イソップの宙返り・214
     
猟師と馬乗り
猟師が兎を捕って、ぶら下げて歩いていました。そこへ馬に乗った男が通りかかりました。
猟師は、この男が買いそうなそぶりで、ウサギを見せてくれと言いましたので、手渡しました。
馬に乗った男はウサギを取り上げると、オカネを払わないで、逃げてしまいました。
猟師は追いかけましたが、馬に乗った男は見えなくなってしまいました。
猟師は「ウサギは、はじめからお前にやるつもりだった」といいましたとサ。
奪われたが口惜しくて、こんな風に言う人がいる。
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2004年の振り込め詐欺の被害が200億円を越えたそうですね。でも、実際はもっと多いんではありません?
自分のあまりの愚かしさが口惜しいから、届け出ない人って多いように思いますがね。
まあ、それに返ってくる可能性も少なくて、恥を重ねるだけだと思ってしまうんでしょうね。
     
人を騙すのが愉快でたまらない種族がいるんですよ。
ええ、魚を騙すのが愉快でたまらないのは罪がないですがね。北風の吹く釣り堀で一日中ヘラブナ釣りをしている人っていますね。ええ、ボクも好きですがね。
あれ、ヘラブナなんて釣っても、持って帰って食べるものではありませんよね?
まあ、ヘラブナを食べるのが好きって人もたまにはいるンかも知れませんがね。
ヘラブナ釣りって面白いんですよ。釣り堀のヘラブナって何度も釣り上げられていますから、スレています。餌だけをとるんですよね。
そいつをダマして、釣り上げるゾクゾクとする快感。
     
スリって、あれと共通する快感だそうですね。弁護士の駆け出し時代に社会勉強と暇つぶしをかねて、スリの国選(弁護)を何件かやったことがありますが、あの快感にのめり込むとやめられないみたい。
ヘラブナごときものでもダマして、釣り上げるのはゾクゾクとするんですから、人間を、まあ、釣り上げるのは、とてつもない快感なんでしょうねぇ。
スリ係の刑事も、似たような快感があるのかも知れないですね。
スリって現行犯逮捕するのが鉄則なんですよ。ですから、ポケットからすった財布を手に持っている時点で、サッと手錠をかけるんですよ。ですから、する瞬間には傍まで行っているんですね。犯人は、狙いを定めると神経を集中していますから、刑事が傍に寄ってきていても気がつかないんですね。それほどゾクゾクしているらしい。
     
ところが、ヘラブナ釣りが好きな人が、犯罪的傾向を持っているわけではありませんよ。
人間は、誰でも狩猟本能を持っています。まあ、心理学的に言うと欲望。
「隣の奥さんと、肉体的な関係をもちたい」といった欲望が心に浮かんだだけで、罪だとする宗教的な考えもあり、理性主義者もそういいますが、こんな欲望は意識にのぼってこないだけで、意識下では常に起こっているものだと言いますね。
      
倫理的な抑制のきいた人は、意識下で起こっても、意識下の倫理感覚で押さえ込んでしまって、意識にものぼってこないんですねぇ。
極めて倫理的な抑制が強い人は、意識にものぼらないから、これからすると意識にのぼるだけで、非倫理的だとか罪だというんでしょうねぇ。ええ、キリスト教では罪だと言いますね。
      
ところが、非倫理的な欲望が、心に浮かぶだけではなしに、行動にまでおよぶ人間がいるんです。スリとか詐欺師。
あれは、狩猟本能そのままでやるんですから、ゾクゾクとした快感らしいですよ。
サギなんて、必ず捕まるんですよ。顔を見られているし、手口ですぐに捕まる。
そんなことはわかっていても止められないらしい。サギって、そんなものだと言います。
       
オレオレ詐欺とか、振り込めサギって、カモがかかってきたときの快感は、ヘラブナが釣れた快感なんてものじゃあないらしい。
だから、スリだとかサギなんてのは、永久になくならない犯罪。何しろ、人間の本能的な欲望でやるんですからね。英語でもフイッシング(釣り)サギって言いますもんね。
気をつけましょう。釣り堀のヘラブナにされないように。