イソップの宙返り・212
       
ライオンの子分のキツネ
キツネがライオンの子分になって獲物をさがしてきて、ライオンに知らせていました。
ライオンが獲物をとると捜してきたキツネは、おこぼれをもらっていました。
ところが、キツネは、おこぼれでは満足できずライオンの取り分が大きいことが羨ましくなって、自分で狩りをすることにしました。
羊の群れから一頭を盗もうとしましたが、大きいのでモタモタしている内に猟師に捕まってしまいましたとサ。
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こんなイソップ寓話で、警察制度の話をはじめるのもどうかと思いますが、警察のエリート制のこと。
明治のはじめに警察制度を新しく作ることになって模範といいますか参考にしたのがフランスの制度でした。
それまでの警察制度は江戸を例に取ると南北町奉行が責任をもっていました。
実際の捜査は与力、同心の下にいる目明(めあか)とか、御用聞き、手先(てか)、小者ともいいましたね。目明(めあか)は公の官吏ではなくて与力、同心の私的な使用人。
手当はなし。収入はユスリ、タカリで得ていました。
あんまり弊害が大きくなって制度改正をしまして、江戸では目明(めあか)を岡ッ引きと名称だけは変えましたが内容はそのまま。
        
国家権力を暴力的に行使する警察制度は、ともすると腐敗する組織。これは日本だけではありませんで、世界共通。
腐敗防止に効果があるとされたのが、警察上層部をエリートで固めるんでした。
このエリート支配制度は今も国家公務員特別3級職試験として残っていますね。
で、元祖のフランスのエリート制度の話なんですが、エコール・ポリティク(多技術大学校)ってのがありますね。ええ、大学(ユニヴァーシテイ)ではなくて大学校。
フランスのエリート学校はポリティクの他に、エナ(行政学校)、ノルマル・シュプ(高等教育学校)、サンシール(特別軍事学校)とかの数校あります。
これらのエリート学校は入学試験が難しいのですが、ほぼ全員が卒業できる学校。
     
ほかのパリ大学1、2、3とかは無試験。だけど2年生に上がるのは4人に1人と言われる欧米では普通の大学制度ですね。
ええ、「ソルボンヌ(パリ大学のこと)に2年留学」ってのは、2年生になれなかったってことですよね。1年生で2回留年すると2年目には放校される。
だから、パリ大学(ユニヴァーシテイ)を卒業できた青年は、ポリティク卒業生に遜色ないらしいですね。でも、エコール(大学校)卒業者は、やっぱり就職はエリート的なんですが、大学(ユニヴァーシテイ)卒業者はそうでもないらしい。
たしかにポリティクは多技術大学校ですから、数学や物理に強いエリート。ですから、日本の東大法学部出とは一味違いますがね。
ポリティク卒業生は、フランスの官界だけでなく経済界まで牛耳っているっていいますね。
       
こんなエリートになると一族郎党の誉れですから腐敗しにくいらしい。でも、日本では特別3級職になったエリートでも怪しげなのが多いからね。
腐敗防止にエリート制度で上をガッチリ固めると、今度は社会が硬直してしまいますよね。
昔、クレマンソー首相はドイツからの圧力が強いので「あのドイツをやっつけるには、ドイツにポリティクを2校つくらせるしかない」なんてホザイたそうだけど、ポリティク出身でないクレマンソーは頭にきていたことが多かったのでしょうね。
    
エリート制度、それを支えるエリート教育制度は必要だと思うけれど、運営はむつかしい。
でも、今の日本のエリートは東大法学部出でしょう。数学、物理オンチのエリートでは、社会がイビツになる。
だいたい、法学部出がエリートなんて後進国の話。いつまでも、法学部出身者・万能社会では遅れをとるよ。(エヘッ、ボク法学部出)