有限責任事業組合(LLP)結成に寄せて

 

森本 優

2008/05/21


 

 時代は今、大きな音を立てて変わりつつあります。

 

 進行する地球温暖化と異常気象・自然災害・食糧危機、拡散する地域紛争とテロ、市場経済によるエネルギーや資源の争奪戦、国内外での所得格差の拡大、投機マネーの動きと世界経済の混乱、等々。

 このような大変動の渦中にあって、個々人の人間としての誇りや尊厳は踏みにじられ、地域コミュニティーは物理的にも、また精神的にも崩壊してゆきます。唯物功利の穢土では、道徳観念は衰退せざるを得ないからです。

 今後、温暖化を始めとした地球環境の急激な変化による影響が、自然災害という形だけでなく、政治・経済の分野でも徐々に大きく現れ出し、それに伴い、近い将来、砂漠化・洪水・地震等の災害や放射能汚染等による環境難民、食糧や資源等をめぐる地域紛争、等々、日本だけでなく全世界をも揺るがす大変な事態が頻発して来るようになるはずです。

 このような困難な時代において、自身が住む地域を真に愛する人が今務めてなすべきことは、今起こりつつある時代の大きな波に呑み込まれながらも、人間としての誇りや尊厳を保ち、それに洗い流されることのないしっかりとした基盤・礎を各地域に築いてゆくことなのではないでしょうか。

 その為には、地域住民が主体的に、各地域が抱える問題を共有し合い情報を交換し合う中で、知恵を出し合って解決の糸口を見出すことができ、更にはお互いが育ち合うことのできる場を、早急に整備してゆくことが必要なのだと考えます。

 そして、自らの地域コミュニティーを再生し活性化させるため、地域にある多様な資源・人材と技術・ノウハウとを活かし、自治体や事業体も含めた多様な主体同士の連携の下、景観や自然環境にも配慮した地域循環型の協働社会を各地域に創設してゆくことが必要だと考えます。

 

 ところで、男という性は、どうも拡大志向が強いようです。戦国時代・植民地主義時代などでは、領土の獲得に奔走し、戦後の経済戦争では、経営の拡大化・効率化・合理化等により世界市場の獲得に躍起となっています。そのため、ややもすると男社会は、資本の論理に絡めとられ自らの足元を見失ったかのようでもあり、過労死や自殺者の増加にもつながっています。

 この点、女の性は現実的であり、また地域的でもあります。

 そのため、今後の地域づくりの主体的な担い手として、非営利活動だけではなく営利活動(コミュニティービジネス)においても、女性が社会参加しやすい環境を整える必要があり、そのための何らかの自覚的・効果的な支援策が求められます。

 

 さて、女性の活動が比較的活発な団体として生活協同組合が挙げられますが、この生活協同組合を核に、幾つものLLPや企業組合なりNPOなりが連携し協働し合って、地域循環型の協働社会をこの地に準備できるなら、来るべき時代の大きな礎になってゆくのではないでしょうか。(このLLPは、3年ほど前に民法上の組合制度の特例として創設されたもので、その特徴は有限責任と内部自治原則、そして構成員課税にあります。)

 それぞれ異なった個性と技術・能力を持った人が、数人ずつ集まってLLP等を結成し、それぞれの才能を活かしあい補強し合いながら、事業体単位を構成して活動してゆくのが面白いし、また効果的・機動的だと思います。

 特に生協では、設立時から組合員活動を育ててきた実績がありますので、その組合員活動の延長線上に、コミュニティービジネスを、問題意識を共有する組合員同士で立ち上げ運営してゆくことが、時代の要請として今強く求められているのではないでしょうか。

  また、そのように組合員の活動が広がることは、生協の存在意義を見直し、自らの礎を再構築することにもつながるはずです。

 それは、「寄らば大樹のかげ」的な安定志向ではなく、独立した個々の才能や事業体が、自由な風となって連携し補強し合って事業目的を達成しようとするものです。

 しかもそれは、その過程でLLP等を再編成しながら状況に応じた変化ある活動をしてゆく遊撃戦であると同時に、また、共通目的(理念)に向かって全国・全世界各地の活動主体と協働しながら統一戦線を組むものでもあります。

 このような輪が全国に波及し、やがてこの地に再び大きな波動となって戻ってくるような時、新しい時代の幕開けとなることでしょう。

 

 以上のような想いを抱いて、有限責任事業組合の一員として参加いたしました。

 今後ともよろしくお願い申し上げます。

 


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