ＡＺ−１とビート、カプチーノとの比較

　ＡＺ−１と他車とを比較する上で、必ず登場するのがビート、カプチーノだ。まずは下の表に各車の主要緒元をまとめてみた（表はＡＺ−１が発売当時のもの）。

　　　　ＡＺ−１ビートカプチーノ
メーカーマツダホンダスズキ
全長／全幅／全高(mm)3295/1395/11503295/1395/11703295/1395/1185
室内＝長／幅／高(mm)910/1150/965915/1215/1015835/1180/1005
ホイールベース(mm)223522802060
トレッド前／後(mm)1200/11951210/12101210/1210
車両重量(kg)720760700
エンジン形式F6A(MR)E07A(MR)F6A(FR)
排気量(c.c)657656657
最高出力(ps/rpm)64/650064/850064/6500
最大トルク(kg-m/rpm)8.7/40006.1/70008.7/4000
最高速度(km/h)187165171
価格（万円）149.8138.8145.8

エンジンの違い

　ＡＺ−１はパワートレイン部分の多くをスズキから購入している。従ってエンジンはカプチーノと同一のものがついている（現在はカプチーノはK6Aに変更されている）。DOHCのインタークーラーターボだ。しかし、エンジンの置き方が異なるため（カプチーノはFR）、性格は異なるとのこと。また、コンピュータのマップも異なっているらしい。
　一方ビートはＮＡである。同じ出力だが低回転でのトルクが弱く、ジムカーナーなどで競うとやはり遅い。ただ、高回転まで気持ちよく回るところがアドバンテージだ。

最高速度の違い

　ＡＺ−１とカプチーノのエンジンは同じだが、最高速度が大きく違う。これは空力の差である。一方ビートは記録が見あたらない。チューンド・カーで173km/hの記録があるようだが、知っている人がいたら教えてほしい。

価格の違い

　ＡＺ−１とカプチーノがほぼ同じ値段で、ビートが安くなっている。これはＮＡのため。それにしても、軽自動車の価格としてはいずれも高すぎる。もう少し安ければ、どの車もかなり売れていたと思うのだが。というのは、後少し金をだせばロードスターが買えるからだ。事実、当時かなりの客がロードスターに流れたようだ。

外観の違い

　各車とも似て非なる部分がある。規格いっぱいまで使った全長・全幅・際だって低い全高とミッドシップに配置されたエンジンは同じだが、オープンか、そうでないかが非なる部分だ。
　オープンの利点は何といってもその爽快さにつきるだろう。同じオープンのビートとカプチーノはソフトトップかハードトップかで異なる。さらにカプチーノはＴバー・タルガ・フルオープンといろいろなバリエーションが楽しめる。これは文句なく楽しいと思うのだが、Ｔバー・タルガにして走っている人を見たことがない。もったいない話だ。
　一方ＡＺ−１は、クローズド故に爽快さにはかけるが、ガルウイングを有している。この手の車は小さくて目立たないのだが、ＡＺ−１はこのガルウイングのおかげでめちゃくちゃ目立つ。爽快さを取るか、注目度を取るか、それも売れ行きの決定要素の１つだったかもしれない。

内装の違い

　個人的好みからすると一番好きな内装のデザインはカプチーノだ。高く盛り上がるセンターコンソールに配置されたシフトノブが走る気にさせてくれる。全体のまとまりもいい。
　一番ペケは他ならぬＡＺ−１。インパネのデザインはなんともコメントのしようがない。センターに配置されたタコメーターが唯一、走りを意識したものとなっている。私はＣＲＵＸ製のカーボンメーターパネルをインパネ上につけ、ようやく鑑賞に堪えるデザインに変更している。

左がカプチーノ
右がビート





販売台数の違い

　次に、ＡＺ−１・ＣＡＲＡとビート、カプチーノの販売台数をまとめた。なお、ビート、カプチーノはＡＺ−１発売以前にすでに販売されているため、合計台数はこの表に記載されているものより多いが、それにしてもＡＺ−１の販売台数は少ない。

1992年 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 計 備考
ＡＺ−１ 　 　 　 　 　 　 　 　 11 649 509 285 1,454 ※9月24日発表
ＣＡＲＡ 　 　 　 　 　 　 　 　 - - - - - 　
AZ-1+CARA計 　 　 　 　 　 　 　 　 11 649 509 285 1,454 　
カプチーノ 　 　 　 　 　 　 　 　 741 460 461 340 2,002 ※'91.11.1〜
ビート 　 　 　 　 　 　 　 　 421 354 248 232 1,255 　
1993年 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 計 備考
ＡＺ−１ 141 148 175 77 208 152 59 45 361 64 24 89 1,543 　
ＣＡＲＡ 1 51 31 23 23 12 14 8 11 5 9 1 189 ※１月２７日発表
AZ-1+CARA計 142 199 206 100 231 164 73 53 372 69 33 90 1,732 　
カプチーノ 351 493 803 549 409 479 596 331 358 219 222 164 4,974 　
ビート 137 204 558 373 415 557 286 146 99 58 235 157 3,522 　
1994年 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 計 備考
ＡＺ−１ 50 41 85 99 65 56 111 60 68 48 30 40 753 　
ＣＡＲＡ 21 53 86 27 21 22 15 21 11 12 5 3 297 　
AZ-1+CARA計 71 94 171 126 86 78 126 81 79 60 35 43 1,050 　
カプチーノ 175 248 462 359 300 313 247 183 227 174 181 131 3,000 　
ビート 92 150 236 173 132 143 124 87 110 74 70 57 1,448 　
1995年 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 計 備考
ＡＺ−１ 23 17 34 21 6 3 2 1 1 - - - 108 　
ＣＡＲＡ 3 5 5 5 10 4 - 4 2 - 8 - 46 　
AZ-1+CARA計 26 22 39 26 16 7 2 5 3 - 8 - 154 　
カプチーノ 117 129 207 139 177 262 212 209 221 133 164 111 2,081 　
ビート 48 69 104 69 63 56 61 71 81 53 44 44 763 　
1996年 1月 2月 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 計 備考
ＡＺ−１ - 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 - ※２月以降データなし
ＣＡＲＡ 1 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 1 　
AZ-1+CARA計 1 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 1 　
カプチーノ 91 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 91 　
ビート 47 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 47 　



各車の違い・総評

　各車とも「走る楽しさ」を追求したものとなっている。その代償は２シーター、ミッドシップとなって具現化された。つまり、二人しか乗れない、荷物も積めない、室内が狭い・・・今考えると到底売れそうにないコンセプトだが、各自動車メーカーが、軽自動車のセカンドカーとしてのあるべき姿を追求した結果得られたものだった。当時はバブルの絶頂期で、遊び心にあふれた車を安く出せば（＝軽自動車ならば）軽自動車市場に新たな分野が開拓でき、たくさん売れると踏んだのだ。しかし、結果はどの車も消費者に受け入れられず、消え去ろうとしている。理由は安いとはいえ軽にしては価格が高すぎたことである。特にＡＺ−１にいたってはあまりに売れず、４０００台しか製造されなかった。
　この失敗に懲りて、この手の車は将来においても作られることはないだろう。また、「走る楽しさ」の追求をこれだけ小さくまとめた車も他に類をみない。それ故、ビート・カプチーノ・ＡＺ−１ともに名車と言えよう。

各車の違い（番外編）　どの車が一番非実用的か

　「走る楽しさを追求する」、という言葉を換言するなら、「いかに非実用的・非日常的であるか」ということにもなろう。この３台のうち、様々なメディアの評価を総合すると最も非実用的・非日常的な車はＡＺ−１であるとされている。しかし私はこれにあえて反論したい。最も非実用的・非日常的な車はビートである。これは決してビートをけなしているわけではない。また、ビートのユーザーもこう言われたほうがうれしいのではないだろうか。
　それはなぜか。まず、ＡＺ−１の方が荷物がたくさん積めるかもしれないからだ（ビートがクローズドの場合）。写真に示すように、ＡＺ−１はこれだけ荷物がつめる（もし冬なら二人分のコートも余裕で積める）。なお、この写真は２名乗車時のもので、助手席に荷物をおいていない場合の積載量である。
　また、ターボ故にパワーもある。ＮＡのビートはパワーを稼ぐために、普通の車では使用しないような高回転領域でエンジンを回し続けなければいけない。従ってビートが最も非実用的・非日常的な車といえるのだ。
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