パルシステム山梨にもの申す

 

森本 優

2021.4.8


令和3年(ノ)第12号損害賠償請求調停申立事件

申立人 生活協同組合パルシステム山梨

相手方 森本 優

 

答 弁 書

令和3年3月29日

甲府簡易裁判所 御中

相手方 森本 優

 

第1 申立の趣旨に対する答弁

 

 1  申立人の請求は認められない.

 との調停を求める.

 

第2 申立の原因に対する認否

 

 1  申立の原因の4「損害が発生するに至る事情」の(2)並びに(3)のイとウ,そして(4)については争う.

 2  申立の原因の4「損害が発生するに至る事情」の(3)のア,そして5「損害額について」は知らない.

 

 申立書の4「損害が発生するに至る事情」の(2)「相手方が現に供給した商品の内容」において,「相手方は平成30年以降,白米のもち米を供給すべきところ,8分搗きのもち米を供給していた」と断定している.その理由として,(3)「発覚の経緯」のイ「相手方からの聞き取りについて」において,晴山氏の「内容は今と同じ8分掲きだったのか」という質問に対して,相手方が「8分前後でやっている」と回答したからだとする.

 然し,相手方はそのような回答はしていないし,そもそもそのような質問は受けてはいない.

 今回(昨年末)初めて意識的に8分前後で出荷してみた旨回答したのであって,「平成30年以降,8分搗きのもち米を供給していた」とする申立人の主張は明らかに捏造である.

 

第3 相手方の主張

 

 相手方は大学卒業後,1980年代の後半から甲府の実家に戻り,今日に至るまで家業の農業に従事してきた.30年以上,無農薬・無化学肥料で米・野菜・果実を栽培し複数個所へ出荷してきたが,その出荷先の一つが今のパルシステム山梨(申立人)である.

 出荷し始めた当時は労生協であったが,郡内生協と合併してコープやまなしとなり,その後名称をパルシステム山梨に変え今に至っている.申立人とはかれこれ30年以上の付き合いである.

 その間,組合員からのクレ一ムがあれば誠実に対応してきており,一定数の組合員の支持を得てきたものと自負している.

 ところが,本年の正月明けごろ,産直担当の晴山氏が来られ,もち米の精米の度合いが足りないというクレームがあったということで,そのことに関して間き取りを行っていった.

 私の返答としては,正月用の白米のもち米として4回ほど小型の循環式精米機で搗いたが,昨年末は今までとは違って,8分搗きぐらいのものにして出荷してみた旨の返答をし,何故なら胚芽が多少残ったほうがミネラル等の栄養素がバランスよく摂れて体にもよく,また味にも深みが出てくるから,と説明した.

 ところがその後一週間ほど経って,晴山氏と事業部長の金子氏が来られ,私が3年前の2018年から8分掲きのもち米を白米として出荷してきたものと認定したから,その白米表示のもち米全量に対して代金の返還義務があるとし,13万円弱の支払いを要求してきた.

 精米程度が落ちると思われるものを出荷したのは今回だけである旨説明しても聞き入れられず,以前購入した組合員の「茶色だった」との証言を盾に,頑として3年分の代金の返還を迫られた.

 予断をもって聞き取りがなされ,一般論として話した部分も都合よく組み込まれスト一リーが作られてしまっている以上,このまま話し合いを続けても相手の主張を呑むことを強要されるだけだと思い,それ以降事業部との話し合いを一切拒否することにした.

 私は,申立人であるパルシステム山梨の他に,直売所やスーパ一の直売コーナ一にも農産物を出している.

 問題となっている白米表示のもち米も,正月用として申立人に出荷した余りを出していたが,店長や消費者からクレ一ムを頂いたことはない.また,申立人においても,今回のクレームを除いて,過去に白米表示のもち米に関してクレームが入ったとの連絡はいただいていない.

 直売所では,白米の基準はこれといったものはなく,私としても白米の基準や定義なるものを別段意識することなく,単に他の生産者が搗いてきているものに合わせて搗き,白米として出している.

 この点,申立人側は,「白米」と「分搗き米jとは明らかに違い,品質も異なったものと見倣しているらしいが,抽象化された概念の世界では確かにそうかもしれないが,感覚を扱う現実の世界では,その区別はかなり曖昧なものにならざるを得ない.

 即ち,確かに7分搗き程度の場合,白米との区別はつけやすいが,8分,9分と搗き進めていくと,「分搗き米」ではあっても,「白米」との区別も曖昧なものとなっていき,同時に品質も「白米」に近くなっていくことになる.

 そうなれば,組合員(一般的な生活者)にとって,厳密な意味での「白米」かどうかなんてどうでもよいことになるはずである.大抵の組合員の関心事は,安全性と食味だと考えられるからである.

 前出の「茶色だった」との組合員の証言も,感じ取った「茶色」が感覚上どの程度のものかはこの言葉だけでは分からず,かなり主観に左右されることに留意しなければならない.

 また,質問の仕方によっては,意図的に「茶色」という言葉を引き出すこと自体も容易なのであるから,この証言をもって,以前から8分搗きのもち米を出荷していたと断定するのは失当であろう.

 

 さて,この白米表示のもち米には申立人独自の品質規格基準なるものがあり,どうやら「分搗き米」は規格外の扱いを受けることになるらしいが,前述通り,感覚の世界ではその境界線は曖昧であり,そうであるなら,その判断を生産者側に負わせるのは酷である.

 ところで,申立人との基本契約書第4条2項に「商品の引き渡しは,甲の検査及ぴ受領により完了する.」とあるが,その趣旨は,生協(甲)は組合員に対して品質規格基準に適った産品を提供するため,そして生産者に対しては,隠れた瑕疵は別にして,引き渡し以降において免責を与えるためにも,検品の権利・義務を定めたものと解される.

 であるならば,相手方は出荷した時点で申立人に検査を求めていたのであるから,当然,申立人は必要な検査を行って受領したはずであり,同時に相手方は,隠れた瑕疵は別にして,それ以降免責を得たものと云えるのである.

 従って,引き渡しが完了した以上,相手方は,今回クレ一ムのあったものに対しては誠実に対応したいが,他のものに対しては何ら代金返還義務を負う謂われはないはずである.

 因みに,本件のように規格内か否かの線引きが困難な白米表示のもち米のような場合には,引き渡しの際は当然厳格な検査が申立人には求められてくるはずである.

 然るに申立人では,白米表示のもち米に関してそのようなまともな検査がなされたのは,相手方が検査の必要性を指摘した後であり,本年の1月最終回(1/25〜1/29配送)に出荷したもち米の時のただ一回だけであった.それ以前は数のチェックのみでその品質規格基準に照らした検査は一切無かったのである.

 そこで,もし,そのようなまともな検査がなされていないのだから引き渡しは完了していないとして,突然,申立人が「過去3年に亘って納品した白米表示のもち米が規格外と認定されたからその責任をとれ」と相手方に強要するとしたら,それは申立人自身が義務をまともに履行しなかったために生じた損害を,自身の怠慢を伏せたまま相手方に全て転嫁しようとするものにほかならない.

 そして,仮に3年前から申立人によってその厳格な品質規格基準に照らした検査が行われていたとしたら,規格外との判断が出た場合であっても,その時点で相手方は素早く適切な対応が取れたであろうことも勘案するなら,まともな検査をせず,いつ責任を取らされるかわからない不安定な地位に相手方を縛り付けたまま,後になって責任を全て相手方に転嫁しようとするのは,契約法体系にも通底する信義則の原則に抵触し違法(民法第1条の2項・3項)であり,従って,申立人が主張する本件損害賠償請求は,権利の行使としてはやはり是認することはできないと云うべきである.

 

 ところで,申立人であるパルシステム山梨は独自生産者をどう見ているのか.

 上から目線で,単に「商品」を取り扱ってやっている貧弱な一自営業者としてしか見ていないのではないか.

 事業部とのやり取りの中で,「これからも取引を続けたいならこちらの要求を呑め」といった態度が垣間見られたが,そのことは今回提出した「質問書」の回答にも明確に示されている.

 昨年の暮れに送付した「豆餅」と「もち米」の単独商品企画書にある通り,1月下句から4月下旬までの計4回を企画し,1月分(l/25〜1/29配送)は申立人の品質規格基準に照らした検査を経て既に履行し終えているのである.

 何の連絡もなければ,それ以降の分も準備しておくのが当然ではないか.要求を春まない相手であったとしても,中止なり不存在なりの連絡を入れ,相手方の損害を極力減らすべきではないのか.

 この点申立人は,第1準備書面の第2「質問書に対する回答」の3において,申立人において企画を了承した事実はないとする.

 しかし前述通り,相手方は企画書に従って1月分は既に履行し終えているのである.当然契約の効力は生じていたはずである.

 また,申立人は,第3「申立人の主張」の2において,1月26日時点において取引の継続は協議事項だったとして,企画が実施されることは決まっていなかったと主張する.

 しかし,既に発生している契約の効力は,契約の解除がなされない限り4月末まで続くはずであり,1月23日付で金子氏・晴山氏に送信した相手方のメールでは,はっきりと4月末までの出荷の意志を伝えているのである.

 実際のところ,金子氏から送られた「協議事項」を含むメ一ルは1月の26目ではなく22日に届き,相手方が1月分を出荷している最中であったのである.そしてそのメ一ルに対して,1月23目付で上記のように相手方の出荷の意志を伝えたのである.

 とすれば,「協議事項」というメッセ一ジには,契約を解除するほどの強い意味はなく,依然として相手方は「もち米」と「豆餅」を供給する義務を負い,申立人はそれらを受け取る義務が継続していたはずなのである.

 従って,2月以降の企画を無断で中断する申立人の行為は,明らかに契約違反であり,損害賠償の対象となるのは明らかである.そして損害額は,1月分の売り上げを参考にし,2月・3月・4月の三回分として合計10万円ほどになる.

 

 話に乗らない相手に対しては企画そのものが不存在なのだから無視してよいと勝手に解釈しているとしたら,まことに不誠実極まる態度である.

 このような状態になっている以上,調停の合意は困難である.

 早期に訴えを提起されたい.

以上

 

疎明方法

1  疎乙第1号証 単独商品企画書

2  疎乙第2号証 請求書

 

添付書類

 

1  副本 1通

2  疎乙号証の写し 各1通


目次

ホームページに戻る