能舞 相聞   (そうもん)< 〜 観世流>  

日時:2000.02.12 NHK教育TV放送(千駄ヶ谷・国立能楽堂での公演)
出演者:
舞:梅若晋矢

その他の出演〜 笛、小鼓、大鼓、地謡(じうたい)


内容:
  演能時間は15分くらいと短い舞いだけの演目。芥川竜之介の詩歌を元にしている。”若女(わかおんな)”の面(おもて)を付け、全身を白装束に包んだ演者がただ一人、囃子に合わせて舞う。内容は恋人を失った女性の哀しみを表現するもの。交互に緩急のリズムで囃子方が囃すと、深く哀しみにくれる感情と、激しく狂乱する姿が交互に表現される。手に持った笠を大きく投げる場面も。

感想:能は古いものだけをただ演じると思っていたが、わりと最近の芥川竜之介の詩歌を取り上げる試みもされているのだと知った。能の基本は伝統的な手法を踏襲しながらも、現代人の思想を取り込むというところか。三島由紀夫も「近代能楽集」の中で5つの現代風の能を書いているらしい。振付けは観世榮夫。


狂言 茶子味梅   (ちゃさんばい)< 〜 和泉流>  

日時:2000.02.12 NHK教育TV放送(千駄ヶ谷・国立能楽堂での公演)
出演者:
シテ・夫(唐人):野村万作
アド・妻:野村萬斎
小アド・教え手:野村万之介


その他の出演〜 笛、小鼓、大鼓、太鼓


内容:
  漫才を見るように笑いを誘うのが狂言。内容は語りだけの掛け合い漫才的なものだけでなく、長い舞いもある。その昔、倭寇にさらわれて日本へ連れてこられた唐人(中国の人)を夫にもつ妻が、夫が口にする”日本人無心我唐妻恋”という言葉の意味を知り、腹を立てるという話。前半、アドの妻が小アドから夫の言葉が、「日本人は心無い、中国にいる妻が恋しい」と教えられる。これに腹を立てた妻は好きで結婚したのではないと言う。後半、そんな妻も夫の機嫌を直してもらおうと酒をすすめる。シテの夫が話す言葉は中国語らしく、全然意味が分からない。妻のほうは夫の言葉は分かるらしく、夫に酒を飲ませるうちに自分も少し飲まされ、夫に舞いを舞えと言われる。ここで囃子に合わせて妻が舞う。次は、妻が夫に中国には”楽(がく)”というものがあると聞いた。楽を舞えと頼む。夫も舞う。舞い終わった後、やはり中国が恋しくなって例の言葉を口にしてしまい、また妻が怒ってしまう。妻が夫を追いかけて退場。

感想:
  妻役の野村萬斎(1966生まれ)はTVやドラマなどにも出演したりと、私も名前と顔を覚えていた。まともに狂言をやっているのを見たのは初めて。最近は狂言界では、和泉流の和泉元弥(1974生まれ)が次のNHK大河ドラマの主演に決まったりと、表現の舞台を変えて活躍する世代が注目されている。TVなどで顔を売っておいて、ホームグラウンドの狂言にも興味を持ってもらおうという狙いもあるのかも。もう一つは若い頃から演技を学んだ彼らが俳優としての素地がしっかりしているのが、そこらへんのモデル上がりやアイドルなんかよりも、若くても大抜擢される理由かも。
  唐人の夫は白く長いサンタクロースのようなヒゲを付け、中国風の帽子と装束を身に着けていた。

参考資料:
「能楽ハンドブック」 戸井田道三・監修、小林保治・編(\1,500 三省堂)

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更新日: 00/07/06