歌舞伎 助六由縁江戸桜
(すけろくゆかりのえどざくら)
♪日時:2003.10.26(sun) 22:00 〜 NHK教育放送「劇場への招待」(2003年1月歌舞伎座・収録)
♪分類:純歌舞伎(歌舞伎十八番の一つ)
♪配役:
花戸川助六、実は曽我五郎:市川團十郎
白酒屋新兵衛、実は曽我十郎:尾上菊五郎
髭の意休、実は伊賀平内左衛門:市川左團次
三浦屋・白玉:中村芝雀
三浦屋・揚巻:中村雀右衛門
福山かつぎ富吉:尾上松緑
曽我満江:澤村田之助
口上、くわんぺら門兵衛:市川段四郎
ほか
♪内容:
舞台は江戸・新吉原の遊郭・三浦屋の軒先。赤い布を掛けた床机が並ぶ。物語はこれ以降、全てこの場所で展開する。
1.口上:
幕が開き、お正月らしい新年の挨拶で始まる。
2.
河東節の三味線と歌。まずは店内から店先へ傾城五名が出てきて、居並ぶ。彼女らが噂をしていると花道から酔い心地で揚巻が大勢のお供を率いて登場。ただでさえ豪奢な花魁衣装。更に背中にはお正月らしくシメ飾りをイメージした飾りも。床机に腰掛けた揚巻に文使いから文が渡される。文に目を通す揚巻。花道より白玉(揚巻の妹分)が登場。それに髭の意休が、更に男伊達五名(意休の子分)が続く。揚巻を中心に向かって左に白玉、右に意休が床机へ腰掛ける。意休は白髪、白髭の老人。揚巻の恋人・助六を巡って、揚巻と意休が言い争う。腹を立てた揚巻が花道へ向かって立ち去ろうとして、それを白玉が宥めて、三浦屋店内へ入らせる。白玉もこれに続く。
3.
花道から蛇の目傘を手に、下駄を鳴らして助六が登場(江戸紫の喧嘩鉢巻)。花道上で様々な型で見得を切る(傘を広げてくるくる回したり、すぼめて頭から被ってみたり)。店先の床机に腰掛けた助六に傾城達から両手一杯にキセルを渡される(モテモテ振り)。それを見ていた意休を挑発するように(理由は後で分かる)、卵色の足袋の指先でキセルを抓んで、意休に渡そうとしたり、下駄を意休の頭に載せてみたりする。意休は相手にしない。
店から出て来たくわんぺら門兵衛(意休の子分)と福山かつぎとの喧嘩に割って入る助六。門兵衛、朝顔仙平(これも子分)が喧嘩を売るのを受けて、助六が名台詞を発する(威勢良く名乗りを上げる)。門兵衛、仙平を打ちのめす。そこに廓の若者が大勢集まって来て大騒ぎとなる中、意休や傾城らは店内へ消えていく。
4.
助六一人となった店先に兄の白酒屋新兵衛が現れ、喧嘩をしている弟を責める。しかし弟から紛失した刀(友切丸)を探すためにわざと侍に喧嘩を売り、刀を抜かせては調べていると聞いた兄は、逆に喧嘩の売り方を弟から教わろうとする。通りかかった田舎侍や町人に喧嘩を売っては、兄弟は彼らに股をくぐらせてみたりする。そこへ店内から揚巻が編み笠を被った人物と出てくる。まずは助六がその人物に喧嘩を売るが、笠の下に隠れた素顔を見て驚く。次に兄が同様に喧嘩を売るが、その人物こそが2人の母親・満江であった。
満 江は兄と一緒に三浦屋を去っていく。そこへ再び意休が現れると、咄嗟に助六は床机に座った揚巻の背後へ回り、裲襠(うちかけ)の下に隠れる。それを知ってか知らずか、意休は揚巻の隣に腰掛ける。その後ろで助六が意休の足をつねったり悪戯をする。怒った意休はついに刀を抜くが、それこそが助六が捜し求めていた友切丸であった。しまったと思ったか意休は刀を鞘に収め、再び店に入っていく。助六はそれをすぐには追わず、意休の帰りを待ち伏せすることにし、花道へと走り去って幕。
♪メモ:
正月の公演らしく新年を迎えて、より華やいだ舞台。傾城たちの衣装もそう。
物語の背景を知らないと何のために助六が店先で喧嘩を売っているのか、訳がわからないかも知れないが、それを脇に置いておいても楽しめる舞台。
威勢の良い台詞の助六、見得も極まっているし、番組冒頭のインタビューで團十郎が「日本一のいい男のつもりで演じた」と語るように、いい男振りを発揮している。かつて江戸時代にこの舞台を見た江戸の男たちは、きっと影響されたことであろう。そういうところは現代も同じであろう。
助六兄弟が町人・里暁に股をくぐらせようとする場面では、里暁がさんざんギャグをかまして笑いを誘う。ケータイを小道具に使ったり、モー娘の名前も出てきたりして、あれっとも思わせるが、そこも現代の歌舞伎として工夫の一つと理解することに。
ところでコンビニなどで見かける巻き寿司弁当(?)に品名に助六と書かれたものがあるが、歌舞伎の助六と関連があるのだろうか。
♪参考資料: 歌舞伎ハンドブック(\1,500 三省堂)
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更新日: 03/11/22
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