神奈川月記9203

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冠省
VCR2台にBS・CLD・PCM・ワウワウのデコーダ,Cカセやチューナは疎かADプレイヤまで生き残っており,機器群の裏はスティングも安心のコード_ジャングルが極相を成している。こうした状況は音にも絵にも悪影響を及ぼさないでは済まされない。
理想を言へば全ての接続コードを引っこ抜きアンプに繋がるのは常に1台,CDを聴く時はCDプレイヤ・ヴィディオを観る時はVCRだけを換装して使ふべきだけれども──そうする人は実在する──スイッチひとつで全フォーマットを切り換へようと思へば常に相互リンクをさせておく必要がある。

お手製のケイブルやスピーカ・ラック等を見て,僕をまめで工作好きと思ふ者があるようだ。工作好きはともかくまめと言ふのは当たらない。ちょっと付き合へば判るが僕は強力にものぐさで縦の物を横にもせず,何かってえと面倒臭いと言って逃げる。後の不精を図って一とき小細工を弄する事はあらうとも,恒常的に手間を掛けるのは我慢ならない質なのだ。

SHBベータ2100番を中心に全てのAV機器は最短距離でリンクしているが,2100番からEDベータ7000番へのダビングルートだけはやり繰りが付かないで絶たれている。必要とあらばTVへ向かふラインアウトを接続し直して対応するのだけれど,頻度は低くとも確実に遣ふ経路なのでできるものならワンタッチ化したい。
早い話が入出力端子が増えれば良ろしい。ついてはアンプの交換か追加もしくはセレクタの挿入を講ずる。オウディオ_アンプならどれも端子の数は同じであり現用A-10との交換はナンセンスだ。タンデム稼働でどちらかのアンプ回路を完全に遊ばせるのも無慈悲だし知恵が無いと云ふものである。
今回はヴィジュアル系が問題なのでベストは所謂AVプリアンプ・次いでAVセレクタと云った選択になる。いづれにせよこれでもかと云ふほどラインがあり,リアパネルは端子で埋め盡くされている。ここでAVアンプはドルサラを始め複雑怪奇なDSP回路満載で僕の趣味ぢゃあない。消去法でAVセレクタが残った残った花筏。

セレクタにも電源のあるの(アクティヴ)と無いの(パッシヴ)とがあるけれど,ゲインの保持を慮ってアクティヴ_タイプを採るとしよう。
さてセレクタにはデリケイトな映像信号を全く減衰させる事なく伝送すると云ふ命題がある。決め手は扱へる映像周波数帯域なのだが,現在民生最高峰であるEDベータ,取りも直さず僕がそのユーザであってEDの映像記録帯域9.3MHzは当然凌駕していなければならない。従って最低でも10MHzの保証は必須である。

トレンドたるAVアンプには各社が物量を投入しているのに反してセレクタでまともな物を作っているのは2社しか無い。ソニービクターである。僕は決してファンではないけれど,この一騎打ちならソニーに加担する。これはAV機メイカと家電品メイカとの闘ひに還元できるからだ。

と,買ふ気になったまでは良かったが,実のところ金が無い。ここで一句。

残業の水増しで消す火の車     仁哉

でも残業もしてないんだな,このごろ仕事がおもしろくなくてよ。
先のボーナスは半分以上のこる筈だったのに,否,年明けまでは予定通りだった,それからコンタクト・ワインダ・カメラ・礼服てな具合に,するすると数万円づつ蒸発して費えたのである。こりゃ参ったね。
いつもなら何だかんだ言ひながらも買ひ込んで月記のネタにするのだけれど,今回はどうも気乗りがしない。セレクタは便利と引き換へに画質と音質の劣化を確実にもたらすからだ。またラックも追加しなければならない。ピンコードも倍増である。ことVAに関しては金を掛けておいて質を落とすなどコンゴ動乱である。そこへこの資金難だ。きのう預金残高を見てだいぶん気持ちが萎えてしまった。

と云ふ訳で珍しく計画撤回である。早くとも夏のボーナスの時期までは延期する。神奈川月記2回に及んでおだを上げながらこの体たらく,いやあ,全く金の無いのは首の無いのと同じだねえ。


コダチは順調に走行累算距離を伸ばし,と言ふのは嘘で,納車後半年を経て漸く1000kmを突破した。馴らしを終え,ちょうど法定点検に出す時期を迎へる。メイカの腹にある標準的な使用ペイスの6分の1に当たる訳だ。
購入店から事前に勧告のはがきを貰っていたので,今日(2月29日)行って来た。整備手帳を見ても大した項目は載っていないから小一時間で終はると踏んだのに車輛あずかりである。1箇月点検が即日だったからこれは意外だった。
断わっておくが別にコダチが悲惨な有り様で修理に時間が掛かると云ふ事ではない。慇懃な整備の兄ちゃんは車体を見る前にそう告げたのだ。それほど入念にやるのか単に忙しかっただけのかは定かでない。ミション_オイルの交換と,リアサスを1段かたくしてもらふのとを一所に頼んでおいた。ついでに洗車してくれたらこんなありがたい事は無い。

カタナは91年5月の発売開始以来ずっと月間販売台数1位(250ccクラス)を守り続けている。と聞きはするものの日頃とんと見掛けない。初代シティみたいに街に溢れ返ると思っていただけに,残念なような嬉しいような。この春からは予想通り400ccも登場する。いづれ750ccも出るに違ひ無い。

400カタナは250カタナの成功を受けて,オリジナル1100カタナの更なる復元を目指している。具体的に言ふと星形キャスト_ウィールと左右2本出しマフラ(2in1タイプ×2)の再現だ。しかしその2点は僕がカタナでずばり気に入らなかった部分である。
レプリカとしての完成度は高くとも,ただ古めかしいばかりで現代的な魅力に乏しい。250では3本中空スポウクのキャストと4in1タイプの集合管に改められており,どう見てもこっちの方が恰好良いのだ。本質的に優れたルックスの持ち主に10年前の服を引っ張り出して与へる意義や如何に。
250カタナもカラーリングのヴァリエイションで赤/銀のが追加になった。タンクとカウルの上半分が赤・下半分が銀のいはゆるツートンであり,これも1100カタナを踏襲している。最も人気のあった彩色だそうだが,カタナはやっぱり銀メタの単色がふさわしい。筋肉質としか言ひようの無い体驅に妙な化粧は不要である。

さて会社をサボってコダチを引き取り,道すがらの試乗である。一応ならしは終はったので1万回転を超えてもへっちゃらだ。4輪では考へられないような数字だが,250カタナの最高出力は1万3000回転でマークされオウヴァ_レヴは1万7000回転からと云ふ超高回転型のエンジンなので何て事は無い。きつくしたリアサスと補充されたタイヤの空気圧とで随分かちっとした走りになった。
点検費用と交換したオイル代とで1万500円の出費である。自分でメンテしない(できない)のだから幾ら掛かろうともいさ仕方が無い。本当はオイル交換やチェン張りくらいはやりたい(できる)のだけれど,作業場所が無いんだよね。


昨年末に私文の仮名遣ひを見直し,歴史的仮名遣ひへの固執を解く事に決めた。ところが書いていてどうにも気持ちが悪いのである,現代仮名遣ひは。
そこで落ち着かなくて堪らない部分すなわち活用語尾に限って歴史的仮名遣ひを採らうと思ふ。従って日本語表記では,

  1. 原則として漢字仮名まじり文を用いる。
  2. 基本的に現代仮名遣ひに従ふ。ただし以下の場合は歴史的仮名遣ひを部分的に採用する。
    1. 活用語の送り仮名:言はない・言ひます・言ふ時・言へば・言へ・言はう
    2. 語源を特に意識したい場合:そうじゃない→そうぢゃない(そうデハない)・いわゆる→いはゆる(謂フ+ユル;ユルはレルの雅語)
    3. 字面が特に厭らしい場合:いずれ→いづれ

てな具合にやって行くつもりだ。

まぁ暫定処置と云ふ事で,c.b.a.の順に追ひ追ひ箍も緩まう。表記の揺れは散見されるだらうが,あまり突っ込まずに見守ってちょうだい。細かいとこはどうでもええねん,だいたい合ふとりゃ。

不一

1992年3月7日


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スティングも安心
 当時スティングは熱帯ジャングルを守れみたいなスロウガンを上げていた。まぁその口で,おれゴルフ好きと言って失笑を買っていたのであるが。

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written by nii.n