コラム・72 ホテルという名前
  
30年まえまでは、ホテルは洋式、旅館は和式という区別がいちおうありました。
いつのころからか、和式旅館でホテルの名をつけるのが、はやりだしましたね。
ホテルと名乗っているから、ベッドのある部屋が半分以上はあり、食事はレストランで食べるものだと思っていました。ホテルなんだから、料金システムも、室料だけで食事は別ってね。
まあ、ホテルの料金システムにも、世界中には三食セット料金のホテルもあるんですってね。あれ、アメリカン・プランというらしい。業界用語ではフル・ペンションとも言うらしいですがね。まあ、食事付きかどうかは、予約するときにわかりますが、ベッドの部屋のあるなしは、確認しそこないますねぇ。
ボクは、普段ベッド生活だから、畳の上で寝るのは苦手。こんな人、最近は多いと思うよ。間違えて、ホテルと言う名の旅館に着いて、フロントでとまどうことがありますね。
    
ところで、ホテルにはシティホテルとリゾートホテルという区別があります。
シティホテルは都心にあって、ビジネス客や旅行者が対象。代表は東京の帝国ホテル。
リゾートホテルは観光地とかの辺鄙なところにあって、代表は箱根の冨士屋ホテルなんてね。だから、シティホテルは一般的な普通名詞だと思っていますよね。
        
それが、そうでない話。
ボクは、ある時、突然、急いで地方都市へ出張することになって、秘書に宿泊の手配をしてもらいました。
地方都市といっても県庁所在地でしたから、シティホテルの一軒ぐらいはあるだろうと思っていたら、秘書は{シティホテルが手配できました」と、飛び出していくボクにメモを渡してくれました。夕刻、そのメモのホテルに着くと、何とビジネスホテルより粗末な施設でした。で、一晩中、下から燃え上がってくる悪夢にうなされるはめになりましてね。
あとで、秘書に聞くと、シティホテル協会というのを見つけて、これこれとばかりに飛びついたらしい。いやー、ボクも秘書をおこれませんでしたね。だれだって、シティホテルの名にダマされますよ。
    
話はかわって、新聞の投書欄でみたのですが、東京の人が、神戸メリケンパークオリエンタルホテルに泊まったそうです。それも、仕事の都合で、夜遅くなっての到着。
そうすると、このホテルには、夜遅くなって食事のできるところが一切なく、一晩中空腹を抱えるはめになったとか。このホテルは神戸市中央区とはいえ、港の突堤の先にありますから町まで歩いてはいけません。ホテルというかぎり24時間でなくても、深夜まで軽食がとれるコーヒーショップがあるものですよね。で、インターネットで、このホテルのホームページを見ると、コーヒーショップの記載がなく、ルームサービスの案内も見あたりません。こうなると、今はホテルという名から、相応のサービスを期待することもできなくなっているらしい。くわばらくわばら