歌舞伎 関八州繋馬  
かんはっしゅうつなぎうま

日時:2003.06.29(sun) 22:00 〜 NHK教育放送「芸術劇場」(2003.5月 国立劇場・収録)
作:近松門左衛門
分類:義太夫狂言

配役:
小蝶亡霊、後に土蜘蛛の精:中村鴈治郎
平親王将門娘・小蝶:中村扇雀
源頼光の御台所:坂東竹三郎
伊予の内侍:上村吉弥
源頼平:中村亀鶴
平井保昌:坂東吉弥
平親王将門息子・将軍太郎良門:中村翫雀
ほか

内容:
 序幕、- 江文の宰相館門前の場(初段)

 定式幕開く。竹本連中(浄瑠璃、三味線)の語り。闇夜の門前、小蝶が登場。頼平を手招き。関東で将門王国を誇った平将門は今は亡く、娘・小蝶はお家復興を願い、仇である源氏に入り込み、内部から切り崩そうと企む。源氏内部では頼光の後継ぎ問題があり、頼平の他に頼信の名が挙がっていた。小蝶、頼平は築地の奥に消えると、間もなく平井右京之亮ら頼光の使い2人が現れ、門を叩く。世継ぎは頼信と決まり、家督を継ぎ損なった頼平が宰相の娘と小蝶らと門前に出てくる。頼平と宰相娘は(花道へ)落ちていく。小蝶はそれを見送る。

 二幕目、- 源頼光館奥庭の場(二段目)

 定式幕開く。竹本連中の語り。腰元・更科、寝覚らが来客前に部屋の掃除中。二人は小蝶を呼びつける。彼女も腰元として仕えている。仇である源氏の世継ぎとなった頼信の婚儀が決まり、仇とは言え頼信に恋してしまった小蝶は落胆。ぼんやりしている彼女を二人の腰元たちが責める。庭掃除を始めた小蝶は、奥から声がかかり退出した二人がいなくなった隙に、庭にいた毒蜘蛛を捕まえる。その毒を自分の策略に用いようと考えた。頼光の御台所がそれを目撃。驚き、すぐに姿を隠す。
 奥へ小蝶が下がると、(花道から小蝶の兄)良門が登場。門前で合図の笛を吹く。小蝶が再登場。門前の竹を切り、節を抜くと、それを門へ突き通して伝声管の替わりに使い、兄妹は声を潜めて語り合う。兄は頼光を討つ手引きをするよう妹に命じる。その様子をまたしても御台所が陰で窺っている。ただならぬ事態と察した御台所は小蝶に小刀で斬りかかる。平井保昌も現れて、小蝶を襲う。息も絶え絶えの小蝶は死を悔やみ、自分が将門の娘であることを告白。そして頼信への想いも。保昌が太刀を振るうと小蝶の首が飛び、石灯籠の上に載る!門の内側で御台所が笛を吹くと、それを小蝶の合図と思い込み、御台所が開けた門から中に入る良門。闇の中、女の裲襠(うちかけ)を被り現れた保昌を小蝶と思い近づくと、格闘の末に捕らわれてしまう良門。(急に舞台が暗転すると)小蝶の首(口には毒蜘蛛)が飛び、保昌を襲う。それに救われた良門は(花道へ)逃れていく。

 三幕目、- 源頼信多田御所の場(四段目)

 定式幕開く。竹本連中の語り。舞台は御殿。四天王の奥方ら4人が、病いで伏せる伊予の内侍を見舞いに来ている。右手の御簾が上がると伊予の内侍が姿を現す(白装束、病い鉢巻)。苦しみ悶える。御簾が下がると、左手の御簾が上がり、竹本連中が二列で現れる(浄瑠璃、三味線各4名)。
 暗転し、舞台手前の花道からせり上がりで小蝶の亡霊(姫の衣装)が登場。薬湯を入れた器を手にしている。亡霊と化しても変わらぬ頼信への想い。それは伊予の内侍への嫉妬に変わる。薬湯をもって来たというと、上手の御簾が上がり、床から伊予の内侍が抜け出てきて薬湯を受け取ろうとする。御殿に上がった小蝶の手から蜘蛛の糸がパッと広がり、内侍に降りかかる。小蝶の妖力で弄ばれる内侍。四天王の奥方らが薙刀を手に救援に駆けつける。小蝶の上半身が振袖から土蜘蛛をイメージした衣装に早替わり(土蜘蛛の精に転生)。土蜘蛛の精の手から投じられた白い糸が広がり、奥方らに降り注ぐ。

 大詰、- 葛城山々上の場(五段目)

 定式幕開く。舞台には浅葱幕。竹本連中の語り。幕が切って落とされると、渡辺綱ら四天王が葛城山に良門を追い詰めた場面。葛城山は土蜘蛛の精の住み処。背景の穴から蜘蛛の巣を破って、土蜘蛛の精が登場(三幕目よりも恐ろしげなメイク)。良門が穴の奥に消えると、大勢の捕り手が土蜘蛛の精に襲い掛かる。続いて四天王が責めかかる。(花道から)頼平が登場。「蜘蛛斬り丸」と呼ばれる太刀を手にしている。刀の通力により妖怪変化は討ち取られることになるが、最期は土蜘蛛の精は勇ましく極めて、幕となる。

感想:
 近松門左衛門生誕350年。門左衛門の原作を取り上げた近松座を展開している鴈治郎。時代物、全5段。門左衛門最期の作。
 番組構成上、全5段全ては見ることはできなかった(三段目が略された)。壇ノ浦の源平合戦よりもずっと昔の源平の争い。坂東(関東)の地は平将門ら坂東武者の拓いた土地。新皇を自称した将門も反乱軍として征討されてしまうのだが、その子ら兄妹がお家復興のため戦う。

参考資料: 歌舞伎ハンドブック(\1,500 三省堂)

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更新日: 03/07/13