初期の実験

 前章を読んで常識ある人間なら、これは単にフォイ夫妻とベネット夫妻が他の三人をだまそうとした狂言だ、と思うだろう。だがそんな単純な話ではない。初期の実験風景を駆け足で見ていこう。

 初期の頃から、ベネット夫妻に現れる人格たちはグループに色々な贈り物をしてきた。マヌと名乗る人格が

「今日はここに出席している方々のために我がチームが特別に選びぬいた贈り物を、抱えきれないほどの愛と喜びと共にお届けします」

と述べた後、少し経って一連の物音がテーブルの上で聞かれた。実験が終わり電気をつけたグループは、そこに銀の指貫、銀鎖のブレスレット、凝った装飾のミニチュアスプーン、象形文字が描かれた小さな金のメダルなど、7人のメンバーに合わせた7つの贈り物を見つけることになる。こうした贈り物は何度もあり、1945年に発行されたデイリーエクスプレスという新聞が現れたこともある。グループが調べたところ、この新聞に使われている紙は現代のものではなく、1940年代に新聞用に使われていたものと同じ紙質だったという。それにも関わらず、この新聞は真新しい紙の状態で届いたのだ。そして、その記事の内容はロビンの興味に沿ったものだった。

スピリットチームからの贈り物


 人格たちはまた色々なことを伝えてくる。ラジと名乗る人格があるとき、中央のテーブル付近に霊的な扉がだんだんと形作られていて、近い将来、この扉が完成した暁には霊が完全に実体化すると伝えてきた。1993年の12月には、実験中にかける音楽の重要性、毎日v瀲想の必要性が説かれた。マヌは、痃想は強力なヒーリングエナジーを産み出すのに役立つ、これからは実験の最後に、ヒーリングを必要とする人々に対してエナジーを送るように、と述べている。そしてメンバーがその言葉を信じ、実際に行なったところ、廻りの人々から効果があったとの言葉が伝わってきた。でもこれは、暗示効果とも言えるだろう。誰だって、他人が自分のために祈ってくれていると聞けば、自己治癒力が増すものである。

 次に人格たちは、アランとダイアナの口を使わずに宙空から声を出す芸当を始めた。スピリットチームが「拡張声」と名付けたこの現象を起こすには、霊媒の声帯をその体から十分離れた地点まで拡張するのだそうだ。1994年になるともっと信じられないことが起きる。

 1994年1月3日の実験で、天井から吊り下げたカウベルがひとりでに鳴らされた。スピリットライトが縦横無尽に飛び回り、流れ星のように突然現れては消え、テーブルの上でダンスを踊っているように動いたりする中で、スピリットチームはテーブルに意識を集中するように告げてきた。その頃にはテーブル上に蛍光塗料を塗った小さな物がいくつか置かれ、暗闇の中でテーブル全体が見渡せるようになっていた。次に起きた事柄は、もし本当に起きたとするなら絶対に信じられない。スコールグループの証言によれば、その木でできたテーブルの表面が伸びたというのだ! その後はお決まりのようにテーブルが浮き上がるが、これは何か特別な仕掛けがしてあるテーブルだったのだろうか。テーブルが地上に落ち着くと、見えないドラムスティックでテーブルを打ちつける音が響き、テーブル上に置いてあったメガホンは光る手で持ち上げられ、部屋中をあちこち動き回った。

 驚嘆すべき実験が続く中、パトリックと名乗る人格が近々「パトリックの夜」と題する特別な夜を実現させると約束してきた。毎週、その夜を実現させるために必要な細かい指示が送られ、2月21日、ついに「パトリックの夜」はやってきた。

 その日、グループは多少冗談めいた気持ちで地下室の奥に椅子を置き、そこに煙草と酒が生前好きだったと主張するパトリックのために、灰皿と煙草、ギネスビールを乗せた。実験が始まると早速いつになく明るいスピリットライトが現れ、それは光の柱へと変形し始めた。10cmほどの太さと1.5mほどの高さに育った柱は地下室の一角に落ち着き、明滅する一連の光と共に約1m四方の空間を明るく照らし出した。パトリックの「見ろ!」という声がしたとき、グループはその空間の中に実体化した人物像を見たのだ。この実体化が五回繰り返されて実験は終わり、明りを点けたグループは、灰皿が裏返しになりギネスビールがその上に置かれているのを発見した。

 全く荒唐無稽としか言いようがない。すべてがトリックだとしてもかなり大掛かりなものになってきた。これだけの仕掛けをして、いったい何が目標なのだろう。それとも、誰か一人以外は催眠術にでもかけられていたのか。

 1994年の春、スピリットチームはこれからの四つの目標を伝えてきた。
1)一人から始めて、だんだんとたくさんの見学者を呼ぶ。
2)地下室を離れ、色々な場所でさまざまな人々を前にして実験を行なう。最終的には海外にも出る。
3)スコールグループの成果を伝える機関紙を発行する。
4)学者たちを招待し、現象を調査し、報告してもらう。

 なるほど。確かにこれらが達成されたならグループは無視できない存在になる。地下室で限られたメンバーでやっているうちは、驚嘆すべき出来事が起こったんだ、と言われても、「そうですか。私はあなた方を信じますよ。あなたがそういうのだから、きっと何かそれらしい現象は起こったのでしょう。ただ、もう少し冷静になってもらえれば、特に変わった出来事ではなかったと気づくとは思いますがね」と答えて、そこで会話は終わりである。しかしその現象が、事前に仕掛けのできない他の場所で起こされたり、不特定多数に十分に調査されたりとなると話は変わってくる。

 それにしてもスコールグループの目的は何なのか。誰も考え付かなかった新しいトリックの手口を用いて世界中をだまそうとでも言うのだろうか。次章では、実験に招かれた人たちの感想を見ていこう。

 四つの目標を実現するためにチームはいろいろと細かい指示をしてきた。チームに言われてグループが買い揃えた設備の中で、大きなガラス製のドームはなかなか見つけることができなかったものだ。このドームはスピリットエナジーを溜め込むもので、この設備によって現象の発展と安定性がもたらされた。なおこの設備を見た科学者は初期のコンデンサであるライデン瓶のようだと述べている。


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