神奈川月記9301

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冠省
ヤマさんにも燃料計が付いておらず,給油のタイミングに気を遣う必要がある。
燃料計どころか回転計(タコ)も無い。油冷エンジンの癖に油量計は疎か警告燈すら無い。サンプの表示窓さえ無い。計器としては中央に距離計・積算計あい乗りの速度計(160km/hまで)と,その右にニュートラル・ハイ_ビーム・ターン_シグナルのパイロット_ランプがみっつ,たったこれだけ。
Djebel計器ガソリン切れはともかく──これは考えて見れば致命的とは言い難い──オイルが足りないとなるとこれは一大事だ。何とかして油量は知る必要がある。と,サンプ_キャップの内側に長い棒ゲイジが生えていた。FとLの刻印の間が濡れていたらOKという恐ろしく古典的な測量スタイルなのだった。
ハンドル回りの重量増を嫌ってオフ車はこういう簡素さを宗とするのだが,オン車出身の僕には病的と映る。取り分けジェベルなど大型ライトやセルスイッチを載せているのだ,今さらメイタのひとつやふたつ節約したってしようがなかろ。
どうせDRのヴァリエイション_モデルということで部品の追加を減らしたかったのだろう。それでも同じDR改のエンジンを積むグースがタコを持っているんだから無理な相談ではない。またツアラとして売り出しといて燃料計を付けないのは不誠実である。
モータサイクルももっとオプション_パーツに拠るクラス分けを考えてしかるべきだ。キック_スタータでも何でも付けられる物は全て用意してくれ。

反面非常に贅沢をしているのはエキゾースト_パイプとRスウィング_アームである。
エキパイはステンレスで,赤錆び錆びからやっと解放される。これはエポポ以来の僕の夢だった。でもどういう訳か「水道管ゲーム」の銅管と同じ色である,壊れないんだから良いけどさ。
スウィング_アームはアルミ,しかし只者でないのは溶接でなく締結であるという点だ。溶接だとどうしても機体ごとにばらつきが出るので接着剤とリベットでかしめてある。
接着剤と聞いて,その内ぽろっと行きそうだなと思ったあなたはお莫迦さん,これは航空機の接合テクである。航空技術と聞いて,大○航空なんかよく隔壁とか外装が剥がれたりするよなあと思ったあなたは心配症。気にするな。

摺動部分や回転部分を持つ機械には慣らし運転が必要である,とは常識でありマニュアルにもそう謳われている。本当のところどうなのかしらんねえ,みんなやってんのかしら。
エポポにはきっちり施しておいたのに,2万kmくらいで酷く調子が悪くなった。コガタナは8000kmで人に譲ってしまい消息不明,コダチも3200kmでドナドナである。僕は大型メカを潰れるまで使ったことの無い男,効果の程はよく判らん。最近は工場出荷時に或る程度やってあるから要らんのだてな説もある。
エポポ・コガタナ・コダチいずれもタコを装備しており,毎分6000回転を超えるなとか具体的な数字が挙げてあって慣らしをやり易かった。ところがヤマさんのマニュアルはこうだ。

お車を長持ちさせるため最初の1000km走行するまでは,スロットル開度は1/2以下で走行してください。

何と言う好い加減な文句でしょうか。日本語としてなってないのはこのさい問わぬにしても,スロットル開度を半分以下にせよとはどういうことだ,どこで半分なんだか全開にせんと判らんではないか。
慣らしは諦めることにした。気に掛けていても車の流れに乗る為にアクセルをドカンと開ける局面はままある。まぁしゃかりきになって走るバイクじゃないんで──あんまりスピード出す気にならんのよね──6速80km/h以下なら問題ないんじゃないんじゃないかなあ。

もう2点苦情がある。コダチでもそうだったんでスズキの近年の方針らしいけれど,常時点灯方式とインタロック装置だ。
何とヘッドライトのON/OFFスイッチが無いのである。勿論ハイとロウの切り替えはできるが,イグニションオンで即ピカ,エンジンを掛けなくても点灯する。
言うまでもなく4輪からの被視認性を高める為の措置で非常に有効なのだが,これくらい個人の意思に任せろよな。コガタナにはハイビーム・ロウビームの他に市街地走行用の豆球もあってそれぞれのスイッチが付いてたじゃないか。
それにどうしてもライトを消したい場面がある。信号待ち・踏切待ちで外に車の居る時とか夜中に知人のアパートを訪ねて敷地内を徐行する時とかね。特にジェベ公は車高があるのでドライヴァの目線やバックミラの高さと一致しやすい。さぞ眩しかろうと気を揉むのだ。
そう言えば最近めだつ4輪の増設ストップライト,発光ダイオードかな,あれ眩しいね。光量を落としてもらいたい。それから無意味なフォグランプ,はっきり迷惑だ,止めなさい。
インタロックと言うのはサイドスタンドのしまい忘れを防止する装置だ。ニュートラルでエンジン始動して,スタンドを出しっぱなしでギアをロウに入れるとプラグの電源カット,エンストしてしまうのである。
これはこれでまあ良いんだけど,問題なのは通常走行中スタンドに触わっても問答無用にエンストする点にある。取り分けコダチはサイドスタンドがシフト_レヴァのすぐ前にあって,ギアチェインジの度に蹴飛ばしそうで怖かった。
実際1度だけ爪先が触れて作動させたことがある。幸い徐行中で1速に落とすところだったから大事に至らなかったが,ぞっとした。おっかないから廃止してくれ。

安全対策として実用新案・特許申請中といった感じだが,どうも机上の空案の域を出てないね。外にやることがあるでしょ。
僕ならまず第一に盗難防止の施錠を増やすかせめて市販ワイヤ錠の収納場所を設ける。石油会社や他のメイカと結託してガソリン関係のクレジット_カードを作る。ヘルメット_ホルダを必ず2基使いやすい場所に置く。ぴったりフィットの専用シートカヴァをオプションで付ける。
どうだい,このアイディア,スズキで買わねえか。

反対に取り去るつもりだったナックル_ガードに救われた話も書いとこう。
ガードというだけあってハンドルの終端より食み出しており,擦り抜けのさい4輪のドア_ミラに接触しそうで──そうそう,ドア_ミラもまた禁止しろよな。邪魔でしようがないぜ──忌ま忌ましい部品である。先般歩道から飛び出していた自転車のハンドルがダカーンと音を立ててぶつかり,凄くびっくりした。わお,もし無防備だったらクラッチ_レヴァに押されて指を折るかハンドルを取られて転倒するか,厳しい事故を誘発したかもしれない。
なるほどねえ,都会でも有効なケイスがあるのだ,左側だけだけど。

あとジェベ公を弄った点と言うと,ホーンが鳴らないようにした(やくざのインネン防止)のとチェン_ケイスの不良部分をカットした(事もあろうにチェンと接触していた)のと,そのくらいかな。

年明け早早が1箇月点検の時期だ。走行距離600kmとはコダチの3倍以上のペイスである。
まぁコダチを購った一昨年の秋は天候が頗る悪かった。土日と言うと必ず雨であり,2週間まったく稼働しないのも珍らでなかった。それからコダチのお陰で乗り始めから2輪の操縦に慣れているという事情もあるね。
しかし何よりジェベ公の乗り心地の良さが与って大きい。勿論ロイヤル_サルーンの乗り心地の良さとは違うよ,お立ち会い。

ジェベ公を入手してから雑誌に広告が載るようになったのだが,そのキャッチ_コピイを見て,はーんと思った。「大人にはジェベルがある。」だって。
皆さん,僕は大人になったんですよ。

不一

1993年1月3日


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ヤマさん
 おれのDJEBEL250に付けた名前だったんだけどヤマさんと言うほどの年輪を感じさせる訳じゃないんで長続きせず,単に「ジェベ公」と呼ぶことが多かった。別にズベ公の洒落ではない,第一ズベ公に乗ったら洒落にならない。

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エポポ・コガタナ・コダチ
 ジェベ公以前のおれの単車の名前。順にPV50 EPO・GSX250E・GSX250S KATANA。

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written by nii.n