6.他の心霊研究室による実験

「自分は二つの正反対の分派によって攻撃されている-科学者と馬鹿者どもである。双方とも私を『蛙の踊りの先生』と呼んで笑うのだ。それでも私は自然界における最大の力の一つを発見したことを知っている。」
電気を発見したガルバーニ

O:またわかりにくい引用を出してきたな。

ヴィ:えっ、そうですか。

O:私が分かりやすく説明してあげよう。ガルバーニは1780年頃、皮を剥いだばかりの蛙の脚が、その付近で放電が起きる度にけいれんするのを発見したんだ。それから何度も蛙を用いて試行錯誤するうちに、神経細胞の電気刺激作用を発見した。まあ、当時は動物電気とかわけの分からないとらえ方をしてたけどな。しかしその実験を通して、蛙を(電気刺激で)踊らせて楽しんでいるという揶揄が広まることになった。と、これくらい説明せにゃならんだろ。

ヴィ:さすが、その手の知識は詳しいですね。

O:ところで君は昔、蛙の口に爆竹を入れて遊んだことはないか?

ヴィ:・・・。日本人は皆、そんなに野蛮なんですか。

O:誰でも一度は通る道だろ。

ヴィ:うーん、そういう心の奥底にある残忍さが、まじめな科学者たちをわけもなく攻撃する原動力になるのでしょうね。

O:失敬な。くだらん話はいいから、早く本題に入りなさい。

ヴィ:(自分からふった話なのに…)それでは始めます。心霊現象の実験が研究室内で行われ始めてからすでに百年以上が経ちますが、死後の世界が存在する事を示すおびただしい量の客観的証拠は、さらに増え続けています。注目に値し、説得力もある結果のほとんどは、この次元の聡明な人々と他界の知性との間に、最高の協力関係ができあがったときに得られています。ここではただ少数の実験について詳しく述べることにしましょう。

 このような調査の労を厭わなかった一連の高名な科学者たちの最初を飾るのはウィリアム・クルックス卿で、彼の業績の中でも特に有名なのは、ダニエル・ダングラス・ヒュームという霊媒の調査です。ウィリアム・クルックス卿は当時、偉大な科学者として多くの国− イギリス、合衆国、スコットランド、ドイツ、フランス、イタリア、南アフリカ、オランダ、メキシコ、スウェーデンから賞賛を浴びせかけられました。彼の科学への貢献は、同時代から近代に至るどの個人に比べても比類ないものです。

 イギリスの懐疑論者たちが、心霊現象を調査しその嘘を暴くためにウィリアム卿を選出するまでは、彼もまた懐疑論者でした。彼は最初の声明で、

「私のような一連の科学者たちがスピリチュアリズムにメスを入れれば、いずれその化けの皮がはがれるだろう」

と締めくくっています。

O:ちょっと待った。「スピリチュアリズム 」って何だっけ?

ヴィ:死後も個性は存続する、死者と生者の交信は可能だ、この二点を認める主義をスピリチュアリズムといいます。ウィリアム卿の生きた時代、19世紀の終わりから20世紀の初めの頃は、各国の各家庭で交霊会が行われ、一般大衆レベルで霊との対話が盛んに試されていました。そこでウィリアム卿が登場し、世間を騒がせているこのスピリチュアリズムを調べることになったのです。

 しかし、心霊現象を完璧に調査した結果、彼は未知の力が存在するという圧倒的な証拠を得ました。それでも彼は慎重に、生涯のほとんどを死後の世界に関して懐疑的なままで過ごしたのです。自分の妻が霊媒を通して物質化したときになって初めて、彼は死後生存についてあらゆる疑いを越えた確信に満ちたのでした。

 ウィリアム卿は独立心と共に強靭な精神を持ち、懐疑的な科学者たちに服従することはなかったので、心霊現象を調査するように彼を指名した人たちの意地悪い攻撃の的となりました。最も汚らわしい攻撃のひとつにウォルター・マンの主張があります。彼は、ウィリアム卿と彼が調査した霊媒の一人(当時15才の少女)が情事を交わす仲にあり、物質化の調査は不正に仕組まれたものだと言ったのです。もちろん彼には、 クルックスの生存中に、毅然として信念を持ってこの主張をする勇気はありませんでした。この卑劣なイギリスの懐疑論者は、ウィリアム・クルックス卿が他界するまで、この全く的外れな非難をするのを待っていたのです。物質的なものばかりを追い求めるあまりに物質至上主義に陥り、ウィリアム卿に対してウォルター・マンがついた計画的な嘘の類を繰り返す人たちは、口汚い、的外れの中傷工作をいずれ撤回することでしょう。

 ウィリアム・クルックス卿はダニエル・ダングラス・ヒュームに関してかなりたくさんの心霊的な調査をしています。ある実験においてヒュームは、目に見えない協力者の助けを借りて、クルックスのすぐ目の前で物体の重量に影響を与える能力を証明しました。大いに信用できる多数の目撃者たちが、それぞれ独自に、ヒュームがいくつかの重たい家具を空中に浮かばせたのは確かだと証言しています。

 研究室内でヒュームとともに厳密な実験を繰り返したクルックスは、「新しい力」を発見したと結論し、その力に「サイキック・フォース」の名を与えました。彼はこの力が非常に変化しやすく、ときには全くなくなることを指摘しています。つまり、骨の折れる辛抱強い調査が必要だったわけです。この新しい力の性質を確たる根拠もなしにいろいろ思索するのが耐え難く、彼は仲間の科学者たちに、誰か進んで調査の手助けをしてくれる者はいないかと訴えかけています。

 一連の慎重に計画された実験において、クルックスが購入してきたアコーディオンが、ヒュームの前でひとりでに演奏されています。これらの実験では、ヒュームの手足は他の人によって抑えられ、アコーディオンは電流を流した金属製のかごの中に置かれました。クルックスと出席していた他の二人は、何も目に見える支えはないのに、アコーディオンがかごの中ではっきりと浮かんでいるのを見たのです。

 ウィリアム卿の妻、クルックス婦人は、彼女が見たことについて率直に話しています。これは他界の知的存在が、自身をかいま見せることができた古典的な事例と言えます。彼女によれば、アコーディオンをヒュームの手から奪ったのは;

「何かもやもやとしたものが集まってきて、それが薄いひだのある布を纏った、明らかな人間の形状になって・・・、それは半透明で、その向こうにいつでも出席者たちの姿を見ることができました。ヒューム氏は引戸の近くでじっとしています。人影が接近してくると私は激しい寒さを感じ、その感覚は近づくにつれて強くなっていきました。そして‘それ’が私にアコーディオンを与えたとき、私は金切り声を上げずにはいられなかったのです。その人影は床に沈み込み、頭と肩だけの状態になってもアコーディオンを弾き続け、アコーディオンと床の距離は30cm程しかありませんでした。」

 ウィリアム・クルックス卿の名前は疑いなく、死後の世界の存在を示す完璧に客観的でくつがえしようの無い証明を確立した、最も偉大な心霊現象研究家の1人として残っていくでしょう。

O:率直に言って、その霊媒は幻覚剤と催眠術をうまく操る人だったというのが真相だと思うな。

ヴィ:それではちゃんと計器に記録された、物体の説明つかない重量変化はどうなるのですか。

O:1800年代の実験だろ。彼なりに厳密にやったんだろうけど、どこかに手落ちがあったんじゃないか。

ヴィ:そういうことなら、もっと新しい人を紹介しましょう。

 他の心霊研究所の例としては、アメリカ心霊研究所の所長であった、多大な信頼と尊敬に値する科学者、そして著述家でもあるキャリントン・ヒアワード(Hereward Carrington)博士の業績が抜きんでています。彼は何度も個人的に心霊現象を調査し、その最も興味深い著作「The World of Psychic Research(心霊研究の世界)- 1973」では、他界の知性が心霊研究室の中にその存在を示し関与してきたことを、疑いなく完全に証明する数々の実験について概説しています。ここではそのたくさんの実験の中から、オスティ博士とルディ・シュナイダーの物理心霊現象実験を紹介しましょう。

 パリのメタサイキック研究所の所長ユージーン・オスティ博士は、研究室内で若い霊媒ルディ・シュナイダーが、トリックなどではない本物の物理現象を引き起こすことができることを証明しました。キャリントンはその実験について以下のように記述しています;

「オスティ博士は小さいテーブルの上に移動されるべき物体を置き、テーブル上には赤外線を張りめぐらした。これらは当然、周りの人の目には見えないが、もし何らかの固形物がレーザーを30パーセント以上遮ると、フラッシュが焚かれカメラのシャッターがおり、 その瞬間のテーブル上の写真が撮影される仕掛けになっていた。物質的なもの、例えば人の手などが対象物を動かそうとしても、ひとそろいの写真がすぐにトリックを明らかにするだろう。一連の交霊会において対象物は数限りなく動かされ、フラッシュが光り、写真が現像された。さて、一体何が写ったのだろう? 何も−そう、何も異常なものなどなかった。写真にはテーブルの表面が写っていただけだった。しかし、そうは言っても赤外線が遮られ、対象物が動かされたのだから、何かがテーブルの上のあたりを動いたはずなのだ。」

 霊媒が他界の知性の協力を得た実験の第一段階は非常に成功し、テーブル上の物体を動かしたときにカメラのフラッシュが光ったことによって、その見えない協力者の存在も明らかとなったのです。教授、これについてどう思いますか。

O:その装置がどれだけカメラと連動していたかが気になるな。その連動が悪ければ、赤外線をさえぎったものは、シャッターが切られたときにはすでにそこにないということも可能だろう。

ヴィ:そんな感度の悪い装置をわざわざ作りますか?

O:しかしその可能性が除外されない限り、これ以上は何も言えんな。

ヴィ:分かりました。じゃあこれはどうでしょう。

 見えない実体の存在が分かったところで、次の段階として、その実体がどこにどのように存在するかを確認する実験が行われました。これを可能にするために、実験者はある種の検流計を考案し、その装置で知的存在の発振もしくは振動率を記録できるかもしれないと考えたのです。実験が始まるとすぐに、他界の知的存在はものを動かし始め、自分が来ていることを示しました。その時非常に劇的なあることが起きたのです−検流計は見えない知的存在の「脈動」を記録し始めたのでした。

 キャリントンはこう述べています;

「まるで目の前の何もない空間に立ち尽くす、見えない生き物の鼓動を計るようだった!」

O:君ね、その検流計が何をどう計るものなのか言ってくれないと話にならんよ。

ヴィ:それがどんなものであろうと、見えない実体を記録したという事実に変わりはないと思うのですが・・・。

 何世紀もの間、透視能力者たちはすべての生き物には見えない体−アストラル体とエーテル体−があり、これらは物理的な体とそっくりで、我々の脳とは別個の本当の「心」を含んでいると主張してきました。この主張を裏付ける最も興味深い証拠が、シーラ・オストランダーとリン・シュローダーの革命的な本「PSI Psychic Discoveries Behind the Iron Curtain(鉄のカーテンの向こうのサイキック研究)- 1973」に報告されています。

 著者たちは、ロシアでは精巧な電子装置を用いた実験によって、すべての生物 −植物、動物、人間−が原子と分子でできている物理的な体だけではなく、それに対応するエネルギーでできた体を持っている事が分かったと述べています。このエネルギー体は写真に撮られ、ロシアでは「生プラズマ体」と呼ばれています。興味深い事にロシアでの実験結果は、人間が指や腕、足を失っても、対応する体はそっくりそのまま、欠けている手足の幽霊のように残っている事を示し、透視能力者の従来の主張を裏付けることとなりました。

O:ヴィクター、ロシアの研究結果によれば、そのようなエネルギー体は確かにあるのかもしれない。これ自体はオカルトでもなんでもない。ただし、何の根拠もなしに、そこに心が宿っているなんて言ってるようじゃ、理性的な人間はついて来ないぞ。

ヴィ:私は先ほどから、見えない知性を持った実体が存在することをつきとめた実験を紹介しています。そしてその実体は、ロシアでいうところの「生プラズマ体」かもしれないと論じているのです。

O:存在することをつきとめた? あれくらいの説明では全然そう思えんな。

ヴィ:もちろん、必要ならいくらでも実験結果を示しますよ。例えばちょっと変わったところで、こんなのはどうです。キャリントンの本(1973)に収められている最も印象的な実験のひとつに、霊媒たちが知的存在を身近に認め、トランス状態に入るときに必ず感じるという「冷たい微風」について、客観的で科学的な証拠を作り出す努力があります。長い間、霊媒たちの主張は主観的なものとされていましたが、科学が温度の変更を客観的に測ることができることが示されたのです;

「温度計が・・・針金で作られた檻に入れられ、壁の上の梁にねじで固定された。交霊会が始まる直前に装置のぜんまいが巻かれ、温度計と連動した針が室温を記録し始めた。続く交霊会では、テーブルの完全な空中浮揚を含む多くの異常な物理現象が起こり、これらの現象の発現と一致して、温度計は10度から15度、最高20度の瞬間的な温度降下を示したのだ。温度降下はほんの1、2秒で起こり、その部屋の中のどこかで心霊現象が起きるタイミングと正確に一致していた。このように科学はまたひとつ、注目に値する効果を測ることができたのだ。」

 この実験結果は、ロンドンの国立心霊研究所において、研究者ハリー・プライス氏によって再現されています。キャリントンはこう報告しています;

「実験の目的は、科学にとって未知の新しい力が、詐欺やトリックなど全く想像できない状況で作用した事実を決定的に証明することであった。」 

 O教授、この実験についてはどうコメントしますか?

O:答えるには情報が足りないな。どうやら実験室で何らかの物理現象が起きたようだが、よくよく条件を吟味すれば、通常の物理の範疇で説明が可能になると私は思う。今、与えられた条件では、そうとしか言いようがない。

ヴィ:じゃあ、今度は物理的な視点から離れた、別の研究室での一連の心理テストについて述べましょう。この実験にはギャレット夫人(Eileen J. Garrett)という霊媒が関与していますが、キャリントンによれば、彼女はあらゆる種類の科学的な調査に身を委ね、これまでに最も成功したアメリカの霊媒の一人です。彼女はヨーロッパとアメリカの、先進的な大学と科学的なグループによってテストされてきました。

 ギャレット夫人本人によれば、彼女には通称ウヴァニという支配霊がいて、彼女がトランス状態のときにこの霊あるいは知的存在が彼女を通して語るそうです。実験者はウヴァニがギャレット夫人とは本当に別の人格であるかどうか試すために、チューリッヒのカール・ユング博士によって考案された単語連想テストを使うことに決めました。トランス状態でないときのギャレット夫人と、トランス状態で現れる支配霊ウヴァニの両方が、単語連想テストを受けることになりました。心理学と精神科の専門家たちは、この100個の単語を用いて行われる単語連想テストは、被験者の単語への応答時間を10分の1秒単位で測るので、ごまかしがあったとしてもそれを持続することはできないと保証しています。首尾一貫性がなかったりためらったりすると、それはすぐに気付かれるのです。この条件の下で、ウヴァニは彼自身テストを受けると共に、死後の世界からもう7体の知的存在をこのテストに出席させる手はずを整えました。

 結果は決定的なもので、ギャレット夫人がトランス状態でないときとウヴァニ、そして他の、7体の存在の単語関連づけは、すべて根本的に異なっていました。この結果が1人の人、1つの心から現れるということはあり得ません。

O:あり得ないと言ったって、実際にそうなったのだろう。この結果が示しているのは、テスト方式が間違っていたか、それがあり得ないとしたら、真正の多重人格が存在する、とこうなるだけだ。人間は脳の電気刺激によって、全く別人格になる可能性があるのは認めるだろう。要するにギャレット夫人ってのは、現代科学ではまだわからない、特殊な脳をしていただけだよ。

ヴィ:それでは他の霊媒の実験結果も見てみましょう。霊媒を通してもの語っているのはそれぞれ独立した実体たちであることが、すでに述べた実験とは全く関わりのない、最も有能なオーストラリアの霊媒シャーリー・ブレイ(Shirley Bray)の科学的な調査によって同様に確認されています。

 彼女を通して定期的にあらわれる3つの知的存在の声がテープに録音されました。テープに取られた声は、ヨークシャーの切り裂き魔事件において、この連続殺人犯に有罪を宜告するためにイギリスの警察によって使われたのと同じ、非常に先進的な機能を持つ音声分析機にかけられました。科学者によって作られたこの音声分析機は、声のペース、リズム、アクセントなどのような各種の要素を測ることができます。機械による分析結果は、霊媒シャーリー・ブレイの録音したすべての声が、まったく異なった個人であることを示したのです。科学者たちは正直に、この機械は人間が話すときの呼吸パターンまで記録するので、1人の人間がテープの上に3人分の声を吹き込むことができるはずはない、と述べています。これは声紋が指紋と全く同じように、個人によって異なるからです。

 アメリカのチャールズ・H・ハプグッド(Charles Hutchins Hapgood)教授は、彼の卓越した本「Voices of Spirit (霊の声)- 1975」の中で、霊媒エルウッド・バビット(Elwood Babbitt)がトランスに入っていないときと、トランス状態で霊媒の心が他界の知性によって操縦されているとみなされる時の脳波を調べ、この二者が異なるかどうかを試す実験をしたと報告しています。ハプグッドは3つの異なった知的存在が霊媒を制御したとされる間、バビットの脳波図を取り続けました。その結果、3つの脳波図はそれぞれ完全に異なり、トランス状態でないときのバビットの脳波図とも異なっていることが判明したのです。脳波の専門家であるブリッジ博士は、脳波図はそれぞれ異なった年齢の人々の特性を示していて、1人の人に属するものではあり得ないと述べています。ハプグッドは彼の本にそのときの脳波図を収録しています。

 これらはただ、確固たる証拠を構成する莫大な数の実験の、ほんの一部に過ぎません。

O:わかった。霊媒が偽者ばかりではなく、中には本物の多重人格者がいるということは認めよう。しかし、死んだ人間によって制御されているなどというのは認められないな。

ヴィ:一人の霊媒の上に多数の人格が現れる、ここまではいいですね。では、その複数の人格が述べてきた事柄について論じていきましょう。

弁護士の論じる死後の世界


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