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-目 次-
◆再生医療新法の制定と薬事法の改正
◆日本薬局方
◆エンドトキシン試験法とエンドトキシン規格値
◆独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)
◆再生医療におけるエンドトキシン規格
◆細胞培養におけるエンドトキシン汚染とその検出法
◆薬事法の改正と再生医療法の制定
iPS細胞やES細胞などの実用化が夢でなくなるのもそう遠くないこの時に、その治療法を従来の薬事法で医薬品や医療機器と同様に律するのはそぐわないとの考えから、再生医療に関する
新たな法律の制定が急がれていた1,2)。
2013年11月25日に「再生医療等の安全性の確保等に関する法」が交付された3)。この法律は再生医療等の迅速かつ安全な提供等を図るため、再生医療等を提供しようとする者が講ずべき措置を明らかにするとともに、特定細胞加工物の製造の許可等の制度等を定めた。
再生医療法の細部は今後、政令や省令等により決められる。
同時に薬事法の一部を改正し、法律名を「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(通称薬事法から薬機法へ)4,5)に改め、
医療機器の章を新たに設け医薬品と医療機器の規制を明確に分離した。薬機法によって医薬品と医療機器が区分され、それに新規の再生医療製品の安全性等の法が加わることになる。
二つの法律は公布から1年以内に、同時に施行される。
◆日本薬局方6)
日本薬局方は薬事法の第41条に基づき、薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて厚生労働大臣が定め公示する医薬品の規格基準書であり、通則、生薬総則、製剤総則、一般試験法及び医薬品各条から構成されている。
最新版は、平成23年3月に公布された第十六改正である。現在第十七改正の準備がされている。
◆エンドトキシン試験法とエンドトキシン規格値
エンドトキシン試験法は
医薬品の品質保証のための試験のひとつであり、
日本薬局方の
一般試験法にある
化学的試験法、物理的試験法、粉体物性測定法、生物学的試験法/生化学的試験法/微生物学的試験法
、
生薬試験法、製剤試験法、容器・放送材料試験法
のうちの
生物学的試験法/生化学的試験法/微生物学的試験法
の4.01
に
記載されている。
エンドトキシン試験法は、医薬品
(注射剤の他輸液製剤、生物学的製剤などを含む)の
製造における工程・品質管理、製薬用水のエンドトキシン管理、医療機器製造における工程・品質管理、透析液等の水質管理などに用いられている。
医薬品によってはエンドトキシン試験(リムルステスト)を阻害したり亢進する場合があるので、それを補正したエンドトキシン量を算出するように精細な試験法が記載されている。
注射剤に含まれるエンドトキシン量は、かってはウサギ発熱試験により行われていたが1980年に
Unites States Pharmacopoeia (USP)が初めてリムルステストのゲル化法を記載して以来、
日本薬局方やEuropean Pharmacopoeia(EP)も同調して
次第にリムルステストがウサギ発熱試験に代わるようになり
現在では全てリムルステストが行われている。
薬局方では注射薬のエンドトキシン規格値
が以下の式で設定されている7)
。なお、この場合の規格値とは医薬品に含まれるエンドトキシンの最大量であり、USPやEPではendotoxin limitと表現されている。
エンドトキシン規格値=K/M
K は発熱を誘起するといわれる体重1kg当たりのエンドトキシン量(EU/kg)であり、M は体重1kg当たり1回に投与される注射剤の
最大量
である。
静脈内投与ではK は5.0EU/ kg、脊髄腔内投与では0.2EU/ kgと規定している。ただし注射剤が頻回または持続的に投与される場合は、Mは1時間以内に投与される注射剤の最大量とする。
◆独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)
独立行政法人医薬品医療機器総合機構法によっており、薬事法を司っているが、薬事法の改正と再生医療法の制定により
独立行政法人医薬品医療機器総合機構法も改正され8)
、
再生医療等の安全性の確保等に関する業務も行う。
◆再生医療における混入エンドトキシン許容量
新規の再生医療法が制定され、周辺の法が新たに作られようが、混入エンドトキシンの最大許容量(規格値)は薬局方のエンドトキシン試験法の規格値
5EU/kg
がそのまま設定されると考えられよう。
◆細胞培養におけるエンドトキシン汚染
とその検出法
培養液(浮遊液)中のエンドトキシン量は容易に測定できるが、細胞に含まれる(表面に結合したものや中に取り込まれているものも含めて)エンドトキシンの測定には、細胞の破砕と抽出が必要と考えられる。
エンドトキシンは
トール様受容体4(
TLR 4)を発現している細胞に結合するが、その外にもCD11b/CD18などの補体受容体やスカベンジャー受容体にも結合する。これら受容体をもたない細胞でもエンドトキシンの疎水性部分と細胞膜とが疎水性結合する可能性もある。
細胞のエンドトキシンを測定する前処理法として
エンドトキシンが処理自体で不活化されない程度の濃度の
酸とアルカリでの処理法が提唱されている9,10)。膜に取り込まれたエンドトキシンを抽出することを想定していると考えられる。著者は、血漿の前処理法(0.02% Triton X-100で10倍希釈、70℃、10分加熱)をそのまま細胞にも適用することにより、水と加熱による細胞の破砕と加熱による細胞内のリムルステスト影響因子(各種プロテアーゼとその阻害因子)の不活化が望めるのではないかと考えている。
Triton X-100は細胞膜の溶解に作用するとも考えられるが、一般にはもっと高濃度のものが用いられておりこの濃度での効果には疑問がある。
菅ら11)は多白血球血漿(Leukocyte-rich plasma)の前処理にこの前処理法を用い、添加エンドトキシンの高い回収率を得ている。エンドトキシンと結合するC因子の結合力が強いこともこのような簡易な方法でも十分適用出来る要因と考えられる。
生体に投与する最終産物のエンドトキシン量のみにとらわれずに、培養途上での培養系に含まれるエンドトキシンに留意し、
細胞に思いがけない悪影響を与えないよう
培地や器具のエンドトキシン汚染に十分注意すべきであると著者は考える。
-リンク-
1) 再生医療法の制定の経緯等:BSフジプライムニュース(2014年2月7日)http://www.bsfuji.tv/primenews/text/txt140207.html
2)再生医療の実用化・産業化に向けて(平成25年9月製造産業局生物化学産業課)
http://www.jasis.jp/2013/pdf/result/130904_01_ezaki.pdf
3) 再生医療等の安全性の確保等に関する法律(平成25年法律第85号)
概要http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000030846.pdf
本文http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000030847.pdf
4) 改正薬事法http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S35/S35HO145.html
#1000000000008002000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000
5) 改正薬事法解説 セントラルパーク法務行政書士事務所
http://www.regulatory-affairs.jp/category/1992383.html
6) 日本薬局方 http://jpdb.nihs.go.jp/jp16/
7) エンドトキシン規格値:日本薬局方 http://jpdb.nihs.go.jp/jp16/ pp2031
8) http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H14/H14HO192.html
9)
松山 晃文他、
生体適用材料のエンドトキシン測定のための前処理方法及びエンドトキシンの測定方法
. 特許公開2007-64895.
10) http://bioimpact.jp/topix/archive/endsafepts
11) 菅重典、高橋学、小野寺ちあき、増田卓之、松本尚也、稲田捷也、遠藤重厚.
多白血球血漿を用いたエンドトキシン測定法の基礎的研究. 臨床病理 : 日本臨床検査医学会誌 60, 1045-1052, 2012
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