宿屋の主人は、二人の背中が見えなくなるまで玄関に立っていた。
 二人の姿が消えると、主人はチョッキの内ポケットから、一枚の紙を取り出した。

『ルルー/Rulue 十六歳
 青い髪。天然のウェーブがかかっており、長さは腰近くまで。
 瞳は緑。割に整っている容姿。詳しくは人相書きを。
 特技は格闘術。大の男四、五人でやっと取り押さえることが可能か?魔法のような幻覚作用を引き起こすダンスにも注意。実力行使で彼女を保護するのは難しいと思われる。
 性格は高飛車だが、厄介事に首を突っ込みやすい。思い込みが激しい。
 困った人や事件を放っておかない。が、決して単純に優しいというわけではなく、そこには彼女なりの哲学や計算が含まれる。目的を達する為には多少の演技やごまかし、強引なまでの自己主張は厭わない―――』

 主人はそれをもう一度眺めてから、丁寧に折り畳み、内ポケットにしまうと、宿屋の中に入っていった。

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