大田部足人 おおたべのたりひと 生没年未詳

下総国千葉郡の人。天平勝宝七歳(755)二月、防人として筑紫に派遣される。

 

千葉の野の児手柏(このてかしは)のほほまれどあやに(かな)しみ置きて高来ぬ(万20-4387)

【通釈】千葉の野の児手柏のように蕾のままであるが、妙なほど可愛らしくてならないので、妻問いもせずそのまま故郷に残して、俺は遠くやって来てしまったよ。

【語釈】◇千葉(ちば) 下総国千葉郡。今の千葉県千葉市あたり。◇ほほまれど 「ふふまれど」の東国訛り。蕾のままであるが、の意。故郷に残してきた恋人の初々しい様を言うか。◇高来(たかき) 原文は「他加枳奴」、訓義は諸説ある。ここでは「たかきぬとは、とほくきぬといふなり」の仙覚説を採った。誤字説を取り「発ち来ぬ」と訓む本などもある。


更新日:平成15年03月21日
最終更新日:平成15年03月21日