書け,莫迦。おれどうもWORDと一太郎は虫が好かんな。
専ら(WORDと比べるなら)EXCELを偏重していてVBAに当たりが付き,VisualBasic(以下V.B.)でもそこそこ好きなことができるようになってきた。COBOLからCに臨むよりもVBAないしV.B.に頭を切り替えるほうが障壁が低いようである。尤もSQLを知らないからスタンダロンの日曜プログラマレヴェルだけどね。
VBAでやっていたようなこと(ヘルプファイル(*.rtf)を解析してトピック管理表に自動展開する)をV.B.に書き直してやらせてみたら頗る速かったので感激,したのも束の間で,デイタ量が増すにつれてこんなことで良いのか諸君と泣きを入れる速度になってきた。あまりエレガントなコーディングでないことは認めよう。でもそう冗長なロジックでもないと思うがなあ。
とっくに自家用の開発言語が欲しくなっており,せっかくV.B.覚えたんだから V.B.にしとくかなあでも仕事と同じ言語なのはつまらんなあと迷っていたのが吹っ切れた。V.B.止め止め。ほぼ唯一の対抗馬BorlandはDelphiにしよう,これならウチで使っているRDBのPARADOXを直接操作できるしね。
Delphiはお里がC++(Cとは別物)らしいから同じくC++似のJAVAを習得しやすいかもしれない(これ,おれの闇雲な皮算用)。次期OS/2のJAVA開発環境が日本語化されてると良いなあ。
V.B.からDelphiへの移行は比較的楽だ。WindowsのGUIアプリを作るという目的が同じなんだから,まぁ個個のコマンドやオブジェクトの記述ルールがちょこちょこ違うくらいである。ただDelphiのほうは文末に';'が必須だったり関数の記述順序が決まっていたり(原則として呼び出す側より前に置く)とプログラマ(コーダ)への負担が大きい。コーディング用のエディタもV.B.のが至れり盡くせリといった感じでずぼらができる。
翻って関数は後発のDelphiがずっと豊富で,例えばフルパスからファイル名だけ抜きだす・拡張子を変更するといったルーティンにさえ専用の一発関数が用意されている。この辺しらずにV.B.的にfor文で回して1文字チェックしてなんてやってて,後から別件のヘルプを辿るうちに偶然みつけて思い切りコケた。ファイル検索ダイアログだの月間カレンダだのの七面倒くさいサブウィンドウも部品化されている。ロウドモジュールの実行速度は確実にV.B. より速い。Borlandが必死に,こっちのみーずはあーまいぞと言っているようでちょっと笑ってしまう。
正直なところおれにとってはDelphiのほうが習得しにくい。コンパイル時の意味不明(おれがまだ理解していないから)な文法エラを潰せないで,デバグを始めることすら儘ならないことがある。先の関数の記述順序なども気が付くのにずいぶん日を費やした。こうしたブレイクスルーをより多く経なければならないようである。
今現在はDLLの呼び出しで足踏み状態が続いている。有り体に言えばunlha.dll が一般保護違反を起こしてしまうのだ。DLLに制御の渡っているのは確かだが,文字列の返しがうまく行かないらしい。
そりゃマニュアルを一から十まできちんと読めば良いんだろうけれど,そんなことができる奴にろくなプログラムなど組めやしない。プログラマは唯我独尊・とにかく動かせ後でごまかせというタイプでないと大成しないのだ。

不一

1996年9月8日


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やでうでしや
 説明不要と思うが谷岡ヤスジ(のキャラの名台詞)。

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黒く塗りつぶして
 ブラックボクス化していると言いたいのであって,"Paint It Black"のもじりではない。

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カリキュラマシーン
 日テレが『おはよう!こどもショー』に続けてやっていた幼児教育番組,の仮面を被ったギャグラッシュ番組。『ゲバゲバ90分』で作った『Sesami Street』である。

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エレガントな
 無駄なく解りやすくコンパクトで視覚的にも美しいロジック(ソース)をこう形容するようです。

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こっちのみーずはあーまいぞ
 こういうのって作詞者わからないっす。題名も判らない。蛍の歌です。

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足踏み状態が続いている
 まだ続いてたりしち。と言うか勉強してない。(97/03/11記)

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唯我独尊
 説明不要と思うがお釈迦さま(の名台詞)。

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written by nii. n