コミュニティの形成


 探鳥会は,典型的な Community of Interest です。
 早い話が同好者集団。「鳥が好き」,「自然が好き」,をキーワードに集まった集団です。

 同じ趣味,好みを持つ友達を増やすのは楽しいことです。特に最近では,男性の場合は定年後の楽しみとして,女性の場合は子育てに手がかからなくなったときか,本人または夫の退職後の楽しみとして,何か「生き甲斐」として打ち込めるものを探し,その同好者の友達を作ることで,新たなコミュニティを形成してゆこう,と言う傾向が強いようです。「第二の人生」(←この言い方はあまり好きではありませんが)を,どうやって作ってゆくのか, Community of Interest の選び方でも,随分と変わってくるかも知れません。

 探鳥会も,そんな人たちの Community of Interest として,しばしば利用されています。中には,これを「老後の生き甲斐」にしていいのかどうか,迷いながら探鳥会に参加しているのかな?と思ってしまうような,尻込みしがちで「様子見」なのが見え見えの人も参加していたりします。また,はっきりと「試しに参加してみた」とおっしゃる方もいます(ある意味,リーダーにかなりのプレッシャーをかけてますね(^_^;))。探鳥会を運営する側としては,こういう人たちも取り込める力量が無いと,探鳥会が成り立たない時代になりつつあるのかも知れないな,という認識を持ちはじめているところです。
 一方では,この「探鳥会」と言うコミュニティに,どっぷり浸かっている人も多く,その手の人たちが「常連」となっている探鳥会も多いのですが,まぁ,あんまり浸かりすぎて,カルトっぽくなってしまうと,「様子見」の人に威圧感を与えてしまいますから,その辺のバランス取りは,探鳥会の案内役の腕前の見せどころですね。

 こうしたコミュニティの形成は,趣味としてのバードウォッチング,自然観察などを楽しくするための,重要な要素です。
 しかし,探鳥会の中でも,どうしても作りにくいコミュニティもあります。
 それは,人数の少ない年齢層でのコミュニティ。
 1990年代前半,探鳥会の集合時刻になってみたら,私が一番若かった,と言う,笑って済まされないような状況が,しばしば起こりました。そして,自分の倍以上の年齢の人を相手に自然解説をする。……これはなかなか大変でした。やはり,年齢層によって,自然観察に対する姿勢や考え方は,けっこう違うのです。もし,私が担当者ではなく,参加者の立場だったら,やっぱり,探鳥会の場から遠ざかってしまったと思います。若い年代がいない→話し相手がいない→つまらないから,ますます遠ざかる……と言う悪循環です。私が学生の頃は,同年代の学生はもちろん,中学生,高校生も探鳥会で遊んでいたのですが……。
 明治神宮探鳥会は,他の探鳥会に比べると,スタッフの平均年齢が若かったのですが,既に子供を持つような年代になってきています。でも,スタッフが子連れで探鳥会に出かけるようになったので,結果的には,子連れでも気がねなく探鳥会に参加できる環境が整いました。実際,子供たちはすぐに仲良くなります。探鳥会が終わった後,「また来月も遊ぼうねー」と,子供同士で約束しているのを見ていると,探鳥会の中で,子供たちのコミュニティが形成されてきたんだなぁ,と感じます。もちろん,若い世代や子供たちを飽きさせないような内容が無ければ,リピーターになってくれませんから,その辺りの工夫も必要ですけどね。そうした努力も含め,次世代に希望をつなぐような観察内容とコミュニティの形成を,しっかりやってゆかなくてはいけないな,と感じる,最近の探鳥会です。


(2000年3月18日記)

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