イソップの宙返り・202
     
はしため(奴婢)と女神アフロディテ
或る男が自分の家の器量も気だても悪い、奴婢(はしため)に惚れて、女が欲しいと言えば何でも買い与えていました。
女は全身を金ずくめ、脛まで届く紫の薄物を引きずって、ことごとに女主人と張り合いました。
女は、こんな果報はアフロディテ女神のおかげだと、毎日灯明をあげ、生贄を捧げ、願掛けや相談事をしていました。
その内に、アフロディテ女神が女の前に現れて、こう言いましたとサ
「わたしに感謝するのは、おやめ。お前を美しいと思いこんでいるあの男に、わたしは腹を立てているのだ」と。
☆     ☆
ここで奴婢(はしため)がアフロディテ女神を祀っているのは、こんなことらしいですよ。
女神アフロディテは美と愛の神。オリンポス12神の一つで、ゼウスの娘。
女神アフロディテはヘファイストスと結婚させられましたが、醜男(ぶおとこ)の夫を嫌って、たくましいアレスと密通を重ね、愛神エロスはこの不義密通によって生まれた子供とされています。
ギリシア神話に出てくる神々は自由奔放、たいへん不道徳な神々ですよね?
だから、アフロディテは不倫の神さま。
そんなことから、この奴婢(はしため)はアフロディテ女神を祀っているらしい。
     
ところが、この話の最後では、アフロディテは、女主人をないがしろにしている二人に腹を立てていますね。
ええー? 不倫の神様なのに、どうしてこの二人に腹を立てているの?。おかしい?って思いますねぇ。
不倫の神様でも、妻妾同居は許さないってことらしい。ボクは、そんな風に思う。
一つ屋根の下で、妾を置き、本妻である女主人をないがしろにするのには、アフロディテも腹を立てているんですねぇ。
        
この奴婢(はしため)はアフロディテを不義密通の神として拝んでいたらしい。
ギリシア神話にはいろんな神がありまして、泥棒の神まであるんですよ。
ええ、エルメスの神。
     
そうそう、アフロディテ女神と言えば、トロイ戦争。
あれは「パリスの審判」の話ですね。
トロイの王子パリスは、ゼウスから、ヘラとアテネとアフロディテの三女神のうちでもっとも美しい女神を選ぶように求められたそうで・・・。
三女神はそれぞれ自分を選べば賄賂をやると言います。
ヘラ女神はアジアの支配をやる、アテネ女神は戦いに勝つことができる武勇を、アフロディテは世界一の美女を妻に与えることを申し出たそうで。
よせばいいのに、パリス王子は、世界一の美女ヘレネと結婚したいがために、アフロディテの賄賂に乗ることにして、三女神のうちでアフロディテがもっとも美しいと、判定しました。
       
パリス王子はバカですねぇ。女三人並べて、「誰が美人か」なんて言えば、相手が女神でなくても、呪い殺されるよね?
こんなことも、わからなかったのかぁ。
てっきり、選ばれなかった二女神を怒らせ、敵にしてしまって、トロイは滅亡。
ゼウスの神も意地悪ですよね。せいぜい「誰が好きか?」って訊いてやればいいのにね。
      
そうすると、アフロディテ女神は不倫の神様だけではなく、汚職の神様でもあるんですね。
日本にも、こんな神さんはいないのかなぁ。不倫の神とか、汚職の神とかねぇ。
今時のことだから、参拝客が押しかけるだろうなぁ。
永田町界隈なんかには、どう?