碁師 ごし 生没年未詳

伝不詳。「碁師」の名は、碁の名人だったことによる異名とも言い、また法師の名を一字取ったものとも言う。

碁師の歌二首

大葉山(おほはやま)霞たなびきさ夜更けて吾が舟はてむ泊知らずも(万9-1732)

【通釈】大葉山に霞がたなびいて空を隠し、すっかり夜も更けてしまって、私の舟をどこへ泊めればいいのか、行く先が知れないことだ。

【補記】「大葉山」は万葉集原文「祖母山」。巻七(1224)に同じ歌が作者不明記で載っているが、表記は「大葉山」とある。『歌枕名寄』にも「大葉山」と見え、紀伊国の山とする。ただし滋賀県内の山とする説もある。

(しの)ひつつ来れど来かねて三尾が崎真長の浦をまたかへり見つ(万9-1733)

【通釈】景色を賞美しながら、過ぎて来ようとしたが、通り過ぎてしまうのが惜しくて、三尾が崎・真長の浦を振り返って見たことだ。

【補記】「三尾が崎」は近江国高島郡三尾(和名抄)。今の滋賀県高島市南部の明神崎かと言う。「真長の浦」は同町勝野辺りの琵琶湖の入江。


最終更新日:平成15年11月08日