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■ピッチの残像 「充実感とともに喪失感知るつらさ」
ピッチでスタンドに向かって手を振りながら、市川大祐(清水)は号泣していた。 その4日前に発表された23人は、まだ「メンバー」であって「チーム」ではなかった。苦しみや困難、喜び、感動をともにしながら、急激な速度でチームになっていったそのプロセスを、市川は「深い1か月」と言った。 ノックダウン方式による決勝トーナメントが終わったとき誰もが感じていたのは、どうにも扱いきれない悔しさである。ロッカーでは泣く者もいたし、悔しさを態度にして表す選手もいた。しかし誰もが感じていたのは、ある種の喪失感だったはずだ。 「本当に寂しい。明日からこのW杯にいられなくなることが。みんなで過ごした毎日は、本当に楽しかった」 取材が一段落した中山雅史(磐田)はそう言いながら、ふと笑った。 「幸せな1か月」と、メンバーがチームに変わる日々を形容していた秋田 豊(鹿島)は、若手一人一人に「ありがとう」と声をかけていたという。 16強は目標であり、使命だった。行ければ「歴史」にはなったが、行けなければもちろん批判の対象になったであろう。 辛いのは、充実感を知るのは喪失感と同時だということである。 (東京中日スポーツ・2002.6.19より再録) |
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