歌舞伎 本朝廿四孝 − 十種香の場  
ほんちょうにじゅうしこう

日時:2001.04.08(sun) 22:00 〜 NHK教育放送(1983年、歌舞伎座・収録。昭和58年3月27日放送のもの)

配役:
謙信の息女・八重垣姫:中村歌右衛門(六代目、成駒屋)
花造り箕作、実は信玄の息子・武田勝頼:尾上梅幸
腰元・濡衣:中村芝翫(七代目、成駒屋)
長尾謙信:片岡仁左衛門
原小文治:實川延若
白須賀六郎:中村福助(現・梅玉)
ほか

内容:
  四段目、謙信館

 幕が開くと、そこは謙信の屋敷。向かって右端に浄瑠璃方が構える。
 屋敷の右手は八重垣姫の部屋、反対側が濡衣の部屋。襖を開けて中央に勝頼が登場。許婚の勝頼の切腹を聞き、姫と腰元は亡き勝頼の菩提を弔っている。(姫の舞)濡衣は立派な裃姿の侍の箕作の姿に驚く(黒の装束)。一方、姫の方は襖を少し開けて、そこに死んだはずの勝頼を見る(赤の振袖)。
 身分を隠し、謙信の家臣として召し抱えられた勝頼であったが、切腹させられた(理由は?)。しかし実は箕作が身代わりになっていたのだ。亡き勝頼の面影を映すその侍に心を動かされる姫。最初、勝頼としては自分の身代わりになって死んだ箕作の振りをして、姫を突き放す。
 濡衣は諏訪法性の兜を盗むなら仲立ちすると応える。それを聞いた姫は彼が勝頼本人であると確信する。(姫の舞)
 涙の再会となり寄り添う二人の前に、謙信が登場。すぐさま跳び離れる。謙信から文箱を預かり、使いのため勝頼は花道へ消える。
 浄瑠璃と三味線がくるっと回って交代。六郎が呼び出される(忍者のような帷子を着る)。デモンストレーションをして見栄を切ると花道へ去る。謙信は六郎に勝頼を討つよう命じたのだ。次に小文治が呼ばれ、六郎の後詰にと、後を追わせる。
 またも勝頼との別れとなり、哀しむ姫。濡衣を武田家の回し者と見破った謙信。
勝頼に迫る危険を知らせようとする濡衣を押しとどめる謙信。ここで幕。

感想:いわゆる義太夫狂言。
 去る3/31に亡くなった歌右衛門さんを偲んでの放送。
 八重垣姫は歌舞伎のお姫様でも難しい役とされる”三姫”の一人。
 謙信や勝頼など実在の人物が登場するが、内容はかなり脚色されたフィクションらしい。
 原小文治や白須賀六郎らは、デフォルメされた隈取。それだけで眼を楽しませてくれる。これも歌舞伎の面白さ。意味のない一人立廻り。派手派手な衣装。
 この場の前後には更に奇想天外な物語が織り込まれているらしい。

* 04/01より日経朝刊の文化欄(最終面)連載コラム「私の履歴書」に家主長兵衛役の中村富十郎さんが執筆中。

参考資料:歌舞伎ハンドブック(\1,500 三省堂)

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更新日: 01/04/26