石見権守橘葛直の娘。古今集に一首のみ。
女ともだちと物語して、別れて後に、つかはしける
あかざりし袖の中にや
【通釈】心を残して来たあなたの袖の中に入ってしまったのでしょうか。私の魂が自分の身体にない気がします。
【補記】古今集巻十九雑歌下。女友達と会話をして、別れた後に贈ったという歌。放心状態を伝え、楽しかったお喋りを名残惜しむ気持を詠む。
【他出】定家八代抄
【主な派生歌】
たましひをつれなき袖にとどめおきてわが心からまどはるるかな(源氏物語・夕霧)
時のまの袖のなかにもまきるやとかよふ心に身をたくへはや(藤原定家)
あかざりし霞の衣たちこめて袖のなかなる花のおもかげ(〃)
とどめおきし袖の中にや玉くしげ二見の浦は夢もむすばず(〃)
うらめしや今日しもかふる衣手に入りにし玉の道まどふらん(〃)
こと草やなきここちする花薄袖のうちなる野べの秋風(三条西実隆)
更新日:平成15年03月21日
最終更新日:平成22年10月20日