ぐうたら農法による米作り体験教室2009

第一回見学会資料

 

森本 優

2009/04/28


 

なぜ雑草共生の「ぐうたら農法」なのか

H21.4.26

 

 自然は毎年異なって現れてきます。その為、圃場も毎年異なった自然状況下に置かれ、一度も全く同じ稲作りをすることはないとも言えます。毎年、圃場の状況と天候を見極めながら、それらに沿った作業を進めてゆかなければなりません。

 しかしそうは言っても、試行錯誤によって得られた様々な出来事を分析し整理してゆけば、共通した無視できない重要なポイントも見えてきます。

 そこで、それらのポイントを分析し再構築して、「ぐうたら農法」が如何に科学的でかつ合理的な農法であるかを示したいと思います。各論では、総論を踏まえ、これから数回に亘り「ぐうたら農法」による米作りにおける注意点を具体的に説明してゆきます。

 

総論

 

雑草は土を肥やす(無肥料・不耕起)

 クローバー等のマメ科植物の根に共生する根粒菌は窒素を土中に固定します。

 また、雑草の根は土を耕します。更に、植物に必要な無機養分を土中深くから吸い上げて茎や葉を形成しますが、それらが枯れると、微生物の働きで分解され稲が生育するための養分となります。

 

雑草は田の草を抑える(無除草剤)

 畑の雑草を湛水して枯らし、圃場の表面にマルチ状に覆うようにしておくと、田に生える草は物理的に激減します。また、鶏糞を入れた上で湛水すると、草ワラと鶏糞が発するアクにより発芽したばかりの田の草は枯れてしまいます。

 

雑草は鳥の食害を防ぐ(直播)

 直播の場合一番困るのは、雀・鳩等による食害です。目を付けられたら甚大な害を被ります。そこで、鳥に見つからないように工夫しなくてはなりませんが、雑草を繁茂させても、それを刈って覆うだけでは駄目です。乾燥するとワラが軽くなり雀が潜り込んでくるからです。

 私の場合、ロータリーで籾種を地面に落としながら、根を付けたまま草を押し倒し圃場を覆ってゆくことにより、鳥の食害を防いでいます。

 

雑草は籾種の発根・発芽を促す

 根付の雑草が水分を地表に供給するので適度な湿り気をもたらし、一定の地温と充分な酸素があれば、籾種は種根を土中に深くおろすことになります。私の場合草を倒しますので、地温は充分上がってきます。

 

雑草は病害虫に強い苗を育てる(無農薬)

 生育スペースがあれば、雑草との競争の中で強い籾種は根を下ろし、葉を伸ばしてきます。反対に弱い種は自然に淘汰されます。そのため、病害虫に強い苗が残ることになります。

 

各論

 

第一回の見学会では籾種を直播する前の圃場の様子を観察していただきます。

 米収穫後、麦・クローバーを主体に草を作りますが、二十数年もやっていると他の草も入り込んできます。そこで、草の性質を見極め、入り込んでもらっては困る草は早めに除去しなければなりません。基準は、湛水して籾苗より早く根腐れを起こすかどうかです。(ラジノ系クローバーの場合、水が充分深く溜められない圃場では、一度根腐れを起こしても、再度ホフク茎から根を出し繁茂してくるため、管理・抑制が非常に困難になります。また、レンゲ草の場合、過繁茂すると籾種の生育スペースが確保できず、過湿状態となりがちなので、健全な苗作りに苦労します。)

 

 発根・発芽対策としては、繁茂した草の上から籾種を播種しても、前年度入れた稲ワラや雑草の上に止まってしまい発根ができないか、発根・発芽しても、生育スペースがなく草に覆われたまま枯れてしまいます。そこで、私の場合、レーキーやロータリーを入れ、ワラや草の上の籾を地面に落とすと同時に、覆う草を倒して必要最小限の生育スペースを作ってあげています。あまり強くロータリーを入れますと地面が露出してそこから田の草が生えてきますし、雀の食害にも遭うようになりますので要注意です。

 

 麦等の草が倒されると、抑えられていたクローバーが繁茂し始め圃場を覆うようになります。そのクローバーの茂みの中で籾苗が葉を伸ばし始めています。クローバーの繁茂が激しい場合には、クローバーの葉を造林鎌等で一・二度払い、籾苗の生育を助けることも必要になってきます。

 

次回は、圃場に水を溜めるタイミングと、その後の引水の駆け引きを中心に説明したいと思います。


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