歌舞伎 青砥稿花紅彩画 〜 白浪五人男
(あおとぞうしはなのにしきえ 〜 しらなみごにんおとこ)

日時:199x.xx.xx  xx:xx〜 NHK教育放送(”劇場への招待”:国立劇場・収録)
河竹黙阿弥/作

配役:
・早瀬主水の娘(実は弁天小僧菊之助):市川新之助
・若党・四十八(実は南郷力丸):市川男寅
・浜松屋幸兵衛:坂東吉弥
・浜松屋の倅・宗之助:坂東亀寿
・忠信利平:市村家橘
・赤星十三郎:市川右之助
・番頭・与九郎:市村鶴蔵
・鳶頭・清次:片岡十蔵
・玉島逸当(実は日本駄右衛門):市川團十郎

内容:
 
第一幕:
一、浜松屋見世先(みせさき)の場
  鎌倉・雪ノ下にある呉服屋・浜松屋を早瀬主水の娘とお供の若党・四十八が娘の婚礼の品を求めて訪れる。店頭で娘が”雛の子(?)”と呼ばれる小物を見ながら、懐から似たような小物を取り出し、こっそり商品と混ぜる。そして、見終わった後に混ぜた小物をそこへ落とした物を拾うように取り上げ、懐へ戻す。これを万引きと見た浜松屋の手代が番頭に告げる。
  店を去ろうとする二人を番頭が止め、自警団に相当する鳶頭が登場。番頭が娘の懐から雛の子を取り上げ、それ見たことかと万引きを責める。このドタバタの最中に番頭は算盤で娘の眉間を割ってしまう。
  若党・四十八は万引きと言いがかりをつけられたと怒り、雛の子は別の店で買ったものであることを証明する。これに狼狽した番頭は平謝り。四十八は嫁入り前の娘を傷物にされたと、ただでは済まないと番頭に迫る。そこへ浜松屋の倅・宗之助が登場。倅が謝っても許さず、店の主・幸兵衛を呼び出す。
  主は鳶頭を交渉役に金で解決しようと試みる。10両(現在の6,70万円相当)を渡すが四十八は納得せず、100両ならと値を吊り上げようとする。実はこの二人、最初から店に因縁をつけて金をゆすろうとする盗賊の一味。100両と聞いて鳶頭は逆切れ。主はそれを抑え、これ以上の面倒は世間体に悪いと判断し、100両を払う。100両を受け取り納得して揚々と引き上げようとする二人を店の奥で、事の一部始終を聞いていた玉島逸当が引き止める。
  玉島は娘が二階堂信濃守の家中、早瀬主水の息女であると名乗ったが、信濃守の家中には早瀬主水などと言うものはいない、娘の二の腕に刺青が見えた、男に違いないと言う。
  正体を見破られた娘に化けていた弁天小僧は開き直る。着ていた娘の着物の前をはだけ、胡座をかく。桜の刺青を見せ、見栄をきって名乗る。
  開き直った二人は番屋へ突き出せと、逃げようともせず、店先に居座る。逆に、ゆすった金は返すが、言われのない万引き扱いをされ、眉間まで割られたのだからと、膏薬代を払えと、ただでは帰ろうとしない。
  まんまと膏薬代20両をせしめるとようやく、二人は捨て台詞を残して花道へ去る。
  主は玉島にお礼を言うと、ご馳走をしたいと玉島を店の奥へ案内する。これで幕(ここまで約1時間)。

第二幕:
一、稲瀬川(いなせがわ)勢揃いの場
  浅葱の幕が上がると舞台は桜並木の堤。花道からは、白浪五人男(要は盗賊団である)が揃いの衣装(藍色地、模様はみな異なる)と番傘を持って、順番に登場。五人衆勢揃いの派手なデモンストレーションが始まる。弁天小僧、忠信利平、赤星十三郎、南郷、駄右衛門(首領格)の順で花道に並ぶと、各々髪型も違い、個性的である。
  五人は駄右衛門を先頭に舞台に進むと彼らの背後の堤防に捕り手が10人登場。向って右の駄右衛門から順に名乗りを上げる。五人が名乗り終わった後、短い捕物があって幕。

感想:市川團十郎親子の共演。新之助は女装をして女形に挑戦。女形とは行っても男が女装したという役であるから、化けの皮を剥がされた弁天小僧が開き直る場面は、娘から盗人へ態度がころっと変わり、見所の一つ。
  なんのため駄右衛門は玉島に変装して、弁天小僧ら二人を引き止める必要があったのか。同じ盗賊でグルになっているなら、なぜ100両をみすみす20両に減らすようなことをする必要があったのか?多分、白浪五人男は盗賊とは言えども義賊という設定らしいので、ゆすりとは言え正々堂々と金持ちの呉服屋から金を巻き上げるための作戦なのだろう。早瀬主水の娘のままでは、どうせすぐに嘘はばれると読んで、最初からいわれのない万引き扱いと店の人間の暴力をネタにゆすろうという計画。店の人間にも非があるのだから、大ゴトには出来ないはずだから。100両を捨て、確実に20両を取るとは、義賊ならではの捻った演出だ。
  そう考えると、この作品に初演当時の時代の臭いを感じとることができる。当時の一般大衆には義賊を一種、英雄視する向きがあったのだろう。

(いつ録画したか不明のビデオテープから見つけた作品)


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更新日: 00/07/06