歌舞伎 京鹿子娘道成寺  
きょうがのこむすめどうじょうじ

日時:2001.04.08(sun) 22:00 〜 NHK教育放送(1979年、歌舞伎座・収録。昭和54年6月16日放送のもの)

配役:
白拍子花子:中村歌右衛門(六代目、成駒屋)
謹請坊:實川延若
東方坊:中村芝翫(七代目、成駒屋)
青龍坊:中村雀右衛門
清浄坊:中村吉右衛門(二代目、播磨屋)
ほか

内容:
  去る3/31に亡くなった歌右衛門さんを偲んでの放送。

 成駒屋の紋の入った幕が開くと、後ろに紅白の幕、向かって右手上に道成寺の鐘が吊ってある。花道を「聞いたか、聞いたか」「聞いたぞ、聞いたぞ」と唱えながら大勢の坊主が進んでくる(中堅、若手の俳優たち)。短いやりとりの後、整列して正座すると、その後ろに浄瑠璃方が座った台が滑り込んでくる。
 浄瑠璃が始まると花道から振袖姿の花子が登場。舞台の手前で舞う。60代とは思えない軽やかな舞。
 寺の門に花子が進み出る。坊主たちがこれを迎える。花子は法要があると聞いてやってきたと言う。坊主との問答の後、寺内に通すと、東方坊が花子に烏帽子を被って舞ってくれと頼む。烏帽子を受け取ると花子は一旦、幕間へ下がる。
 坊主達のやり取りの後、紅白の幕が上がると更に紅白の幕。舞台中央に烏帽子をつけた花子が現れる(赤が基調の晴れ着に替わっている)。その後ろには桜色の衣装の囃子方が居並ぶ。いかにも春らしい。その謡に合わせての舞。花子自らが謡い、舞う場面も。途中、背後の紅白幕が上がり、満開の桜の京景色。
 一旦、烏帽子を取り外し、鐘に繋がれた綱に烏帽子を掛け、再び舞う。更に髪飾りを付け直し、舞いながら衣装の早替わり(草色っぽい着物へ)。それに小坊主(現・中村橋之助ら二人)が絡む。
 舞の後、坊主二人が覆う赤い幕の奥に隠れると、再び姿を現したときは衣を一枚外し、笠を被り、両手に繋がった笠を持つ。
 一旦、幕間に下がると赤い衣に、骨だけの傘をもった妙な出で立ちの坊主たちが現れて、一列で舞う。
 これが下がると、赤い幕に隠れながら花子が登場。今度は紫が基調の晴れ着に替わっている。威勢のよいお囃子から一転、しっとりした謡と三味線による演奏に合わせての舞。手には紋入りの手拭。これを小道具に色っぽい踊り。
 また一旦、幕間に下がると今度は衣を一枚下ろした胸前に小さな太鼓を付けて登場。両手にバチで、太鼓を叩きながらの舞。
 次に下がって登場したときは淡い藍(?)の晴れ着。またこれもすぐ早替わりでピンクの衣に。両手には見たことのない楽器(?)。小さなタンバリンのようなもの。舞が終わると鐘がするすると降り、その上に花子が乗る。
 衣を一枚脱ぐと、蛇の鱗のような模様の衣に。ここで見栄をきると幕となる。

感想:いわゆる舞踏劇(歌舞伎の”舞”のジャンル)というやつである。
 何より腰がしっかりしている。決してまっすぐに立つことはない。常に膝を軽く折り、姿勢の美しさを出す(中腰というのか?)。そして独特の首使い。器用に首を水平に左右に動かす。1時間の間ほとんどが歌右衛門の舞である。息も切らせず、平然と舞い終えるところが凄い!それにしてもTVとは残酷だ。白粉をしているとはいえ、さすがにカメラのアップには年齢は隠せない。しかしそんなことは忘れさせるほどのオーラを発している。

*広辞苑によると「白拍子」とは遊女のことであるが、雅楽の拍子の名でもあり、歌舞のことでもある。これを歌い舞う遊女を指してこういうのだろう。

* 04/01より日経朝刊の文化欄(最終面)連載コラム「私の履歴書」に家主長兵衛役の中村富十郎さんが執筆中。

参考資料:歌舞伎ハンドブック(\1,500 三省堂)

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更新日: 01/04/21