KEF Kube 12b
サブウーファー 最大音圧114dB


サブウーハーが2台必須な理由

非接触電流計による低域アンプ出力の実測

30cm口径、300Wアンプ内蔵ののサブウーハー、KEF Kube 12b を導入しました。

サブウーハーが2台必須な理由
 以下の理由で、左右別々に2台必須とわかりました。

サブウーハーが、左右共通で1台の場合と、左右別に2台の場合とを比較しながら説明します。
 

 仮に、サブウーハーは1Vの入力があると100Wが出るとします。
 サブウーハーは内部はモノラルです。左右chそれぞれ用の入力端子がありますが、入力はバッファアンプを経由して混合され、1台のパワーアンプに入ります。そのイメージが以下です。

@ 左右両方から1Vの入力があっても、合成後は1V。足し算で2Vになるわけではない。
A 右だけに1V入力があっても、合成後は1V。@と同じです。
1.5Vの乾電池を並列に繋いでも電圧は1.5Vなのと同様です。

この事実から以下がわかります。

●左右別に
2台を用意した場合の出力
 右chだけに低域が1V入っている場合、右用サブウーハーは100W、左用は0W、合計100W
 左右両chに低域が1V入っている場合、右用は100W、左用は100Wなので、
合計200W

●左右共通で
1台を用意した場合の出力
 右chだけに低域が1V入っている場合、サブウーハーの出力は100W
 左右両chに低域が1V入っている場合、混合入力は1Vなので、出力は
100W

重要! 左右両chに同等に低域が入っている時は、サブウーハーが左右共通1台だと、左右別に2台の場合に比べ、低域パワーは半分になってしまいます。

 大太鼓は左だけに入っているが、パイプオルガンは左右同等に入っているような場合、パイプオルガンの音は相対的に小さくなってしまいます。これは、2台に比べパワーに余裕がないとかの問題ではなく、上記のように必然的に出力が低くなるのです。


 5.1chの音源なら、サブウーハーは1台が前提で録音されていると思うので、こんなことは気にする必要はないでしょうが、2chのCDなどを再生するときには、左右別にサブウーハーを2台用意しないと明らかにまずいことがわかります。「明らかにまずい」は言い過ぎだったと思うので、「1台でも効果はあるが、2台あればパワーの余裕という以上に大きな効果があることがわかった」と言い直します。

 しかも、以下で示すような
左右独立での周波数特性の計測をすると、1台と2台でまったく特性の差が見えないという点にも注意が必要です。私はここを見落としていました。

 実際に、Kube 12bを1台から2台にふやした時、調整はまったく変えずに増設しましたが、左から聴こえる大太鼓や、右のコントラバスなどは、まったく過剰になることはなく、左右均等に入っているパイプオルガンなどだけがあきらかに倍増しました。それは驚くほどに上記の理屈通りでした。

 私が知らなかっただけかもしれませんが、こんな重要な点がどこかで指摘されていたことは記憶にありません。
2chのクラシック音源を再生する場合には、サブウーハーは左右独立に2台が必須と思います。


サブウーハー導入の経緯

 私の部屋は、40Hzの大きな共鳴を利用して簡単に超低域が出ます。80〜100Hzもうまく出ますが、部屋の形状の特性で、50-60Hzの間だけは、出にくくなっています。

↓38cm+XR-1001 (<100Hz)+Passive Low Passフィルター(<100Hz) の素特性



上段図がPIEGA COAX-711とのマルチドライブで100Hz以下を受け持っているJBL4344の38cmウーハーの、DEQ2496調整なしでの周波数特性。
下段図は、シュミレータ stndwave2による分析。ただし、Low Passフィルタは考慮されていません。周波数特性の上にある多数の縦線は定在波の周波数を表します。
50Hzと63Hzの大きな落ち込みがわかります。シミュレーションによれば、これは43Hz付近の左右定在波と56Hz付近にある水平面方向の2次元モードの谷が二つ続くためとわかります。ちなみに、前後方向最低次の共鳴のために40Hz以下はやたらと出る部屋なのもわかります。ここはむしろカットが必要。71Hzにも大きな上下定在波によるピークがあります。


これまでは
71Hz付近のピーク(定在波)はDEQ2496のPEQでシャープにカットした上で、
@DEQ2496のGEQでこの落ち込み帯域(50〜60Hz)をブーストする、
または、
A逆にこの帯域の上下帯域をGEQで下げ、チャンネルデバイダXR-1001のレベルを上げて、低域アンプ DCPW-240への入力を増強する、
という方法の組み合わせで補正を実施してきました。(いずれの場合も40Hz以下は下げます。)

 その結果、特性上は、以下のように、スムースな低域特性を可能としていました。



 しかしながら、@Aどちらの方法にしても、50Hz〜63Hzで6dB以上のブーストが必要なはずで、JBL4344のウーハーに非常に大きなパワーが入るのは同じです。余裕はまだあるものの、もう少しウーハーとアンプに無理をさせない対策を立てたい。


 思い到った方法は、DEQ2496での50〜63HzのブーストをやめてJBL4344とDCPW-240の負担を下げつつ、63Hz以下用のサブウーハーを入れてこの低域を増強することです。この領域は指向性は全くないので、うまく調整すれば、サブウーハーの存在は分からないでしょう。
ただし、うまく位相が合って、低音の足し合わせが出来れば、ですが。

必要な機能と機器
 スマホからリモートでDSPを調整できるサブウーハーもありますが、DEQ2496を使っている私に内蔵DSPでの微調整は必須でないので、その機能はなくても、安いほうが良い。

 一方、とにかく、音圧は稼ぎたい。それには超大出力アンプ内蔵・・・ではなく、
ウーハー径と箱が大きいことが重要です。サブウーハーは内蔵アンプのパワーが宣伝されがちですが、パッシブのスピーカーと同様で、能率というものがあります。

 KEFには、サッカーボール位の大きさなのに1000Wアンプですごい低音がでる、という触れ込みのKC62があります。
 一方、同じKEFで、宣伝は地味な Kube 12bは、アンプ出力はよくある300W。しかし、着目すべきは、その最大音圧です。

 
KC62は105dB。一方、Kube 12b は114dBなので、1000WのKC62より音圧で9dB、約3倍くらい大きな音をKube 12bは出せるということ。置き場所が許せば、箱とSPサイズは大きい方が有利だと言えます。

 Kubeシリーズには、アンプは同じながらサイズ違いのKube 8b (最大音圧105dB)とKube 10b (同111dB) がありますが、箱が最大のKube 12bが音圧も最大。置き場所も何とかなるので、迷わず、 KEF Kube 12b を選択しました。密閉型であることも選択の基準でした。

デザイン

まったく飾り気のない、目立たない箱です。トップのみがピアノブラック仕上げ。横面は、サランネットが一周しています。安っぽくない範囲でのコストダウンです。約40cm角で結構大きい。


調整機能と接続
 調整機能もシンプルです。カットオフ周波数の調整ノブ(40-140Hz)とレベル調整ノブ。入力は、RCAに加え、スピーカーレベル入力もあります。私にはこれが有り難い。プリアンプからあらためて延々とラインケーブルを引っ張ってくるのは大変なので、JBL4344に入る線を分岐して入れます。全体回路図
 パッシブな外付100Hzローパスフィルターも通っていることになりますが、JBL4344に入っている信号とまったく同じ信号を拾うことを優先しました。


置き場所
 置き場所は、できるだけ目立たぬように置きたかったので、相当に考えました。
 しかし、JBL4344の60Hz以下をカットして繋ぐなら、色々な選択肢もありますが、そうでなく、超低域の音をJBL4344に
重ねて出す計画なので、左右のスピーカーの中央しか置けるところはありません。ぎりぎりですが、JBL4344を1cm外に移動してうまく入りました。




調整


内蔵DSP設定
 Kube 12bはDSPを内蔵していて、ウーハーのひずみをアクティブに補正しているらしいですが、同時に、3ポジションのスイッチ、@In Room, AWall, BCorner で、特性を変えられます。調べると、この順に低域のブーストが減り、Bはフラットのようです。前述の通り、私の部屋では40Hz以下は出すぎなくらいなので、コーナー設置ではありませんが、Bに設定しました。実測でもこれが最適でした。

位相の設定

 位相スイッチは0°としています。
 低域の位相をどう繋ぐかは、理屈通りにいかないことが多いので、Kube 12b の位相スイッチをどうすべきかは、試してみる必要があります。
 とにかく、あまり考えずに試してみました。どっち付かずだったら困るところでしたが、結果は明快で、目標の60Hz以下をブーストするには、が適正でした。


最終結果
 PAA3で計測しながら微調整した結果、カットオフ周波数は、上写真のとおり50Hzくらいとなりました。内蔵のローパスは -24dB/Oct です。音量レベルも写真の通り、2時の位置。
 回すときにクリックがあるので、上げ下げして試すとき、ボリウム位置を再現しやすく、使いやすい。

DEQ2496の設定と計測結果
上段:GEQの設定、
中段:PEQの設定、
下段:周波数特性(PAA3)、左チャンネルのみ示しています。
赤はサブウーハーONで乗る低域分。OFFにすると白い部分になります。

参考までにKube 12b導入前の特性を再度示すと下の通り。導入で63Hz以下の4344の負荷が減りました。


GEQの変更点:
 80Hz以上は変えず、それ以下のみを変更。63Hz以下にブースト部分は無くなり、50Hz、63Hzとも、-1dBと、むしろすこしマイナス。40Hz以下は大幅にカットしますが、それでもこの帯域はめちゃくちゃ出ます。
PEQの変更点: 25Hz以下は、クラシックでは暗騒音の増加にしかならないので、PEQでシャープカットして、20Hzの音圧が300Hz付近の平均を越えぬように押さえています。その他のPEQでのカットは、これまで通りで部屋の共鳴除去*です(DEQ2496参照)。
低域では、71Hz付近の定在波をシャープにカットした上で低域全体をブーストしています。そうでないと低音が被った、いわゆるボンついた音になってしまいます。



 この設定を計測なしでやろうと思っても、私には絶対できないと思いました。サブウーハーの設定にも、PAA3は役に立ちます。

異次元の超低域
 音は、40Hz以下が少し増えたので、30-40Hzの風圧は増しました。50-60Hzも、余裕しゃくしゃくな感じで、ズシンと来た時の音圧は同じでも、附帯音が減りました。ひずみの減少を感じ取れているのかもしれません。
 ここまでは同じ音量で再生した場合の話。低域が余裕しゃくしゃくの自信ができたので、いままではスピーカを壊さないかと少し音量を遠慮していた曲、例えば派手に大砲が入っているバーンスタインのチャイコフスキー「1812年」とか、とんでもない音量で大太鼓が鳴るエサ・ペッカ・サロネン/ ロサンゼルス・フィルの「春の祭典」とかでも、まったく遠慮なくボリウムを上げられるので、聞いたことのない迫力に到達します。揺れるような超低域。これは異次元です。
 大太鼓や大砲の音での威力に比べて、 1台の時は、ちょっと物足りないのが不思議だったパイプオルガンなどの音は、2台に増設してからは、これが正しかったのだな、と思えるレベルになりました。

 この効果で、11万円台×2は実にコスパが良いと思いました。

低域用パワーアンプ出力の実測
 非接触電流計でアンプ出力電流を計測することで、低域用パワーアンプの出力を実測し、効果を確認しました。計測の詳細はこちら

     2023年5月6日記、2024年3月1日追記

オーディオのページのトップへ