第12話 東久留米  

 日本に帰ってきてから、以前住んでいた東久留米市(東京・西武池袋線)に再び住むことにしました。アメリカに行く時に市役所に転出届を出しており、帰国後の転入届の手続きが容易で、また都心よりも郊外の広々とした環境のほうがいいと思ったからです。そもそも、なぜ東久留米に住んでいたかというと、入学した大学が、これまで江古田(同じ西武池袋線)のみであった校舎が、入間の山を切り開いて新しく校舎を建て、1・2年次は新しい入間校舎で、3・4年次はこれまでの江古田校舎に通うことになったからです。日本のアパート事情を考えると、敷金や礼金などのために引っ越すごとにたくさんのお金がかかるため、4年間通える場所ということで、江古田と入間の中間地点の東久留米にしたわけです。そう言えば、アパートの隣に新築一戸建が売りに出されていたのですが、その時の価格はなんと1,820万円でした。今や高級住宅街の東久留米ですが、その時に無理をしとけば…。今思えばおしいことをしたものです(無理しても買えるはずはないのですが)。世の中っていつもこんな感じですよね。
 さて、今回探したアパートは、イトーヨーカドー裏手の農家が大家さんのアパート。バス・トイレ付き、6畳の和室に3畳の洋間、それに3畳のキッチンで管理費込みで、家賃がなんと33,000円。安い!でもバスというのは名ばかりで、前の住人がどうしてもお風呂をいれてほしいという願いに答える形で、押し入れを改造し、無理矢理バスタブをいれ、壁面を防水にし、台所の湯沸かし器(昔はけっこう使われていたタイプ)から配管して、お湯を入れるというものでした。私はシャワーが使いたかったので、さらに水道と温水が別々だった蛇口を、混合栓のタイプに改良しました。このお風呂場、そんな事情で付け足したために、排水のことはまるで考えていません。排水に時間がかかったことは言うまでもありませんが、排水を滞る状態も何度かあり、大家さんに直してもらったことがありました。要するに、職人いわく、バスタブから排水溝までの配管にほとんど傾斜がない状態なんだそうです。
 さらに、このアパートでは、泥棒に2度入られました。部屋の中にはベッドと実家からもらってきたファンヒーター、それに昔懐かしのファンシーケース(これを知っている人は、同年輩かも知れませんね。いわゆる簡易洋服タンス。テントのように支柱があり、それをビニール製のカバーで囲んだもの。上から下までファスナーが付いていて「ジー」という音と共に開閉し、洋服を出し入れします)。これしかないから、はっきり言って盗むものがない! 私の唯一の財産と言えば、サクソフォーンだけでしたが、運良く練習に行っている最中でしたので、盗難から免れました。被害と言えば、窓ガラスを割られたことでしたが、大家さんが直してくれました。また、ふつうでは経験できないものとしては、警察が来て指紋をとる様子が見られたことです。まるで刑事もののテレビと同じで、耳掻きの親分みたいなものに、なにやら粉をつけてぱたぱたとやり、セロハンで指紋をとるのです。粉の正体やら、どろぼうが入る手口など刑事さんにいろいろ教えてもらいました。なお、しばらくたってから泥棒が捕まって、現場を確認に来たことがあります。刑事さんが言っていましたが、どろぼうが2度入るというのは、よくあることなのだそうです。みなさんも気をつけてくださいね。(つづく)

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