スイス・NAGRA社のピラミッド型モノラルパワーアンプ、PMA。ある縁で自宅試聴させていただき、その美音と低域の豊かさに驚愕。結局、M-06αに代わり、私のメインシステムのためのパワーアンプの座に収まりました。
ところで、PMAの試聴はほとんどなんの予備知識もなく行ったものでした。しかし、その後で調べて見ると、このPMAは技術屋の私がうれしくなる点も多いのです。例えば・・・ 1) ワンペアのMOSFET 10ペア・パラレル・プッシュ・プルとかもザラの時代に、量で勝負でなく、超高精度な1ペア勝負。これは高精度レコーダで有名なNAGRAのこだわりでしょうか。この1ペアFETから、8Ω、200W/ch もの出力が出ます。電圧は60ボルトも出て、最大12アンペア。これから計算すると、瞬間クリップパワーは、5Ω時に最大で720W、8Ωでは450Wになります。
2) スイッチング電源なのに巨大トランス 驚いたことに、スイッチング電源だというのに、これらの電源関係が、アンプ体積のほとんどを占めています。 だから、軽量化、小型化、のためのパルス電源とはちょっと違いそうです。NAGRAは、このようなスイッチング電源こそが「アンプ回路が要求する直流電源を瞬時に高速で供給できる」と主張しています。 3) 200W/chのモノブロック・アナログアンプとしてはコンパクト うちのアンプラックは奥行きが45cmしかないのです。接続スペースを考えると、奥行き417mmのM-06αがほとんど限界でした。最新のアンプに更新しようと思って探しても、現代のモノブロック・アンプでこの奥行きに収まってくれるものはあまりないのです。例えばアキュフェーズなら最小のA30、ラックスマンでも最小のM-600Aが限度ということになります。これでは、たとえBTLで2台使っても120W/ch。 M-06αから半減してしまいます。もちろん、それでも音は良くなるのでしょうけれど、そうであっても、わざわざ220W/chを誇るM-06αから変えるモチベーションが沸きそうにない気がしたのです。 この点で、PMAは、1辺が38cmのモノブロックが2台で、200W/ch。実にちょうど良いスペックなのです。 4) 省エネアンプ
アンプ下段(右ch用)のPMA
実は、この形について、NAGRAはそれなりに「合理的理由がある」と言ってはいますが、その説明(放熱効率がよい、重心が低いなど)が、私としては、「だからこの形がベスト」とまでは納得できなかったので、試聴前は結構ネガティブなイメージでした。音も形も、実は奇をてらっているのではないのか・・・と。 でも、でてきた音はあまりにも正統派。低域のパワーは、10kgという重量からは到底想像できない底力があります。大太鼓やパイプオルガンの超低音では、音量の大小に寄らず、部屋全体の空気が揺れる という感覚があります。中域、高域もスムースで美しい。声楽もOK。分解能も高く、聞きなれたCDでも、これまで聞こえていなかった「オケの中で小音で演奏している楽器」が聞こえてくるのに気がついたりします。気難しいJBL4344との相性もよろしいようです。 全体の混濁感も減り、聴感上のチャンネル・セパレーションも向上。目の前に広がるステージが左右に一回り大きくなりました。 この音を聞いてからピラミッドの形を見ると、なんか納得できる形の気がしてきてしまうから不思議。美的にはOKだと思いますし、音が良くて、うちのラックに収まり、発熱も少ないなら言うことなしです。 実パワーに関しては、クリップ警告のLED(60ボルトまたは12アンペアで点灯)はどんなに大きな音でキリテカナワが声を張り上げても、決して点灯しませんでした。 PMAのような8Ωで定格200W出る高電圧アンプと、8Ωで30Wだけど1Ωなら240Wが出るような最近流行の大電流・低電圧型のアンプ。どちらがいいのか、私にはまったくわかりませんが、とにかく、PMAは重量(10kg)からは想像しがたいパワーが出てきます。 唯一、使用上で気をつけるべき点は、主電源をオンにしてから音が立ち上がるまで、意外と時間がかかる点。ただし、主電源を常時オンにしておけば、音を出し始めてからは数分でいつもの音になります。A級アンプとは異なり、無音時の消費電力は60ワット以下なので、発熱も消費電力も少なく、省エネです。 実用上でいささか疑問を感じたのは、電源ONを示す緑LED、プロテクタ動作を示す赤LED、オーバーヒートを示す赤LED の3つが、リアパネルにある点です。演奏前に異常が発生していないか念のために見たいですから、ラックの奥に鏡を置いて、前から覗き込めば見えるようにしました(上の写真)。下記の雷サージ対策にあるとおり、稀にプロテクタの赤LEDが点灯することが実際にありますので、この鏡は必須です。 なお、アンプ正面にある2個のLEDは、左の青LED が入力レベルに応じて明滅(消灯可能)、右の赤LED はクリップ警告灯です。 このピラミッド・アンプ、 実際にラックにセットして見慣れてしまえば、意外に違和感はない気がしてきます。ま、贔屓目でしょうかね。軽量であるために、配置の自由度が拾いのは大きなメリットです。。 本ページトップにある写真に写っている スフィンクス は、PMAのために買ってきました。ピラミッドといえばスフィンクスかな、と思いまして・・・(^^; クリスタル・フラワー (スワロフスキー)のほうは、以前から持っていたものです。なんか、こんなおしゃれをさせてあげたくなるアンプです。
PMAの主電源を入れなおせばリセットはされますが、高電圧が入るという事実は、あまりうれしくはない。 2008年4月記 |