氷上大刀自 ひかみのおおとじ 〜天武十一(682)

日本書紀には「氷上娘」「氷上夫人」として見える。万葉集巻20-4479に「藤原夫人歌一首」があり、「浄御原宮御宇天皇之夫人也 字曰氷上大刀自也」と注がある。藤原鎌足の子。大原大刀自の姉。天武天皇の夫人。但馬皇女の母。

藤原夫人の歌一首 浄御原宮御宇天皇之夫人也 字曰氷上大刀自也

朝夕(あさよひ)()のみし泣けば焼き太刀の利心(とごころ)(あれ)は思ひかねつも(万20-4479)

【通釈】朝晩、声を放って泣いてばかりいるので、とても気丈な思いでなどいられません。

【補記】題詞の「藤原夫人」は、脚注にあるように天武天皇の夫人氷上大刀自。「焼き大刀」は、焼き鍛えた大刀。「焼き大刀の」で、鋭利の意の「利(と)」に掛かる枕詞。「利心」は、鋭い心、しっかりした心。天武天皇挽歌。


更新日:平成15年03月21日
最終更新日:平成15年03月21日