十三代集秀歌選


二十一代集一覧

9新勅撰 78首 10続後撰 83首 11続古今74首 12続拾遺 48首
13新後撰 43首 14玉葉 100首 15続千載 50首 16続後拾遺 46首
17風雅 100首 18新千載 64首 19新拾遺 67首 20新後拾遺 55首
21新続古今 77首 付録:新葉(准勅撰)75首


―はじめに―

和歌は新古今集を最後に行き詰まり、衰退に向かった。めぼしい歌人は源実朝くらいで、明治時代に「短歌」として新生するまで、長く停滞を続けた。――というのが一般的な文学史の常識、あるいは通説になるのでしょうか。もっとも、最近は鎌倉末期の玉葉集、あるいは南北朝時代の風雅集が再び注目されるようになり、京極為兼や永福門院の歌に親しむ人も増えてきているようです。従ってこの二歌集は例外とすべきでしょうが、総じて十三代集などは退屈な、読むに値しない歌集だという常識は依然として不動のように見えます(普通、古今集から新古今集までの勅撰和歌集を「八代集」と呼び、それ以後は「十三代集」と呼んで区別します)。

私自身は、十三代集について少し違った考え方を持っています。穏健さだけが取り柄の歌が並んでいるように見えるのは、読み方が浅いからではないか? たとえば、『続後撰集』(「続」は「しょく」と読みます)。藤原定家の息子、為家が独りで撰した、十番目の勅撰集です。類型的で平板、無気力な歌集というのが近代以降の定評でした。しかし一首一首丁寧に味読してゆくと、実に緻密に計算された歌の排列に気づきます。整然たる歌の行進は、巻末まで一糸乱れず続きます。驚くような秀歌がない代りに、粒の揃った歌々が絶妙に配置され、ハーモニーを奏でます。二十巻全体の構成の仕方もユニークで、決して前代の轍を踏んでいるだけではありません。調和のとれた美しさということに限って言えば、古今集に対抗しうる唯一の勅撰集ではないかと思う程です。
このほかにも、定家独撰になる渋く狷介な、しかし時の政治に翻弄された不幸な『新勅撰集』、為家と反御子左派が共撰し、清新な歌風への意欲が見える『続古今集』、蒙古襲来という未曾有の危機の時代を背景に編まれた『続拾遺集』、七百年にわたる歌を集成して勅撰集の最後となった『新続古今集』など、それぞれに見どころはあり、やはり勅撰集に託した歌人たちの熱意の並々ならなかったことを強く感じさせます。

ここには、一つの勅撰集につき五十首〜百首をめやすとし、なるべく各集の特色あるいは雰囲気をつかみやすいように工夫して、十三代集の抜萃を作ってみました。歌風の変遷を知るためにも、なるべく当代歌人を優先して選抜するようにしています。関心を持たれた歌集があれば、ぜひ書籍を手に取り、全巻に目を通してみてください。全体としての調和や秩序を重んじて構成された勅撰集は、言うまでもなく抄録のような形で味読できるものではないのですから。


―凡例―

正保版本・校註国歌大系・新編国歌大観など諸本を参照して、もっとも良いと思える本文を採りました。
用字は原則的に正保版本に拠りますが、読みやすいように適宜表記を改めています。旧字体を新字体に改めた、仮名遣は原則として歴史的仮名遣に統一した、濁音には濁点を付した、「々」以外の踊り字(繰り返し記号)は用いなかった、等々です。
歌の末尾に新編国歌大観番号を付しました。


9新勅撰 78首 10続後撰 83首 11続古今74首 12続拾遺 48首
13新後撰 43首 14玉葉 100首 15続千載 50首 16続後拾遺 46首
17風雅 100首 18新千載 64首 19新拾遺 67首 20新後拾遺 55首
21新続古今 77首 付録:新葉(准勅撰)75首

二十一代集一覧


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更新日:平成16年4月17日
最終更新日:平成18年8月15日
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