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神奈川月記9608

冠省
回転計が無いと慣らし運転をやりにくい。マニュアルにはスロットル開度を半分以下にしろなどと謳ってあるが,んなもん走っててどこで半分か判るかい。平地6速で60km/hが目安ですてな具合に書けちうねん,もう70km/h超で走ってもうとるけど。
新ジェベはウエット サンプDOHCにオイル クーラまで奢られ,スペックにある2.8kg-mの最大トルクは250カタナのそれより大きい。エンジンは文字どおりゴロゴロ言いながら回っており,同じ油冷でもドライサンプだった旧ジェベルのルタタタという感じとは随分ちがう。
油冷とは言い条ほとんど空冷であって,エンジン ユニットから発散さるる莫大な熱量はシベリアにまで春を呼びそうである。オイルクーラとエキパイの回りこむ右側がより酷く,腕や頬にまで熱波が感ぜられる。綿パンの裾がエキパイに触れていると穴が開く(綿パンに)。
アイドリングが割と不安定で,はしゃいだり苦しげだったり信号待ちの度に調子を変える(ことがある)。暖気の進むほどアイドリングが昂進するのは得心いくけれど,その外にちと躁鬱の気があるようだ。昔昔バリコンチューナの同調がだんだんずれてきていらいらハラハラ(これ録音中)したのにちょいと似ている。
そのせいかシートに跨って右手を素直に下ろした所に調整ネジが出ており,グロウヴをしたままの指でちょいちょい弄れるようになっている。このネジはキャブの吸気量を紋緩するものではなくて,スロットルワイヤの回す滑車(これがアクセルを開閉する)の初期位置を決める突っ支い棒そのものだ。調整の効果が明白に敏感に顕われるので,大して煩を感じない。
ところでアイドリング調整についてはマニュアルに一切記述が無い。コテツでも前のジェベ公でもコダチでもそうだったから,近年のメイカはユーザに何もしてもらいたくないと見える。しかしこうした微調整の必要な場面はきっと来るものだし,メンテナンスフリーのバッテリを積んだから蒸留水を足すときの注意書きが要らなくなったなどというのとは性質が異なろう。説明する手間を惜しんではいけない。さすがにチョークの操作法は載っていたが,この辺りのほうが自動化できそうだよなあ。
夜間走行で感心したのはヘッドライトの明るさである。60/55Wのハロゲン球はもう珍しくないのけれど,200mmのレンズ径は4輪に遜色ない光量を吐き出している。この大光量ライトと大容量タンクとが実にここ数年のオフトレイル車の売りなのだが,それにしても明るい。プラレンズなのによくとろけてしまわないものだ。液晶ディジタルに変わった計器もナトリウム燈色のバックライトが光っていて──昼間は気が付かなかった──非常に見やすかった。
5・6年前からだろう,バイク メイカは各社ともヘッドライトを消せない造り込みを宗としている。昨今たいていのバイクが昼でもライトを点けているのは挑発でも安全意識の高まりでもなくて──とまで言うこたないか──消そうにもオン/オフするスイッチが無いのである。イグニションキイを回したらもうエンジンを掛ける前から光っているのだ。何でも来年の秋口からは常時点灯式のバイクしか製造できないよう法改訂されるそうで,自動車もそのうち常時点灯が義務づけられるのかもしれない。そうなるとバッテリ上がりを恐れて,せっかく芽を吹きかけたアイドリングストップ運動が尻すぼみになる恐れがある。
常時点燈はユーザに頗る評判が悪い。おれも以前は気になっていたのだが,何が気になっていたのかつらつら考えるにライトのオン/オフを選べないのがおもしろくなかっただけな気がする。選べるのであればきっと点け放していたに相違無く,今となってはもうどうでも良い。パーツメイカがすかさず売り出した消燈スイッチや減光回路キットの類も随分ほしかったが──欲しかったんかい──決定打が無くて,買わずに済んだ。ふん,純正ジェネレイタとて強化されているはずだ,ライトを点けずに余った電力がどこに行くかと思うと感電しそうだぞ。
300km走ったところで燃費を計ってみた。燃料計が無いので給油のタイミングは走行距離で取る外はない。因みに無給油で300km実走行できるバイクは少ないのよん。
普通は走っててガス欠したらば燃料コックを切り替えて──ちょっと慣れれば走行中にできる──予備タンクに残ったのでガソリンスタンドへ向かうんだけど,あのガボガボンとくる感じが厭で,端から予備モウドで勝負している(誰とだ)。完欠を回避するのに平均燃費は何が何でも知っておかねばならない。
今回の結果は28.3km/l,慣らしとは言え大都会渋滞モウドでこの数字はすばらしい。コテツのちょうど倍ではないか。17lタンクをまるまる遣えば航続距離は480kmに及ぶ。慣らしが終わって多少無駄遣いをするようになっても1000kmに3回の給油で良さそうである。

不一

1996年8月9日


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新ジェベ・250カタナ・旧ジェベル
 いずれもSUZUKIのバイク。順にDJEBEL250 XC・GSX250S KATANA・DJEBEL250。つくづくSUZUKIはまじめに良いバイクを造ると思うよ。

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コテツでも前のジェベ公でもコダチでも
 XCの前に乗っていたGSX400S KATANAと,更にその前に乗っていたDJEBEL250と,更に更にその前に乗っていたGSX250S KATANAの名前。

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written by nii. n