イソップの宙返り・169
      
犬と狼の戦争
昔々、犬と狼が対立しました。戦争になって、犬の方にはギリシャの犬が将軍に選ばれました。
ところが将軍に選ばれたこの犬は、なかなか戦闘を始めませんでしたので、狼軍は挑発しました。
そこで、犬軍の将軍は、こう言いました。
「オオカミは毛色も同じだが、犬軍は性格もいろいろで、毛色も様々。あるものは黒く、あるものは赤く、あるものは白い。不一致で、同じようなものを全く持たぬ者どもを統御することができようか?」と。
        
寓意・これは、すべての兵隊たちが、それぞれ一つの心と一つの考えとを持っていると勝利を得ることは困難である、ということである。
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まあ、この寓意は裏返して言うと、「すべての国民が、それぞれ一つの心と一つの考えとを持っているときには戦争をはじめることは困難である」ってことになりますよね?
年寄りは、「最近の若い者は愛国心がない」なんて言うけれど、「愛国心って何?」って問い返したいですねぇ。
少なくとも、800万人の国民を死なせ、亡国の瀬戸際にまでおいこんだ太平洋戦争を愛国心の発露だと言うんではないでしょうねぇ?と尋ねたい。
     
「最近の若い者は愛国心がない」のもう一つの理由は、愛国心の有無についての統計のとりかたに問題があるように思えるんですがね。
「あなた愛国心がありますか?」なんてアンケートされると、軍歌をならして街をゆく右翼の街宣車のことを連想しますよね?
愛国心は「無頼漢の最後の逃げ場所」って定義があるけれど、右翼の街宣車は「無頼漢のてっとり早い金儲け」って印象をみんな持っているように思える。
だから、アンケートによる統計って、結果をそのまま鵜呑みにはできませんねぇ。
設問のもっていきかたで、「日本人には愛国心がない」なんてねじ曲げた結論に簡単になりますねぇ。
        
ところで、「国民が、それぞれ一つの心と一つの考えとを持っているときには戦争をはじめることは困難である」って聞くと民主主義国家は戦争になりにくいのかと思ってしまうけど、民主主義の発達したはずのイギリス、アメリカ、フランスでは愛国心から植民地獲得競争に狂奔して、侵略主義に走りましたねぇ。
それに、皆が「それぞれ一つの心と一つの考えを持つ」ってのは難しいですねぇ。
今度のイラク問題にしても、皆が話す内容って、どこかで聞いたような話とか、意見が多かった。
ええ、マスコミの受け売り。それもマスコミ用語、そのままでね。
         
局外にいて冷静に考えられるはずのイラク問題にしても、情報に疎いボク達はマスコミに踊らされてしまいますね。
それが、自分の国のことになると、冷静には考えられないから、マスコミに煽動されてしまうことになるんでしょうねぇ。60年前の太平洋戦争直前みたいにね。
今後、マスコミの煽動の嵐のなかで自分の意見を持つのは難しいんだから、今から冷静に考えるクセだけは持ちたいですねぇ。
       
「皆が、それぞれ一つの心と一つの考えを持つ」方法としては、マスコミ用語そのままで考えないで、自分の言葉に置き換えて考えるのがいいように思っています。
ええ、生まれ育った方言でね。
関西弁で考えると「ニュース・ステイションがなんぼのもんやねん?」。
「爆弾抱えて、突っ込んで行くイラクの若いもんは、何でやねん?」なんてね。