Q1-4.なぜ昔の歌人は鳥の声を聞くと過去や故郷を思い出したのか? A.万葉集の歌ですと、 淡海の海夕波千鳥汝が鳴けば心もしのに古へ思ほゆ あたりをすぐに思い出します。人麻呂作、千鳥の鳴き声に昔を思い浮かべている歌です。 これは日本に限らない話ですが、神話や遺物などから推測するに、古代人は鳥というものを霊界と現世を往来できる特別な存在であると考えていたようです。死者の魂を他界に運ぶのも鳥の役目でした。ですから、鳥の鳴き声から霊界を思い浮かべ、さらに死者の追憶へ、過去の追想へと導かれるのは、古代人にとってはごく自然な連想であったろうと思います。 上の人麻呂の歌の場合、琵琶湖の水鳥が天智天皇にとって特別な鳥であったらしい(巻2-153)ことと関係があるらしいのですが、いずれにしても「鳥=霊界からの使者」観が背後にあることは間違いないように思えます。 もちろんこれは、あくまでも一つの考え方にすぎません。 額田王の歌、 古へに恋ふらむ鳥は霍公鳥けだしや鳴きし吾が思へるごと これは我が身をホトトギスになぞらえて、昔を懐かしがっていることを伝えた歌です。 この歌に関しましては「家持歌日記を読む」というページで触れていますので、昔書いた拙い文章ですが、リンクを張っておきます。何かの参考になりましたら幸いです。 http://www.asahi-net.or.jp/~sg2h-ymst/nikki/nikki05.html |