コラム・62  国花
     
国の花といえば、スコットランドのアザミ(薊)が、ボクにはとりわけ印象的です。
1263年、スコットランド西部のラーグズにノルウェー王ホーコン4世率いる遠征軍を迎え撃つことになったそうです。
ノルウェー軍は夜襲して、スコットランド陣に忍び寄ったが、兵の1人がアザミの棘を踏んで大声をあげてしまい、奇襲に気付いたスコットランド軍の返り討ちに遭って敗退したとの伝承があるそうです。
国花としてのアザミ(薊)は、正確な園芸名はオオヒレアザミと言うそうですが、まあ、日本で言うアザミ(薊)と同種の植物のようですね。
でも、長塚 節 が
「口をもて 霧吹くよりも こまかなる 雨に薊(アザミ)の 花はぬれけり」
と詠んだ、優しい日本のアザミとは、ちと違うようですね。なにしろ踏むと大声をあげるほど棘があるようですからね。
       
国花を法律できめている国は、意外に少ないようですね。それより、国民全体がなんとなく、これが国の花とか、国を代表する花と思っているだけの例が多いようですね。
法律で国花をきめているのは新興国とか、新しく独立した国に多いみたい。たとえば、マレーシアはイギリスから独立したときに国民投票で候補の花を選び、最後は大統領がハイビスカスに決定したそうです。
どこの国にも、これぞわが国を代表する花と思っているものが多いでしょうね。でも、マレーシアのような南の国では百花繚乱ですからね。ボクらが観光にいっても、行った時期、行った地方によって、その国の印象的な花はちがいますもんね。
東洋の国花には、なじみのある花が多いですね。中国のボタン(牡丹)、韓国のムクゲ(木槿)なんてね。
でも、国花であるばかりに変な感じを持つこともあります。
早春、信州へゆく楽しみの一つが、咲き乱れるアンズ(杏子)、スモモ(李)の白い花でした。ところが、スモモ(李)が北朝鮮の国花だと知ってから、何やらよそよそしく感じはじめましたもんね。花に恨みがあるわけではありませんが。
        
ところで、日本は国花を法律できめていません。何でも、法律できめて全国一律が好きな国民にしてはめずらしいことですね。
でも、何ごとでも一律でないと気がすまない人がいるもので、國花に皇室の紋章のキクだとか、サクラだとかをすべきだとかの声が聞こえてきますが、花に一律なんて、無粋ですよね。
アメリカ合衆国には法律的にも、慣習的にも国花がないそうですね。
あれだけ東西南北に広い国ですから、ボクらが知っている花だけでも、数えきれないほどありますもんね。まあ、州によっては州花をきめているところもあるようですが、国全体としての国花はないんだそうですね。そりゃあ、州ごとに自慢の花があるでしょうからね。
日本でも、府県ごとに自慢の花がありますし、それに日本は南北に長い国ですから、南の花、北の花がそれぞれあります。国全体を眺め渡すと、これまた百花繚乱で楽しいかぎり。
日本の花は、なにもキクとサクラだけではないもんね。