豊澤園飯荘 

沙鍋[食昆]飩(左)、豆脳と目玉焼き入りパン(右)


泊まったホテルのすぐ近くに山東料理の老舗豊澤園の本店があり、嬉しいことに早点をやっていたので何度か脚を運んでみました。 昆布のような海草と干し蝦で出汁をとった沙鍋[食昆]飩、海草の入ったやさしい味のタレをかけて食べる豆(腐)脳、他にちょっとしたものを食べて日本円で50円ぐらいです。 でも面白いことに沙鍋[食昆]飩を作るところを見ていると味精はまったく添加していませんでした。 中国ではまだ味精が高いのでしょうか。 夜にちゃんとした料理を食べに行ったときには葱焼海参がかなり味精の味がきていました。

早点は朝6時からやっていますが店の前に屋台のようなものをしつらえてあり、作ってもらったものを屋外にあるテーブルへ自分で持っていって食べるスタイルになっています。 沙鍋[食昆]飩を作るコンロの横には香菜、辣椒、昆布のような海草、桜海老に近い干し蝦などの調味料が置いてあります。 これはコックが調理するときも使いますが客が好みで沙鍋[食昆]飩とか豆脳などにかけても良いようになっています。

もちろん味精の皿もありましたが分量がとても少ないです。 おそらく日本で味精の使い方が問題になっている店であればどんぶり一杯分の料理に一回でぶち込む分量でしょうねこれは。 味精も、これは当たり前のことですが、調味料の一種なので使い方を間違えれば気持ち悪くて食べられなくなるのはあたりまえです。 計量スプーン一杯程度で丁度良いところに一升瓶からどぼどぼと醤油を瓶の三分の一ぐらい突っ込んだらどうなるか結果は明らかですね。 こんなものはばかばかしくて批判の対象にもならないはずです。 中国料理名菜譜にも味精を使った料理が出てきます。 もちろん使わないものも沢山あるのですが、使うことを指定してあるものを見てみると1.5キロの家鴨を使った料理に1gの味精を添加すると書いてあります。 問題になるような店であればこれの数十倍から百倍を超える量が添加されているわけですからまともな味覚を持った人であれば苦痛を感じるのも自明のことです。

何れにしろ今回は味精以前の中華の味付けの世界の片鱗をうかがうことが出来たのは大きな収穫だと思います。 この店のは桜海老に近い干し蝦と昆布のような海草でしたが上海系であれば笋を醗酵させた辺尖とか風味や味を添える調味料はまだまだ沢山ありそうです。 こう言ったものが使えれば味精に頼らなくてもとても弱い味でありながら独特の風味を持った味の幅のある料理が作れるはずです。 しかし、残念ながらこう言ったものは経済発展とともに消えて行くのもまた現実のようで何れは味精にとって変わられその先にあるのはほとんど滑稽とも言える味精の大量使用の世界であることも避けることの出来ない現実だと思います。

さらに、その先にやってくるのはやはり味精の絶対否定というか強烈な拒絶反応でしょうか。 経済的事情からおかずをあまり食べることの出来なかった世代はご飯は体に悪いと主張したそうです。 欧米でもパンは体に悪いと言われたことがあるそうです。 大量に摂取せざるおえなかったものにものに対してはどうやら否定的にならざるおえない傾向があるようです。

さてこの先が書きたいのですが、難しいですね。 味精を減らすだけでは気持ち悪さが減るだけで味の幅は回復できないことはあきらかですから。


伊府麺と鳥魚蛋湯(右手前)


銀絲巻(左)と葱焼海参



基礎データ
住所北京市宣武区珠市口西大街
電話
営業時間早点は朝6時から
お勧め料理早点(豆脳、沙鍋[食昆]飩など)、伊府麺、鳥魚蛋湯など
取材日時2000年5月2日、3日、4日




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