地方自治の統治機構

 

一厘の仕組(日本編)

森本 優(2005/10/18)


 地方分権の流れの中で、地方自治に希望が持てるとするなら、それは民(国民)に一番近いからであり、市民参画社会が、正に人権の砦となり、これからの日本国の礎となりうるからに他ならない。

 そのため、市民参画社会を進めるために、市民の声を提言・答申という形で直接市政に反映させうる第三の常設機関を、自治基本条例に盛り込むことを提案したい。

※ 第三機関では、公募市民、自治会連合会、テーマ別各協議会、専門家・有識者、等の協議による、条例案、政策立案・企画・実施・評価、等に関する提言・答申をなし、地域エゴ・団体エゴを排除して公平性を担保するよう配慮する。又、提言・諮問・答申・説明等は、逐次情報を市民に公開するものとする。

 

 

 以下、自治基本条例の目的と、それを達成する手段(統治機構のあり方と最高法規性)を、日本国憲法との絡みで少しばかり論じてみたい。

 

1 日本国憲法の目的

 すなわち、人権規範が目的で、統治機構(国会・内閣・司法・地方自治制度)は、そのための手段の関係に立つ。従って、手段としてある代表民主制・憲法改正権によって、個人の尊厳に基づく人権並びにその前提となる平和主義が蔑ろにされるとしたら、それは本末転倒である。

憲法11条  国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与えられる。

同12条  この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであって、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。

同13条  すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

同97条  この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であって、これらの権利は、過去幾多の試練に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。

同98条  (1)この憲法は、国の最高法規であって、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。

 

2 日本国憲法の最高法規性

 すなわち、人権保障の体系であることが最高法規性の根拠である。

 

3 自治基本条例の目的(憲法92条「地方自治の本旨」)

 日本国憲法下の条例である以上、人権保障が究極的な目的である。

 そのため、その手段として、市民が市政に直接参画する権利が保障されるべきであり、その権利を担保する「地方自治の本旨」(住民自治)に相応しい統治機構(自治システム)が必要であると考える。

 

4 地方自治の統治機構

 市民の声を提言・答申と言う形で直接市政に反映させうる第三機関を、行政府・議会とは別個の独立した常設機関として、基本条例に盛り込むことも、民主主義による人権保障という憲法の趣旨からは当然認められるはずである。

 

5 自治基本条例の最高法規性

 市民参画を進める基本条例を皆で作り、絶えざる参画により権利を行使し義務を負うことで、人権感覚を磨きながら、自らの、延いては市民や国民そして地球市民の、個人の尊厳に基づく人権を守り続けてゆくこと、ここに、自治基本条例の最高規範としての正当化根拠があるのである。

 

以上 


目次

ホームページに戻る