コラム・68 困った関西方言
   
日本語には同音異語がおおいですから、誤解を呼ぶ表現での悲喜劇がありますね。
友達と待ち合わせていて、待ちくたびれたので、一緒に待っていたガイジンに「くるまでまとう」と言ったら、「車で」に聞き間違えて、そのガイジン君、ごそごそと車の中へ入っていった、なんてのは、聞き飽きた笑い話ですね。
     
悲劇といえば、こんなことを聞いたことがあります。
関西から、父親の転勤について、東京に行ったお嬢さんの話。
行った家の道向かいで、同じ年頃の子供達がママゴトをしているので、一緒に遊んでもらおうと、「よして!」と走りよったら、みんなが顔色をかえて、帰ってしまったとか。
関西では、仲間に入れてを、普通「寄せて!」といいますが、この「せ」が時として「し」に聞こえたり、「し」に訛ることがあります。
東京弁では「よして!」は「やめて!」の意味でしょうから、ママゴト遊びをしていた子供達は怖かったのでしょうね。遊び場の向かいに越してきた子が「やめて!」と叫びながら走ってきたんですからね。
近所の子供に嫌われた、このお嬢さんはながらく、遊び仲間にいれてもらえなかったらしい。なぜ嫌われたのかもわからないでね。
         
神戸っ子である、うちのカミさんは「よせて!」とは言っても「よして!」とは言わない、と言いはっていますがね。
でも、ボクもカミさんも、神戸生まれ、神戸育ちといっても、純粋の神戸っ子ではありません。小学生から中学はじめまで、戦時中の疎開は、縁故疎開でしたからね。(縁故疎開とは、学校ごと疎開した学童疎開ではなく、縁故を頼っての個人的な疎開のこと)
学童疎開組は、ずーっと神戸弁でとおしたのでしょうが、縁故疎開組は疎開先でバイリンガルでしたから、標準語も混じっているんでしょうね。
      
「なおしておいて」の悲劇は、前に紹介したことがあるんですが、或る学校の体育教師が、東京からの転校生に、ドッヂボールが終わったので、ボールを手渡して「これ、なおしておいて」とたのんで、しばらくしてやって来ると、頼まれた転校生はボールの綻びを修理していたらしい。何とも荒っぽい教師で、「なんで、なおしてないんや?」と、いきなり横面を殴ったんです。これで、その子は鼓膜裂傷。
ことの起こりは、この体育教師が、標準語では「なおす」は修理することだと知らなかったことからですが、関西語の一部では、「もとのところへ仕舞う」意味に使われます。
それにしても、鼓膜裂傷はただごとではありませんし、普段から暴力的だったので、この体育教師は免職になりましたがね。
         
ボク達の散歩道に、文教地区でも著名な本山第二小学校があります。その正面にある運動場への出入り口に「自転車を止めないでください」と掲示されています。
これは「やめないでください」と読めてしまう。神戸っ子なら、ははーん「とめないでください」のつもりだな、とわかるんです。「自転車を置く」を神戸方言で「とめる」といいますからね。
この掲示のすぐ奥に「自転車置き場」の掲示も見えますから、この学校は自転車は「置く」だと知っているんでしょうがね。
この辺りでは、訂正魔がいまして、間違い文字の看板は、マジックインクですぐに訂正されます。この掲示は訂正落書き防ぎに、ガラス・ケースに入れています。学校も慣れたもの。
     
方言とは言わず、若者言葉でしょうが、「ヤバイ」って、インパクトがあるとか、圧倒的という意味に使われているようですね。
一昔前には、アメリカの若者言葉で、ワースト(最悪)が超最高って意味で使われていました。
ボク達は子供の頃、ケッサク(傑作)を、ミットモナイの意味で使っていましたから、時代がかわっても似たようなものですかね。